45 / 135
王都襲撃
しおりを挟む
「パトロールですか?私が?」
本宮からのお使いの帰り、マクドネル卿に
呼び止められる。
『穴』が最近増える続けているからだ。
特に王女宮周辺や、白竜の所に飛ばされた
あのバルコニーの付近に集中して増殖して
いる。
それとは別に街中でも私が見つけた物以外
にも、ある日突然出現して規制線を張った
物もあるらしく、
『穴』をいち早く見つけられる私に声が
かかったようだ。
「魔力のない者にも見えるようになって
からでは遅いですからね。
全く警戒していない場所から突然『穴』
が出来てまた、魔物や帝国兵が転移して
きたらたまりませんから。
せめて、『穴』の出現を早期に把握したい。
申し訳ありませんが、市中を廻って
新しい『穴』が出来ていないか確認して
欲しいのです」
『穴』には全て見張りが付けられている。
確かに、ノーマークの『穴』から魔物や
帝国兵が転移してきたら被害が増えるよね。
「分かりました。姫様に許可をいただき次第
取りかかりますね。第一騎士団へ伺えば
いいですか?」
「いえ、第三ですね。女神像の庭に待機
させておきます。
すみません。こんなの侍女の仕事では
ないのですが、あなたに頼る他ない。
お手数をおかけします」
マクドネル卿に頭を下げられる。
いや、いや、いや。
出来る事があれば何でもします。
頭なんて下げないで下さい。
私もペコリとお辞儀して王女宮へと戻った。
「さてどこから始めますか?マルク義兄様」
第三騎士団団長マルク義兄様。お供はうち
の三番目の熊兄。セドリック兄さん。
セドリック兄さん、仕事中だから私に満面の
笑顔になるのはよしなさい!
緊急事態だから。
他に数人の騎士様達。みんな片手に地図を
持っている。
「今日はとりあえず、主要な大通りを馬で
巡回。後は地図に印のある場所を中心に
周辺を見回る予定だ。アニエス、無理は
するなよ?」
地図を見せてもらう。
あ、中央公園が含まれている。
グレン様とデートをした場所。
グレン様、元気かな?
怪我とかしていないと良いのだけれど。
……いかん、いかん。
今はお仕事に、集中、集中。
他は、市場や神殿、広場に劇場。
ああ、人出の多い場所か。成る程。
とりあえず、馬で大通りを巡回ね。
──大通りには異常なし。
中央公園に来た。あ、ウソ。
芝生の広場に大きな『穴』がある。
その上で家族連れが敷物を敷いてお弁当を
食べている。
……また、なんであの人達は『穴』に
落ちないの?私は落ちるのに。
「あります。あの、お弁当を食べている
人達の下に大きな『穴』が出来てます」
マルク義兄様に、報告する。
「え?あの敷物の下にか?なんであいつら
呑気に弁当食べているんだよ。
まだ、見えてないから仕方ないけれど。
おい、あそこの家族を移動させろ」
セドリック兄さんがお弁当を食べている
家族連れを移動させる。
ああ、デカイ図体の熊がいきなり追い出し
にかかるから、子供に泣かれている。
すみません。うちの兄、見た目は熊ですが
気のいい熊なんです。
心の中で謝る。
「で、どこからどこまでが『穴』なんだ?
俺達には見えないからな。
規制線を張るから指示してくれ。
アニエス気をつけろよ。頼むから落ちない
でくれよ。落ちるからあまり側によらず
大体でいいからな?」
マルク義兄様も心配性ですねぇ。
ええと、ここから。ここまで。
「結構でかいな。前の穴と同じぐらいか?」
プチ・エトワール本店前の『穴』か。
確かに規模は同じぐらいある。
少し、近づいて『穴』を覗きこむ。
……気のせいかな?なんか『穴』の中で何か
が動いているように見える
確かめたくてもう少し近づく。
「アニエス、落ちる。近づくな」
マルク義兄様、過保護ですねぇ。
大丈夫、気を付けてますから。
それより、なんだろう?
──いっぱい目のような物が見える。
………なんか、ヤバくない?
「マルク義兄様、不味いかも。この『穴』
なんかいるみたいです。中で動いているし、
目が沢山ある……。応援、呼んで?」
「なんだと?セドリック!」
マルク義兄様の声に反応し、セドリック兄
さんがひょいっと私を抱えてさがる。
他の騎士様達が黄色い伝令鳥を放つ。
「公園にいる者を避難させろ!」
四人の騎士様達が命令に走っていく。
一斉に警戒態勢に入る。
「本当にここに『穴』があるんですか」
一人の騎士様がポツリと言う。
見えていないから実感わかないですよね。
「見えていないからこそ、緊張感を持て!」
すかさずマルク義兄様から檄がとぶ。
何事も起きる事なく時が過ぎる。
ふと、視線をずらす。
え?ウソ。
私達が監視している『穴』から少し離れた
場所にまた、『穴』が現れた。
どうなっているの?
あ、皮膚がチリチリする。
これ、本当にまずいかも!
今、戦力は……マルク義兄様。
セドリック兄さん。騎士様達が七人か。
私を入れても十人だ。
応援、間に合うかな?
ヤバい。ヤバい。ヤバい!
「『穴』が!俺にも見えるぞ!!」
──来た!!
「なんだ?なんか出てきたぞ!!」
『穴』から無数の手が伸びてくる。
ぞろぞろと『穴』から這い上がってくる。
「ゴブリン?マジか!なんだこの数!!」
次々に現れるゴブリン。
次第に数を増やし、こちらに向かってくる。
「なんだ!?もう一つ『穴』が現れたぞ!」
「あっちからは……か、火焔熊?!」
騎士様達が慌てふためく。
巡回の予定がいきなりこれじゃ慌てるよね。
「ゴブリンに火焔熊か。なんか、嫌な組み
合わせだな?魔物の氾濫を思い出す」
セドリック兄さんがとても嫌そうに言う。
ああ、それ、私も思ったわ。
火焔熊、何匹いるの?うじゃうじゃいる。
熊は群れないでしょう!
これって絶体絶命なのでは?
本宮からのお使いの帰り、マクドネル卿に
呼び止められる。
『穴』が最近増える続けているからだ。
特に王女宮周辺や、白竜の所に飛ばされた
あのバルコニーの付近に集中して増殖して
いる。
それとは別に街中でも私が見つけた物以外
にも、ある日突然出現して規制線を張った
物もあるらしく、
『穴』をいち早く見つけられる私に声が
かかったようだ。
「魔力のない者にも見えるようになって
からでは遅いですからね。
全く警戒していない場所から突然『穴』
が出来てまた、魔物や帝国兵が転移して
きたらたまりませんから。
せめて、『穴』の出現を早期に把握したい。
申し訳ありませんが、市中を廻って
新しい『穴』が出来ていないか確認して
欲しいのです」
『穴』には全て見張りが付けられている。
確かに、ノーマークの『穴』から魔物や
帝国兵が転移してきたら被害が増えるよね。
「分かりました。姫様に許可をいただき次第
取りかかりますね。第一騎士団へ伺えば
いいですか?」
「いえ、第三ですね。女神像の庭に待機
させておきます。
すみません。こんなの侍女の仕事では
ないのですが、あなたに頼る他ない。
お手数をおかけします」
マクドネル卿に頭を下げられる。
いや、いや、いや。
出来る事があれば何でもします。
頭なんて下げないで下さい。
私もペコリとお辞儀して王女宮へと戻った。
「さてどこから始めますか?マルク義兄様」
第三騎士団団長マルク義兄様。お供はうち
の三番目の熊兄。セドリック兄さん。
セドリック兄さん、仕事中だから私に満面の
笑顔になるのはよしなさい!
緊急事態だから。
他に数人の騎士様達。みんな片手に地図を
持っている。
「今日はとりあえず、主要な大通りを馬で
巡回。後は地図に印のある場所を中心に
周辺を見回る予定だ。アニエス、無理は
するなよ?」
地図を見せてもらう。
あ、中央公園が含まれている。
グレン様とデートをした場所。
グレン様、元気かな?
怪我とかしていないと良いのだけれど。
……いかん、いかん。
今はお仕事に、集中、集中。
他は、市場や神殿、広場に劇場。
ああ、人出の多い場所か。成る程。
とりあえず、馬で大通りを巡回ね。
──大通りには異常なし。
中央公園に来た。あ、ウソ。
芝生の広場に大きな『穴』がある。
その上で家族連れが敷物を敷いてお弁当を
食べている。
……また、なんであの人達は『穴』に
落ちないの?私は落ちるのに。
「あります。あの、お弁当を食べている
人達の下に大きな『穴』が出来てます」
マルク義兄様に、報告する。
「え?あの敷物の下にか?なんであいつら
呑気に弁当食べているんだよ。
まだ、見えてないから仕方ないけれど。
おい、あそこの家族を移動させろ」
セドリック兄さんがお弁当を食べている
家族連れを移動させる。
ああ、デカイ図体の熊がいきなり追い出し
にかかるから、子供に泣かれている。
すみません。うちの兄、見た目は熊ですが
気のいい熊なんです。
心の中で謝る。
「で、どこからどこまでが『穴』なんだ?
俺達には見えないからな。
規制線を張るから指示してくれ。
アニエス気をつけろよ。頼むから落ちない
でくれよ。落ちるからあまり側によらず
大体でいいからな?」
マルク義兄様も心配性ですねぇ。
ええと、ここから。ここまで。
「結構でかいな。前の穴と同じぐらいか?」
プチ・エトワール本店前の『穴』か。
確かに規模は同じぐらいある。
少し、近づいて『穴』を覗きこむ。
……気のせいかな?なんか『穴』の中で何か
が動いているように見える
確かめたくてもう少し近づく。
「アニエス、落ちる。近づくな」
マルク義兄様、過保護ですねぇ。
大丈夫、気を付けてますから。
それより、なんだろう?
──いっぱい目のような物が見える。
………なんか、ヤバくない?
「マルク義兄様、不味いかも。この『穴』
なんかいるみたいです。中で動いているし、
目が沢山ある……。応援、呼んで?」
「なんだと?セドリック!」
マルク義兄様の声に反応し、セドリック兄
さんがひょいっと私を抱えてさがる。
他の騎士様達が黄色い伝令鳥を放つ。
「公園にいる者を避難させろ!」
四人の騎士様達が命令に走っていく。
一斉に警戒態勢に入る。
「本当にここに『穴』があるんですか」
一人の騎士様がポツリと言う。
見えていないから実感わかないですよね。
「見えていないからこそ、緊張感を持て!」
すかさずマルク義兄様から檄がとぶ。
何事も起きる事なく時が過ぎる。
ふと、視線をずらす。
え?ウソ。
私達が監視している『穴』から少し離れた
場所にまた、『穴』が現れた。
どうなっているの?
あ、皮膚がチリチリする。
これ、本当にまずいかも!
今、戦力は……マルク義兄様。
セドリック兄さん。騎士様達が七人か。
私を入れても十人だ。
応援、間に合うかな?
ヤバい。ヤバい。ヤバい!
「『穴』が!俺にも見えるぞ!!」
──来た!!
「なんだ?なんか出てきたぞ!!」
『穴』から無数の手が伸びてくる。
ぞろぞろと『穴』から這い上がってくる。
「ゴブリン?マジか!なんだこの数!!」
次々に現れるゴブリン。
次第に数を増やし、こちらに向かってくる。
「なんだ!?もう一つ『穴』が現れたぞ!」
「あっちからは……か、火焔熊?!」
騎士様達が慌てふためく。
巡回の予定がいきなりこれじゃ慌てるよね。
「ゴブリンに火焔熊か。なんか、嫌な組み
合わせだな?魔物の氾濫を思い出す」
セドリック兄さんがとても嫌そうに言う。
ああ、それ、私も思ったわ。
火焔熊、何匹いるの?うじゃうじゃいる。
熊は群れないでしょう!
これって絶体絶命なのでは?
1
お気に入りに追加
310
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる