9 / 10
第三章
終わってゆく音がする
しおりを挟む
次の日、学校では犯人が捕まったという話で持ちきりであった。正門のところで岩崎と合流し、やはり僕の父が警察ということで事件について聞かれた。特に僕も詳しいことは知らないのだが。
今日は体育の授業があり宮野は張り切っている。ドッヂボールを男女別れて行うと聞いた。僕は球技が苦手だ、水泳は得意だが。特にドッヂボールだなんて逃げることしか出来ない。コツはボールに背を見せないこと、ただそれだけである。ボールをキャッチしようという心は一心もない。他の人が取ってくれるに違いないだろうし。
そして体育の先生に男女背の順に並べられ、一組と二組でチーム分けをされる。僕と宮野は二組で、一組にいる人はあまり覚えていない。ただ岩崎と仲の良い人がいると聞いた気がする。
僕は皆がボールを取り合っている中、端の方で逃げるを極めている。途端、宮野に「お前もボール取れよ!」と言われたが頑固拒否していたら僕は外野になっていた。激しく、素早くボールが僕の前後を行き交う。すると僕の足に思い切り当たり、つい倒れてしまった。僕の膝が少し擦りむけて血が出ている。皆が「まさかそれで倒れるとは思わなかった、ごめん。早く保健室へ」と嫌味多く一組の人に嘲笑気味に言われた。僕だってこれだけで倒れると思っていなかった。恥ずかしい。
保健室には先生がいなく、ただ静かに外の笑い声を聞き流すのみだった。自分で絆創膏を貼ろうと思い片手で伸ばしたのだが、もたもたしてシワができてしまう。窓から少し冷えた風とともに暖かい日差しが差し込む。揺れる葉は邪心を除いた僕の心を包み込むよう。冬の匂いがするのと同時に宮野の声がした。ドアを開けてこちらを見「今日保健の先生いないって聞いたから来てみたら、やっぱり一人で苦戦してたか。しわくちゃじゃないか」と貼りかけの絆創膏を手に取った。僕は宮野に足を差し出し宮野は傷に触れる。指先に軽く血がつきそうになり、宮野は「犯人捕まってよかったな。俺の元にはそれしか情報が渡っていないんだけれど捕まったのならそれでいいよな」とゆっくりと絆創膏を貼っていく。ドッヂボールを楽しみにしていた宮野に時間を使わせてしまうのは申し訳ないと思い「僕のことはもういいよ、早く活躍して来なよ」と言うと「不貞腐れているのか?恥ずかしかったから?」と意地悪く聞いてくる。
「別にそういう訳じゃあないけど、申し訳ないんだよ。」
血がにじみ出て来た絆創膏を見ていると「そうだ、神酒。佐城さんとはどうした?此の間犯人はもしかしたら客かもしれないと言っていただろう?」と窓からボールを投げ合う生徒を見ながら言った。僕も窓を覗き「多分その人であっているよ。僕も詳しいことは知らないけどさ。でも、黒幕がいるみたいだよ。その人に殺人するよう指示したもう一人が。詳しい情報は聞き出せなかったらしいけど」と言うと宮野は驚き口を開けたままだ。するとこちらを向いて鼻先触れんばかりに「案外先生だったりしてな!」と笑っているが「笑い事じゃないよ」と昨日の父を思い浮かべながら言う。あれほど感情的になっているのだから冗談一つ言える雰囲気でもない。そのあと数分静寂が流れて眠くなり始めた頃、手を伸ばした宮野に「そろそろ戻るか」と言われて席は立った。
その日の学校では馬鹿みたいに平凡な日常が流れていき、昨日女生徒の兄が殺されたとか無かった事のようになった。というよりかはその女生徒は今日休みだった。少しは心配の声が上がっていたがもう犯人は捕まったという安心感の方が大きかったようで、他人のことなど所詮上っ面だけだと言われているような気がした。
放課後、佐城さんの店に心晴れやかに向かった。店に入った瞬間、骨がいくつか増えていた。僕は「この増えた骨は何の骨ですか?」と聞くと佐城さんは「実際の猫の頭蓋骨と、人間の脚の骨のレプリカです」と相変わらず落ち着いた声でこちらを向いて言う。彼女に会うと全てが癒される。掃除をした後の風呂以上な心の落ち着きを覚える。例えが申し訳ないが。そして本題である殺人事件のことを話そうと思い、言葉を一文字発した瞬間佐城さんから「殺人事件の犯人、やはり私の店のお客様でした。仲もそこそこ、骨も彼に譲って頂いたりして……今日も来てくださり、骨の話も弾んでいたのでそういう方だと思うと悲しいです」と袖口を手で軽く握る。すると僕は彼女の形整った唇と白く輝かしい肌に目を奪われ、自分でも驚いたことなのだがカウンターに身を乗り出し、佐城さんの顔に思い切り近づき「僕なら、貴女を守ってみせます」と言ってしまう。言っておいて僕は顔を赤らめて「ち……父が警察官なので!それなりの情報は貰えるかと」と誤魔化す。彼女の首元に残る十字のような傷跡を横目に流して頰を自分で軽く叩く。それでも佐城さんは気にせずに「そうですか、これからはこのような事件が起こらないといいですね」と笑いかけてくれた。その笑顔が美しくて眩しくて仕方がなく好きだ。
前までは目を伏せたかった資料や骨にも自然と見られるようになり、彼女ともそれなりの話が出来るようになっていった。僕は「此の間勧めてもらったガストン・ビュシエールさんの絵を参考にさせてもらったおかげで美術の課題を終わらすことができました、ありがとうございます」と感謝を述べると彼女は「本当ですか!その描いた絵とかって拝見させてもらえますか?」と嬉しそうに言う。が、「もう先生に出してしまったので、申し訳ないんですけど出来ないです」と僕。彼女は少し悲しそうな顔をした。それほど僕の絵を見るのを楽しみにしてくれていたのかと自意識過剰に錯覚をする。
そんな事すらをも幸せに感じれる、彼女となら。そして日常が戻ってきた今の生活なら。
家に帰ると、早く父が帰宅していた。穂乃果を一人にさせてしまったことを申し訳なく思ったが、言い訳として「図書の同好会に入ったんだ。本から得た知恵や経験は多く持っていた方が良いと思って」と言うと父は「そうか、部活に入らなくとも図書同好会ということなら安心だ」とソファに深く座り込んだ父は言う。背中を向けている父は何か物言いたげだった。僕は思わず「今日の仕事どうだった?」と聞くと「容疑者が僅かに口を開いた。彼女は……首元に十字架、傷跡……とだけ言った。その黒幕を突き止めなければ。そして、秋真。穂乃果が殺人事件の事を知っていた。まあ学校通っていて話題の一つ二つ上がらないのも可笑しな話だが。なるべく純粋な子供のままの穂乃果には知られたくなかったのだが」と父は零した。穂乃果は気を遣って黙っていたのか?それなら申し訳ないけれどしょうがないか。
そして女性で首元に十字の傷跡……今日見た気がする。
咄嗟に頭に浮かんできたのは佐城さんだった。きっとそれは大当たりだ。佐城さんだ!佐城さんが黒幕なのか!?でも、確か犯人は彼女のお客さんで悲しいとか言っていたような……そういえば!今日人間の脚の骨のレプリカが増えていた!もしかしたらそれって本物なんじゃないのか!?犯人が捕まる前に死体から取った骨を佐城さんに渡していたんじゃないのか?レプリカと装って!そしたら、佐城さんは指示していたんじゃなくて、犯人が佐城さんの為に骨をあげて喜ばせようとしていたのではないか……!?指示という言葉は間違っていて、ただ自分勝手に操作されたと勘違いしているだけなのか。
でもまだ決まった訳じゃない。父に「死体って、何処らへんが傷ついていた?」と聞くと「脚の骨が抜き取られ、首が大きく切られていた。然し秋真が気にすることじゃない」と言われる。脚の骨が抜き取られていた!ああ、どうしよう!僕が信じていたもの全てが嘘だったなんて!
その場でふらついた僕に「今日は私が夕ご飯を作ろう、脚も怪我しているようだしふらついている。秋真はゆっくり休むといい」と言ってくれた。僕もこれ以上平然を装えそうにもない。部屋に戻って休もう。
そうしているうちに朝になっていた。
今日は体育の授業があり宮野は張り切っている。ドッヂボールを男女別れて行うと聞いた。僕は球技が苦手だ、水泳は得意だが。特にドッヂボールだなんて逃げることしか出来ない。コツはボールに背を見せないこと、ただそれだけである。ボールをキャッチしようという心は一心もない。他の人が取ってくれるに違いないだろうし。
そして体育の先生に男女背の順に並べられ、一組と二組でチーム分けをされる。僕と宮野は二組で、一組にいる人はあまり覚えていない。ただ岩崎と仲の良い人がいると聞いた気がする。
僕は皆がボールを取り合っている中、端の方で逃げるを極めている。途端、宮野に「お前もボール取れよ!」と言われたが頑固拒否していたら僕は外野になっていた。激しく、素早くボールが僕の前後を行き交う。すると僕の足に思い切り当たり、つい倒れてしまった。僕の膝が少し擦りむけて血が出ている。皆が「まさかそれで倒れるとは思わなかった、ごめん。早く保健室へ」と嫌味多く一組の人に嘲笑気味に言われた。僕だってこれだけで倒れると思っていなかった。恥ずかしい。
保健室には先生がいなく、ただ静かに外の笑い声を聞き流すのみだった。自分で絆創膏を貼ろうと思い片手で伸ばしたのだが、もたもたしてシワができてしまう。窓から少し冷えた風とともに暖かい日差しが差し込む。揺れる葉は邪心を除いた僕の心を包み込むよう。冬の匂いがするのと同時に宮野の声がした。ドアを開けてこちらを見「今日保健の先生いないって聞いたから来てみたら、やっぱり一人で苦戦してたか。しわくちゃじゃないか」と貼りかけの絆創膏を手に取った。僕は宮野に足を差し出し宮野は傷に触れる。指先に軽く血がつきそうになり、宮野は「犯人捕まってよかったな。俺の元にはそれしか情報が渡っていないんだけれど捕まったのならそれでいいよな」とゆっくりと絆創膏を貼っていく。ドッヂボールを楽しみにしていた宮野に時間を使わせてしまうのは申し訳ないと思い「僕のことはもういいよ、早く活躍して来なよ」と言うと「不貞腐れているのか?恥ずかしかったから?」と意地悪く聞いてくる。
「別にそういう訳じゃあないけど、申し訳ないんだよ。」
血がにじみ出て来た絆創膏を見ていると「そうだ、神酒。佐城さんとはどうした?此の間犯人はもしかしたら客かもしれないと言っていただろう?」と窓からボールを投げ合う生徒を見ながら言った。僕も窓を覗き「多分その人であっているよ。僕も詳しいことは知らないけどさ。でも、黒幕がいるみたいだよ。その人に殺人するよう指示したもう一人が。詳しい情報は聞き出せなかったらしいけど」と言うと宮野は驚き口を開けたままだ。するとこちらを向いて鼻先触れんばかりに「案外先生だったりしてな!」と笑っているが「笑い事じゃないよ」と昨日の父を思い浮かべながら言う。あれほど感情的になっているのだから冗談一つ言える雰囲気でもない。そのあと数分静寂が流れて眠くなり始めた頃、手を伸ばした宮野に「そろそろ戻るか」と言われて席は立った。
その日の学校では馬鹿みたいに平凡な日常が流れていき、昨日女生徒の兄が殺されたとか無かった事のようになった。というよりかはその女生徒は今日休みだった。少しは心配の声が上がっていたがもう犯人は捕まったという安心感の方が大きかったようで、他人のことなど所詮上っ面だけだと言われているような気がした。
放課後、佐城さんの店に心晴れやかに向かった。店に入った瞬間、骨がいくつか増えていた。僕は「この増えた骨は何の骨ですか?」と聞くと佐城さんは「実際の猫の頭蓋骨と、人間の脚の骨のレプリカです」と相変わらず落ち着いた声でこちらを向いて言う。彼女に会うと全てが癒される。掃除をした後の風呂以上な心の落ち着きを覚える。例えが申し訳ないが。そして本題である殺人事件のことを話そうと思い、言葉を一文字発した瞬間佐城さんから「殺人事件の犯人、やはり私の店のお客様でした。仲もそこそこ、骨も彼に譲って頂いたりして……今日も来てくださり、骨の話も弾んでいたのでそういう方だと思うと悲しいです」と袖口を手で軽く握る。すると僕は彼女の形整った唇と白く輝かしい肌に目を奪われ、自分でも驚いたことなのだがカウンターに身を乗り出し、佐城さんの顔に思い切り近づき「僕なら、貴女を守ってみせます」と言ってしまう。言っておいて僕は顔を赤らめて「ち……父が警察官なので!それなりの情報は貰えるかと」と誤魔化す。彼女の首元に残る十字のような傷跡を横目に流して頰を自分で軽く叩く。それでも佐城さんは気にせずに「そうですか、これからはこのような事件が起こらないといいですね」と笑いかけてくれた。その笑顔が美しくて眩しくて仕方がなく好きだ。
前までは目を伏せたかった資料や骨にも自然と見られるようになり、彼女ともそれなりの話が出来るようになっていった。僕は「此の間勧めてもらったガストン・ビュシエールさんの絵を参考にさせてもらったおかげで美術の課題を終わらすことができました、ありがとうございます」と感謝を述べると彼女は「本当ですか!その描いた絵とかって拝見させてもらえますか?」と嬉しそうに言う。が、「もう先生に出してしまったので、申し訳ないんですけど出来ないです」と僕。彼女は少し悲しそうな顔をした。それほど僕の絵を見るのを楽しみにしてくれていたのかと自意識過剰に錯覚をする。
そんな事すらをも幸せに感じれる、彼女となら。そして日常が戻ってきた今の生活なら。
家に帰ると、早く父が帰宅していた。穂乃果を一人にさせてしまったことを申し訳なく思ったが、言い訳として「図書の同好会に入ったんだ。本から得た知恵や経験は多く持っていた方が良いと思って」と言うと父は「そうか、部活に入らなくとも図書同好会ということなら安心だ」とソファに深く座り込んだ父は言う。背中を向けている父は何か物言いたげだった。僕は思わず「今日の仕事どうだった?」と聞くと「容疑者が僅かに口を開いた。彼女は……首元に十字架、傷跡……とだけ言った。その黒幕を突き止めなければ。そして、秋真。穂乃果が殺人事件の事を知っていた。まあ学校通っていて話題の一つ二つ上がらないのも可笑しな話だが。なるべく純粋な子供のままの穂乃果には知られたくなかったのだが」と父は零した。穂乃果は気を遣って黙っていたのか?それなら申し訳ないけれどしょうがないか。
そして女性で首元に十字の傷跡……今日見た気がする。
咄嗟に頭に浮かんできたのは佐城さんだった。きっとそれは大当たりだ。佐城さんだ!佐城さんが黒幕なのか!?でも、確か犯人は彼女のお客さんで悲しいとか言っていたような……そういえば!今日人間の脚の骨のレプリカが増えていた!もしかしたらそれって本物なんじゃないのか!?犯人が捕まる前に死体から取った骨を佐城さんに渡していたんじゃないのか?レプリカと装って!そしたら、佐城さんは指示していたんじゃなくて、犯人が佐城さんの為に骨をあげて喜ばせようとしていたのではないか……!?指示という言葉は間違っていて、ただ自分勝手に操作されたと勘違いしているだけなのか。
でもまだ決まった訳じゃない。父に「死体って、何処らへんが傷ついていた?」と聞くと「脚の骨が抜き取られ、首が大きく切られていた。然し秋真が気にすることじゃない」と言われる。脚の骨が抜き取られていた!ああ、どうしよう!僕が信じていたもの全てが嘘だったなんて!
その場でふらついた僕に「今日は私が夕ご飯を作ろう、脚も怪我しているようだしふらついている。秋真はゆっくり休むといい」と言ってくれた。僕もこれ以上平然を装えそうにもない。部屋に戻って休もう。
そうしているうちに朝になっていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~
しんいち
キャラ文芸
オカルト好きの少年、「しんいち」は、小学生の時、彼が通う合気道の道場でお婆さんにつれられてきた不思議な少女と出会う。
のちに「幽子」と呼ばれる事になる少女との始めての出会いだった。
彼女には「霊感」と言われる、人の目には見えない物を感じ取る能力を秘めていた。しんいちはそんな彼女と友達になることを決意する。
そして高校生になった二人は、様々な怪奇でミステリアスな事件に関わっていくことになる。 事件を通じて出会う人々や経験は、彼らの成長を促し、友情を深めていく。
しかし、幽子にはしんいちにも秘密にしている一つの「想い」があった。
その想いとは一体何なのか?物語が進むにつれて、彼女の心の奥に秘められた真実が明らかになっていく。
友情と成長、そして幽子の隠された想いが交錯するミステリアスな物語。あなたも、しんいちと幽子の冒険に心を躍らせてみませんか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
化想操術師の日常
茶野森かのこ
キャラ文芸
たった一つの線で、世界が変わる。
化想操術師という仕事がある。
一般的には知られていないが、化想は誰にでも起きる可能性のある現象で、悲しみや苦しみが心に抱えきれなくなった時、人は無意識の内に化想と呼ばれるものを体の外に生み出してしまう。それは、空間や物や生き物と、その人の心を占めるものである為、様々だ。
化想操術師とは、頭の中に思い描いたものを、その指先を通して、現実に生み出す事が出来る力を持つ人達の事。本来なら無意識でしか出せない化想を、意識的に操る事が出来た。
クズミ化想社は、そんな化想に苦しむ人々に寄り添い、救う仕事をしている。
社長である九頭見志乃歩は、自身も化想を扱いながら、化想患者限定でカウンセラーをしている。
社員は自身を含めて四名。
九頭見野雪という少年は、化想を生み出す能力に長けていた。志乃歩の養子に入っている。
常に無表情であるが、それは感情を失わせるような過去があったからだ。それでも、志乃歩との出会いによって、その心はいつも誰かに寄り添おうとしている、優しい少年だ。
他に、志乃歩の秘書でもある黒兎、口は悪いが料理の腕前はピカイチの姫子、野雪が生み出した巨大な犬の化想のシロ。彼らは、山の中にある洋館で、賑やかに共同生活を送っていた。
その洋館に、新たな住人が加わった。
記憶を失った少女、たま子。化想が扱える彼女は、記憶が戻るまでの間、野雪達と共に過ごす事となった。
だが、記憶を失くしたたま子には、ある目的があった。
たま子はクズミ化想社の一人として、志乃歩や野雪と共に、化想を出してしまった人々の様々な思いに触れていく。
壊れた友情で海に閉じこもる少年、自分への後悔に復讐に走る女性、絵を描く度に化想を出してしまう少年。
化想操術の古い歴史を持つ、阿木之亥という家の人々、重ねた野雪の過去、初めて出来た好きなもの、焦がれた自由、犠牲にしても守らなきゃいけないもの。
野雪とたま子、化想を取り巻く彼らのお話です。
チャリンコマンズ・チャンピオンシップ
古城ろっく
キャラ文芸
日本列島を自転車で縦断する、超長距離レースが開催される。
自転車を始めたばかりの少年は、自転車に詳しいクラスメイトの少女と共に、その大会に出場するのだった。
オンロードもオフロードも、悪天候も何でもあり。降雨、強風、積雪などの様々なコンディションを、ママチャリ、マウンテンバイク、ロードバイクなど、様々な自転車で戦うのだ。
※この作品はフィクションです。実在する人物、地名、団体、大会、その他とは一切関係がありません。また、実在する社名、車体名などが登場することがありますが、各社および各車両に対し技術的、あるいは能力的なものを示唆する意図はありません。
※劇中には大変危険な行為が描写されています。公道を走る際は交通ルールに則り、安全に運転するよう努めてください。
冥府の花嫁
七夜かなた
キャラ文芸
杷佳(わか)は、鬼子として虐げられていた。それは彼女が赤い髪を持ち、体に痣があるからだ。彼女の母親は室生家当主の娘として生まれたが、二十歳の時に神隠しにあい、一年後発見された時には行方不明の間の記憶を失くし、身籠っていた。それが杷佳だった。そして彼女は杷佳を生んですぐに亡くなった。祖父が生きている間は可愛がられていたが、祖父が亡くなり叔父が当主になったときから、彼女は納屋に押し込められ、使用人扱いされている。
そんな時、彼女に北辰家当主の息子との縁談が持ち上がった。
自分を嫌っている叔父が、良い縁談を持ってくるとは思わなかったが、従うしかなく、破格の結納金で彼女は北辰家に嫁いだ。
しかし婚姻相手の柊椰(とうや)には、ある秘密があった。
恵麗奈お嬢様のあやかし退治
刻芦葉
キャラ文芸
一般的な生活を送る美憂と、世界でも有名な鳳凰院グループのお嬢様である恵麗奈。
普通なら交わることのなかった二人は、人ならざる者から人を守る『退魔衆』で、命を預け合うパートナーとなった。
二人にある共通点は一つだけ。その身に大きな呪いを受けていること。
黒を煮詰めたような闇に呪われた美憂と、真夜中に浮かぶ太陽に呪われた恵麗奈は、命がけで妖怪との戦いを繰り広げていく。
第6回キャラ文芸大賞に参加してます。よろしくお願いします。
鬼と私の約束~あやかしバーでバーメイド、はじめました~
さっぱろこ
キャラ文芸
本文の修正が終わりましたので、執筆を再開します。
第6回キャラ文芸大賞 奨励賞頂きました。
* * *
家族に疎まれ、友達もいない甘祢(あまね)は、明日から無職になる。
そんな夜に足を踏み入れた京都の路地で謎の男に襲われかけたところを不思議な少年、伊吹(いぶき)に助けられた。
人間とは少し違う不思議な匂いがすると言われ連れて行かれた先は、あやかしなどが住まう時空の京都租界を統べるアジトとなるバー「OROCHI」。伊吹は京都租界のボスだった。
OROCHIで女性バーテン、つまりバーメイドとして働くことになった甘祢は、人間界でモデルとしても働くバーテンの夜都賀(やつが)に仕事を教わることになる。
そうするうちになぜか徐々に敵対勢力との抗争に巻き込まれていき――
初めての投稿です。色々と手探りですが楽しく書いていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる