王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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初夜

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「それでアイリスは、本当に帝国に行く
つもりなのか?それはアルフォンスの
望みとは言えないぞ。お前の身の安全こそが
あいつの望みだろうからな」

お館様の執務室に場所を移して話し合う。
グレン様もやっぱりアイリスさんを止める。
もうすでにプリシラ様とお館様からも
危ないからと止められた。
ちらりとアイリスさんを見る。
うん。すでに考えを決めた人の顔だ。

「……決心は固いな。仕方がない。
カーマインとマックスを付ける。
アニエス、マックスをお前の側から外す。
マックスが戻るまでお前は砦から外に出る
のは禁止だ。
アイリスに付いて帝国に行くのも駄目だぞ」

「え~!せっかく戦力になろうと思って
戻ってきたのに」

なんかお鉢が私に回ってきたぞ。
せっかくやる気満々で戻って来たのに。

「心配するな。そもそも戦闘がない。
お前が拉致された日から、全く帝国に
動きがない。
アルフォンスのせいでの混乱にしては
早過ぎる。
どういう事なのか今、探らせている。
以前も何日か攻めてこない日があったが、
帝国はその度に何らかの策を弄してきた
からな。警戒はしている。
報告によってはこちらから帝国に討って
出る事も視野に入れている段階だ」

う~ん。帝国で何が起きているのだろう。
アルフォンス様は大丈夫なのかな。
そもそもアルフォンス様は何をしに帝国に
行ったのだろう。

私も帝国に行きたいなぁ。
アイリスさんと行きたいなぁ。

「アニエス、あなたは付いてきちゃ駄目よ」

「拉致されたばかりなのにアホかお前は。
駄目なものは駄目だぞ」

うっ、アイリスさん、グレン様に考えを
読まれた。ちぇ!

仕方がないのでお茶を飲む。
すっかり冷めてしまった。

「地獄のキャンプ同期の三人で黒い森を
抜けるのね。マックスはいいけれど、
グレン大好き人間のカーマインはグレンの
側を離れる事を了承するかしら?」

プリシラ様もお茶を飲む。冷めたお茶に
顔をしかめる。

「了承も何も命令だ。
アイリスに何かあったら俺がアルフォンスに
顔向け出来ない。本来なら、俺が帝国に
付いて行きたいぐらいだ」

グレン様は前髪をかき上げため息をつく。
あ、その仕草、カッコいい。

「黒い森に三人で……大丈夫ですか?
まあ、カーマイン卿の実力は分かっては
いますが、あの森は何が出るか分かりま
せんから……」

お館様が心配そうに呟く。

「大丈夫よ。油断はしないでしょうから。
あの森の怖さは十分知っているわよ私達。
森より帝国に入ってからの方が心配だわ」

プリシラ様の表情は冴えない。
隣に座るお館様が気遣わし気にそっと
プリシラ様の手にご自分の手を重ねた。
プリシラ様が微笑む。
お館様も微笑む。
互いに微笑み合う二人。
いや~仲睦まじい!
仲の良いご夫婦にこっちが照れちゃう。

「私一人で行くつもりでしたのに。
すみません。結局、ご迷惑をお掛けして」

「いい。謝るな。決めたのは俺だ。
むしろ一人で行かせずにすんで良かった。
準備が調い次第出立しろ。
くれぐれも無茶をしてくれるなよ?」

「はい。決して無茶はしません。
色々、ありがとうございますグレン様」

アイリスさんが頭を下げる。
アイリスさんが帝国に行ける事になって
良かった。

話しに区切りがついたので皆、お茶を飲む。

「あ、そうだ。グレン様、黒竜から伝言を
言付かりました」

あ、忘れてた~と言うノリでアイリスさんが
グレン様に話しかける。
え?アイリスさん、
まさかあれを今言う気?!
止めようとしたけれど遅かった。

「やるなら結界を張ってやれ。発情臭が
治まるまでしっかりやれ!だそうです」

……言いきったよ。アイリスさん。
明るくきっぱり夜の話を人前で。
もう、私は沈没しそう。

「発情臭?」

「やるって何を?」

プリシラ様とお館様がきょとんとした
顔になる。よし、何の話か分かってないぞ。
このまま、誤魔化せるかも……
と思ったけれどアイリスさんが止まらない。
誰かお姉様を止めて~!

「性交渉ですよ。アニエス、中途半端だと
竜にしか分からない謎の発情臭を出す
らしいです。他の雄の竜やオズワルドが
匂いに寄ってくるから気をつけろと黒竜が。
もう、グレン様がキルバンにくる前に
アニエスを発情させるから竜達が嫌がって
ましたよ?」

「アイリスさん……勘弁して下さい……」

恥ずかしい~!!穴を掘って埋まりたい。
何を暴露しているのこの人は。
真っ赤になる私。
思わず両手で顔を隠す。
お茶を吹き出すプリシラ様とお館様。
二人も真っ赤だ。

「……成る程あれか。あれ、他の奴も感じる
のか……そりゃまずいな。
分かった参考にさせてもらう」

グレン様……何、納得してるの。

「性交渉?君達、婚前交渉?ふしだらな」

お館様が顔を真っ赤にして、口に手を当て
うわずった声で言う。
うわぁ。狼狽えているなぁ
まあ、確かにふしだらですよね。
グレン様を誘った私は確かにふしだらです。
プリシラ様も顔真っ赤にして口をぱくぱく
している。

驚きの余り言葉が出てこない感じだ。
あ~うん。グレン様が言うの分かったわ。
真っ赤な顔で口をぱくぱく。
確かに金魚みたいに見える。

「ふん?何がふしだらだ。
夫婦なのにまだ初夜も済ませていない
お前達の方がおかしいだろ。
さっさと済ませろ阿呆」

グレン様はまったく動じない。
え?結婚して、二年だよね。この二人。
え~~!!まさかの白い結婚!
あんなに仲がいいのに~!

「よし、思い立ったが吉日だ。
今晩、お前達の初夜をやり直せ。
四の五の言うなよ。後回しにすればするほど
拗れる。きっかけがあった方がいいだろう」

……グレン様は狼狽える二人をよそに
プリシラ様の侍女を呼んで指示を出す。
何これ。何が起きているの。
あっと言う間に二人のやり直し初夜が
今晩に決定した。
グレン様……何、人様の閨事情を
取り仕切っているの。しかも強引。

黒竜の伝言から
変な事になったなぁ。

肝心のアイリスさんは伝えきったと
爽やかな笑顔だ。
アイリスさんの意外な一面を見たわ。
プリシラ様は準備のために侍女さん達に
連行された。
湯浴みが!香油が、夜着がと声が聞こえる。

プリシラ様、頑張れ~心の中で応援する。

お館様は頭を冷やしてくるとギクシャク
した動きで執務室を後にした。
お館様も頑張って~
やっぱり心の中で応援する。

静かになった執務室。
残されたのは私とアイリスさんとグレン様。

グレン様は冷めたお茶をぐいっと飲み干すと
ニヤリと笑って私を見る。

「さて?お仕置きだな。アニエス」

「はい?」

「他の男に抱きついていたな。
俺は心が狭い。
あれは看過できんな。お仕置きだ」

「え?他の男ってマックス義兄様ですよ!
何がお仕置きですか!」

いや、いや何を言い始めるのこの魔王!

「だから許せない。マックスは義兄だ。
血は繋がってないだろう。
他の義兄はいいがあいつは駄目だ。
今後、あいつとの過度の接触は禁止だ。
いいな?」

「何それ!横暴!マックス義兄様はあんな
に私の事を心配してくれているのに~」

グレン様とアイリスさんがため息をつく。
何、何?

「……結界を張れ。治まるまでやれか。
お仕置きを兼ねて試してみるか。
アニエス?」

肉食獣が笑う。
思わすアイリスさんに助けを求めようと
隣を見るといい笑顔で手を振っている。
呆気にとらわれているうちにグレン様に
捕獲された。
担ぎ上げられ部屋から連れ出される私。

「いってらっしゃい~。頑張ってね!」

笑顔のアイリスさんに送り出された。

プリシラ様とお館様の初夜は滞りなく
行われた。翌朝の照れまくる初々しい
二人を砦のみんなが生暖かく見守る。

良かったですね。


……私達の第二夜は、砦の一室。
私の部屋だ。グレン様が結界を張り、
お仕置きと称して一晩中貪られた。
初心者相手に何するのよエロ魔王!

翌朝の私は全身キスマークだらけで
恥ずかしさに身悶える羽目になった。






















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