25 / 135
一夜明けて
しおりを挟む
夜が明けた。
薬湯を飲んだカルヴァン団長は呼吸が安定
してきた。肩で息をしていたのが、穏やかに
胸が上下してしている。二度目の薬湯を
飲ませる。熱も少し下がったので
とりあえず危機は脱したようだ。
「少し顔色が良くなったみたい」
アイリスさんがぽつりと呟く。
「体力オバケな人だからな。毒さえ解毒
できれば回復は早いと思うよ」
アルフォンス様がしみじみと呟く。
薬湯が効いてくれて良かった。
必要な薬湯はすでに用意できている。
ここで私のできる事はもうない。
「カルヴァン団長の容態も落ち着いたよう
ですので、私は一度王女宮に戻りますね。
姫様がきっと心配されているでしょうから」
そう言って席を立った。
アイリスさんのいない夜は姫様にとって
初めてなんだよね。
アイリスさんは、ほとんど姫様のお側を離
れないで常に寄り添っている。
姫様の心の支えだ。
武術訓練の時ぐらいだよね。お側を離れる
のは。アルマさんがいるとはいえ、心細く
思っているだろう。
「アニエス、ありがとう。あなたがいなけれ
ば父は助からなかった。本当にありがとう」
そう言ってアイリスさんが私を抱きしめる。
本当に良かったです。
なんか、長く根気のいる親子喧嘩をしている
とマクドネル卿が言っていたけれど。
仲直りできるといいですね。
「アニエス、帝国の兵がまだいるかも。
一人で戻るのは無用心だ。俺が送るよ」
「え?大丈夫ですよ。アルフォンス様は
アイリスさんに付いていてあげて下さい」
もう、みんな過保護だなぁ。
ちょっと一人になりたい気分なのに。
ロベルト様に再会して今まで知らなかった
事を沢山知った。
腕輪が奴隷用の物だった事。
婚約破棄の真実。
嫁や妾として出荷されそうだった事。
媚薬を使って侯爵が私をどうこうしようと
していた事。
今頃知った。あの侯爵の私を見るねっとり
とした視線の意味に。体中に虫が這いまわ
るような嫌悪感が湧く。
オーウェンお義父は偶然、私を拾った訳で
はなかった。侯爵家の情報をロベルト様
から受け取っていた。
実家への処罰はオーウェン様に尋ねろと
マクドネル卿は言っていた。
赤草はうちの実家から仕入れていると
ロベルト様は言っていたから、
取り潰されてはいないだろうけれど。
大丈夫なのだろうか。
父や兄達は。
……ああダメ。私の頭で考えをまとめるには
情報が多すぎて無理。
色々、ありすぎて気持ちが追い付かない。
昨日は一日、王都中を赤草探しで駆け回り、
豆が潰れて足が痛いし、一睡もしていない。
そろそろ気力も体力も限界。
そういえば、何も飲み食いしていない。
お腹がすくと私、駄目なんだよね。
ロクな事を考えない。
一人になりたいよう。
「そうね。アル、アニエスをお願い」
アイリスさんがアルフォンス様に駄目
押しをする。
一人になりたいんです!
「大丈夫ですよぅ。私これでも結構
強いですよ。平気です」
「何言ってるの。強くても女の子はこんな
早朝に一人で出歩いちゃ駄目なの!
ぐだぐだ言わない。ホラ行くぞアニエス!」
アルフォンス様も実はカルヴァン団長と
同じ人種でした。
過保護だよ。
女性を大事にするのはいい事ですが
私に適応するのはご遠慮下さい。
一人になりたいんです……。
結局、アルフォンス様に強引に送られる事
になってしまいました。
侯爵邸を出ると朝靄がすごい。
まるで私の心の中のよう。
晴れないな。
「すごいな朝靄。本当は馬車の方がいいん
だろうけど、俺が寝そうだから馬な」
みんな徹夜ですもんね。馬車の揺れって
確かに眠くなるわ。
「私を送る暇があるなら仮眠して下さいよ」
「だから一人じゃ駄目って……ああ、
どうやら俺はお役御免らしいな。アニエス、
お迎えだよ」
笑顔のアルフォンス様の視線の先を追うと、
朝靄の立ちこめる中、
馬を引いたグレン様が立っていた。
え?何でいるの?
今、グレン様の顔を見たら私は……。
すでにボロボロと、涙がこぼれ落ちていた。
色々な気持ちが混ざってグチャグチャ。
「え?アニエス?どうした?!」
アルフォンス様の焦った声がする。
ごめんなさい。
突然泣いたら驚くよね。でも止まらないの。
どんどん、こみ上げてきた。
グレン様は困ったように少し、笑って
両手を広げた。
それを見た瞬間、私は何も考えず
グレン様の胸に飛び込んだ。
グレン様の腕の中で、甘いグレン様の匂い
と温かい体温が私を包む。
ほっとする。
すりすりとグレン様の胸に
顔を擦りつける。
ヤバい。本格的に泣けてきた。
父様やエリック兄さん、マリック兄さん、
セドリック兄さんに会いたい。
オーウェン様はどんなつもりで私を養女に
したんだろう。
自分は何も知らないって怖い。
そう、怖い。
だから、色々見ないふりをしていた。
もうすでにしゃくりあげて、泣き初めて
しまった。
グレン様が私の旋毛に口付ける。
頰に、額に瞼に次々そっと口付ける。
それがこそばゆくて、嬉しくて
ぎゅうぎゅうとグレン様に抱きついた。
「マクドネルから聞いた。色々と大変
だったな。何はともあれ、お手柄だったな」
くしゃくしゃと私の頭をグレン様が撫でる。
うん。頑張ったよ。 もっと褒めて。
泣きながら上目遣いで見る。
切れ長な金の瞳が見たことないほど優しい。
グレン様は私の顔を見て、
ちょっと苦笑する。
「えらい。えらい。アニエスは頑張った」
そう、言って私を横抱きにするとくるくると
回った。ふふふ、グレン様。
回るの好きですね。
私も好きかも。
「……笑ったな。よし」
あれ?笑いました?
そういえば涙が引っ込んだ。
スゴいです。グレン様のくるくる。
「──あー。えー、えっと俺はお邪魔ね。
俺はアイリスの側にいるから、アニエスは
グレンに送ってもらいな。姫様によろしく。
グレン、後でな?」
「ああ、後でな。ゴドフリーを頼む。
よし、アニエス帰るぞ」
うん。帰る。
グレン様の首にしがみついたまま私は
アルフォンスにペコリと頭を下げた。
あれ?きた生暖かい視線×一名分。
「アニエス、スカーフがほどけているよ。
それ以上虫刺されは作るなよ」
また、虫の話題ですか。
みなさん好きですね虫。
「余計な事を言うな。さっさと消えろ」
グレン様は憮然としてアルフォンス様に
言い返す。グレン様は虫が嫌いなようね。
何だ。私と一緒。
アルフォンス様と分かれてグレン様と馬に
揺られて王宮に戻る。
グレン様の胸に背中を預ける。
パカポコとゆっくりとした並足。
軽く揺れる馬の背の上。体に伝わる
グレン様の温もり。
アルフォンス様、馬車じゃなくて馬でも
眠くなりますよ。ウトウトしてきた。
「アニエス、もっと寄りかかれ。寝てて
いいぞ。着いたら起こす」
「んー。……イヤ。寝ない」
「いや、寝てるからすでに。酔っぱらいか」
「……寝てない……で…す。……すー」
「……疲れたよな。おやすみアニエス」
薄れていく意識の中、優しいグレン様の
声を聞いた。
ゆらゆらと揺れる。
一人になりたかった……でも二人もいいね。
ううん。二人がいいな。
いい匂い。……ちょっと休んでもいいよね?
そのまま、私は眠りに落ちた。
薬湯を飲んだカルヴァン団長は呼吸が安定
してきた。肩で息をしていたのが、穏やかに
胸が上下してしている。二度目の薬湯を
飲ませる。熱も少し下がったので
とりあえず危機は脱したようだ。
「少し顔色が良くなったみたい」
アイリスさんがぽつりと呟く。
「体力オバケな人だからな。毒さえ解毒
できれば回復は早いと思うよ」
アルフォンス様がしみじみと呟く。
薬湯が効いてくれて良かった。
必要な薬湯はすでに用意できている。
ここで私のできる事はもうない。
「カルヴァン団長の容態も落ち着いたよう
ですので、私は一度王女宮に戻りますね。
姫様がきっと心配されているでしょうから」
そう言って席を立った。
アイリスさんのいない夜は姫様にとって
初めてなんだよね。
アイリスさんは、ほとんど姫様のお側を離
れないで常に寄り添っている。
姫様の心の支えだ。
武術訓練の時ぐらいだよね。お側を離れる
のは。アルマさんがいるとはいえ、心細く
思っているだろう。
「アニエス、ありがとう。あなたがいなけれ
ば父は助からなかった。本当にありがとう」
そう言ってアイリスさんが私を抱きしめる。
本当に良かったです。
なんか、長く根気のいる親子喧嘩をしている
とマクドネル卿が言っていたけれど。
仲直りできるといいですね。
「アニエス、帝国の兵がまだいるかも。
一人で戻るのは無用心だ。俺が送るよ」
「え?大丈夫ですよ。アルフォンス様は
アイリスさんに付いていてあげて下さい」
もう、みんな過保護だなぁ。
ちょっと一人になりたい気分なのに。
ロベルト様に再会して今まで知らなかった
事を沢山知った。
腕輪が奴隷用の物だった事。
婚約破棄の真実。
嫁や妾として出荷されそうだった事。
媚薬を使って侯爵が私をどうこうしようと
していた事。
今頃知った。あの侯爵の私を見るねっとり
とした視線の意味に。体中に虫が這いまわ
るような嫌悪感が湧く。
オーウェンお義父は偶然、私を拾った訳で
はなかった。侯爵家の情報をロベルト様
から受け取っていた。
実家への処罰はオーウェン様に尋ねろと
マクドネル卿は言っていた。
赤草はうちの実家から仕入れていると
ロベルト様は言っていたから、
取り潰されてはいないだろうけれど。
大丈夫なのだろうか。
父や兄達は。
……ああダメ。私の頭で考えをまとめるには
情報が多すぎて無理。
色々、ありすぎて気持ちが追い付かない。
昨日は一日、王都中を赤草探しで駆け回り、
豆が潰れて足が痛いし、一睡もしていない。
そろそろ気力も体力も限界。
そういえば、何も飲み食いしていない。
お腹がすくと私、駄目なんだよね。
ロクな事を考えない。
一人になりたいよう。
「そうね。アル、アニエスをお願い」
アイリスさんがアルフォンス様に駄目
押しをする。
一人になりたいんです!
「大丈夫ですよぅ。私これでも結構
強いですよ。平気です」
「何言ってるの。強くても女の子はこんな
早朝に一人で出歩いちゃ駄目なの!
ぐだぐだ言わない。ホラ行くぞアニエス!」
アルフォンス様も実はカルヴァン団長と
同じ人種でした。
過保護だよ。
女性を大事にするのはいい事ですが
私に適応するのはご遠慮下さい。
一人になりたいんです……。
結局、アルフォンス様に強引に送られる事
になってしまいました。
侯爵邸を出ると朝靄がすごい。
まるで私の心の中のよう。
晴れないな。
「すごいな朝靄。本当は馬車の方がいいん
だろうけど、俺が寝そうだから馬な」
みんな徹夜ですもんね。馬車の揺れって
確かに眠くなるわ。
「私を送る暇があるなら仮眠して下さいよ」
「だから一人じゃ駄目って……ああ、
どうやら俺はお役御免らしいな。アニエス、
お迎えだよ」
笑顔のアルフォンス様の視線の先を追うと、
朝靄の立ちこめる中、
馬を引いたグレン様が立っていた。
え?何でいるの?
今、グレン様の顔を見たら私は……。
すでにボロボロと、涙がこぼれ落ちていた。
色々な気持ちが混ざってグチャグチャ。
「え?アニエス?どうした?!」
アルフォンス様の焦った声がする。
ごめんなさい。
突然泣いたら驚くよね。でも止まらないの。
どんどん、こみ上げてきた。
グレン様は困ったように少し、笑って
両手を広げた。
それを見た瞬間、私は何も考えず
グレン様の胸に飛び込んだ。
グレン様の腕の中で、甘いグレン様の匂い
と温かい体温が私を包む。
ほっとする。
すりすりとグレン様の胸に
顔を擦りつける。
ヤバい。本格的に泣けてきた。
父様やエリック兄さん、マリック兄さん、
セドリック兄さんに会いたい。
オーウェン様はどんなつもりで私を養女に
したんだろう。
自分は何も知らないって怖い。
そう、怖い。
だから、色々見ないふりをしていた。
もうすでにしゃくりあげて、泣き初めて
しまった。
グレン様が私の旋毛に口付ける。
頰に、額に瞼に次々そっと口付ける。
それがこそばゆくて、嬉しくて
ぎゅうぎゅうとグレン様に抱きついた。
「マクドネルから聞いた。色々と大変
だったな。何はともあれ、お手柄だったな」
くしゃくしゃと私の頭をグレン様が撫でる。
うん。頑張ったよ。 もっと褒めて。
泣きながら上目遣いで見る。
切れ長な金の瞳が見たことないほど優しい。
グレン様は私の顔を見て、
ちょっと苦笑する。
「えらい。えらい。アニエスは頑張った」
そう、言って私を横抱きにするとくるくると
回った。ふふふ、グレン様。
回るの好きですね。
私も好きかも。
「……笑ったな。よし」
あれ?笑いました?
そういえば涙が引っ込んだ。
スゴいです。グレン様のくるくる。
「──あー。えー、えっと俺はお邪魔ね。
俺はアイリスの側にいるから、アニエスは
グレンに送ってもらいな。姫様によろしく。
グレン、後でな?」
「ああ、後でな。ゴドフリーを頼む。
よし、アニエス帰るぞ」
うん。帰る。
グレン様の首にしがみついたまま私は
アルフォンスにペコリと頭を下げた。
あれ?きた生暖かい視線×一名分。
「アニエス、スカーフがほどけているよ。
それ以上虫刺されは作るなよ」
また、虫の話題ですか。
みなさん好きですね虫。
「余計な事を言うな。さっさと消えろ」
グレン様は憮然としてアルフォンス様に
言い返す。グレン様は虫が嫌いなようね。
何だ。私と一緒。
アルフォンス様と分かれてグレン様と馬に
揺られて王宮に戻る。
グレン様の胸に背中を預ける。
パカポコとゆっくりとした並足。
軽く揺れる馬の背の上。体に伝わる
グレン様の温もり。
アルフォンス様、馬車じゃなくて馬でも
眠くなりますよ。ウトウトしてきた。
「アニエス、もっと寄りかかれ。寝てて
いいぞ。着いたら起こす」
「んー。……イヤ。寝ない」
「いや、寝てるからすでに。酔っぱらいか」
「……寝てない……で…す。……すー」
「……疲れたよな。おやすみアニエス」
薄れていく意識の中、優しいグレン様の
声を聞いた。
ゆらゆらと揺れる。
一人になりたかった……でも二人もいいね。
ううん。二人がいいな。
いい匂い。……ちょっと休んでもいいよね?
そのまま、私は眠りに落ちた。
1
お気に入りに追加
315
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

お姉様に恋した、私の婚約者。5日間部屋に篭っていたら500年が経過していました。
ごろごろみかん。
恋愛
「……すまない。彼女が、私の【運命】なんだ」
──フェリシアの婚約者の【運命】は、彼女ではなかった。
「あなたも知っている通り、彼女は病弱だ。彼女に王妃は務まらない。だから、フェリシア。あなたが、彼女を支えてあげて欲しいんだ。あなたは王妃として、あなたの姉……第二妃となる彼女を、助けてあげて欲しい」
婚約者にそう言われたフェリシアは──
(え、絶対嫌なんですけど……?)
その瞬間、前世の記憶を思い出した。
彼女は五日間、部屋に籠った。
そして、出した答えは、【婚約解消】。
やってられるか!と勘当覚悟で父に相談しに部屋を出た彼女は、愕然とする。
なぜなら、前世の記憶を取り戻した影響で魔力が暴走し、部屋の外では【五日間】ではなく【五百年】の時が経過していたからである。
フェリシアの第二の人生が始まる。
☆新連載始めました!今作はできる限り感想返信頑張りますので、良ければください(私のモチベが上がります)よろしくお願いします!

すべてを奪われた少女は隣国にて返り咲く
狭山ひびき@バカふり200万部突破
恋愛
サーラには秘密がある。
絶対に口にはできない秘密と、過去が。
ある日、サーラの住む町でちょっとした事件が起こる。
両親が営むパン屋の看板娘として店に立っていたサーラの元にやってきた男、ウォレスはその事件について調べているようだった。
事件を通して知り合いになったウォレスは、その後も頻繁にパン屋を訪れるようになり、サーラの秘密があることに気づいて暴こうとしてきてーー
これは、つらい過去を持った少女が、一人の男性と出会い、過去と、本来得るはずだった立場を取り戻して幸せをつかむまでのお話です。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。

私と黄金竜の国
すみれ
恋愛
異世界で真理子は竜王ギルバートに出会う。
ハッピーエンドと喜んだのもつかの間、ギルバートには後宮があったのだ。
問題外と相手にしない真理子と、真理子にすがるギルバート。
どんどんギルバートは思いつめていく。
小説家になろうサイトにも投稿しております。

婚約者に差し出された化け物公爵が、実は最強美形でした
ゆる
恋愛
「お前は、化け物公爵の婚約者になるのだ。」
孤児院で“みそっかす”扱いされ、エドラー伯爵家に引き取られるも、そこでも冷遇され続けたノイン。
唯一の娘であるエミリアの身代わりとして、呪われた“化け物”と噂されるフェルディナンド公爵の婚約者として差し出されることになった。
「これで一生、不幸が決まったわね。」
「可哀想に、あんな化け物と一緒に暮らすなんて……。」
そう嘲笑されながら送り出されたが、彼は思っていたような恐ろしい人ではなく――むしろ、誰よりも優しかった。
そしてノインは気づく。フェルディナンド公爵の“化け物の姿”が、呪いによるものだと。
「……わたしの力で、もしかしたら、公爵閣下の呪いを解けるかもしれません。」
幼い頃から人の痛みを和らげる不思議な力を持っていたノイン。
彼のために何かできるのなら――そう願った瞬間、運命が大きく動き出す!
だが、そんな二人を快く思わない者たちが、陰謀を巡らせていた。
「孤児のくせに幸せになるなんて許せない!」
「化け物公爵がさらに醜くなれば、婚約も破談になるはず……。」
しかしその悪意は、すべて自分たちへと跳ね返ることに!?
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる