王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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夢見る白竜

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ジャラ、ジャラ……。
身じろぎすると鳴る鎖の音、
いつまでこうしていればいいのだろう。
手足を鎖で拘束され、己の魔力で照らせれた
洞窟の中は鎖の音と天井から落ちてくる
水滴の音しかしない。

忌々しい魔術式が赤く光りながら体の周りを
廻る。体に差し込まれた剣から魔力を吸われ
術式によって神殿へと力の供給を行う、
ただの動力源。
何の楽しみのない意味のない生。

ふと、この間、何のいたずらか舞い込んだ
変な人間の女を思い出し、
口元に笑みを浮かべる。この間の奴、
旨かったな。

生贄の男の代わりに自ら私に喰われると
身を差し出した女。

──私と同じ。

私もただあの人を助けたかっただけ。
どうして、こんな事になったのだろう。

それにしてもアイツ旨かった。

何であんなに旨いんだろう?
黒竜の血の契約者なのは分かった。
黒竜の魔力が混じっていたから。
それも、人の血がほぼないに等しいぐらい
濃厚な竜の血。

普通の血の契約には数滴の竜の血があれば
いいはず。

何であんなに濃いのだろう。
雌の私でもあんなに旨かったのだから、
雄が食べたらすごいご馳走。大変だろうな。

アイツ全部食べないで残して良かった。
きっと黒竜に怒られる。

黒竜、会いたい。

人と共にある事を望んだ私を悲しそうな
瞳で見送ってくれた黒竜。
ごめんね。

長い長い時の中、思い浮かぶのは
あの人と、あの子と黒竜の事だけ。

黒竜と共に過ごしたあの日々を思い出す。
アイツを喰ってから頭の靄が少しずつ
消えている。

アイツ特別なご馳走だった。

ジャラ、ジャララ。

夢を見る。

晴れ渡る空。どこまでも続く地平線。
黒竜と共に笑い合って飛ぶ夢を。

ジャラ、ジャララ……。

















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