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第01話、育ての親が、騎士を拾いました
しおりを挟む「ルーナ、暇か?」
「おい、ボクが暇に見えるか、クソ神父」
めんどくさそうな顔をしながらルーナと呼ばれた幼女体系の少女は、突然家に現れた近くの教会の神父に嫌そうな顔をしながら答えるが、男性はそんな事を気にしないかのように、掃除をしているルーナの近くに寄ってくる。
昔からこの神父は人の話を聞かないからこそ厄介で、めんどくさい。同時に居るからこそ家の仕事などが出来なくなってしまうため、手を止めながらため息を吐く。
「これから家の掃除、庭の掃除、そのあと食事の準備をして……あと畑の仕事をして……暇じゃない」
「別に数日サボっても大丈夫だろ?なら、ちょっと手伝ってくれねェか?」
「手伝うって……何、教会の掃除か?」
「それもあるが……ちょっとだけ、な?」
「ん?」
いつもと様子がおかしい神父に首をかしげるようにしながら、ルーナは神父に視線を向けるが、彼はいつもの笑顔をルーナに見せているのみ。
多分、何度も断った所でこの男はしつこいだろうと理解しながら、深々とため息を吐いた後、箒を近くに置いた彼女を見た神父は嬉しそうな顔をしながら、突然彼女の身体を抱き上げる。
「流石!お前ならわかってくれると信じてた!」
「ちょ、突然持ち上げるなこの変態神父‼」
ルーナは神父に叫んで抗議をしたのだが、彼の耳には全く入っていなかったらしく、まるで誘拐みたいな形で連れ去られるルーナだった。
そして近くの教会の中に入ったと同時、いつもと違うかび臭い匂いではないモノがしたのである。
同時に、これが『血液』だとすぐに認識できた。
「……おい、クソ神父、どういう事か説明してもらえる?」
「はは、本当、俺はお手上げなのよ、ルーナ」
「……はぁ、これはちょっと、予想外だったな」
ルーナは再度深いため息をついた後、神父に連れてこられた場所に視線を向ける。そこには壊れた防具を身にまといながら、青ざめた顔をしている一人の青年が、彼女の目に留まったのである。
ルーナ――彼女はこの田舎中の田舎の村で暮らしている少女であり、両親は幼い頃に他界してしまい、ずっと一人で暮らしてきた少女である。因みに半分育ててくれたのは、彼女がクソ神父と言っていた人物である。
この村で暮らしているのは古びた教会に神父が一人、その近くに小屋を作っている彼女一人と、あとお年寄りが三名、四名ほど暮らしているだけの、本当に小さな村だ。
昔はもう少し若い人たちが居たのだが、彼らはこの村よりも『外』に憧れを持っていた為、ただいま『外』で暮らしている。孫から手紙が来たと、お向かいのお年寄りの人が言っていたとルーナは思い出しながら、目の前の状況をどうするべきなのかと考える。
目の前の男は見た事のない人物で、明らかに『外』から来た人間なのであろうとすぐに理解した。同時に傷は事故に寄るものではなく、誰かに襲われた傷に見える。
「明らかに事故じゃない傷だなこれ……しかも傷は多分剣だ。つまり、殺されかけてこの村に流れ着いた、って感じだな、神父」
「俺もそう思う……ただ、俺だけじゃ傷の手当は出来ねェし、お前ならこう言うの、得意だろ?」
「ボクは医者じゃないし、薬草と傷の手当は教会にある本で勉強しただけ!それに、こんな傷を治す事なんて不可能だし……神父なんだから回復魔法とか使えないの!」
「俺、魔力ねーもん」
「ああ、使い問になんねェこのクソ神父‼」
この世界には『魔術』と言うモノが存在しているが、この村では全く関係のない話だ。ルーナも神父も『魔力』と言うものは持ち合わせていなかったので、そういうものが使えない。
因みに回復魔法と言うモノがあるらしいが、この村で使えるものは居ない。つまり、魔術ではなく、現実的に手当てをしなければいけなくなる。
ルーナは教会でホコリを被っていた医学書を簡単に読み、勉強をした程度で別に医者でもなんでもない。しかし、この村でお年寄りたちのケガや簡単な病気を診ている程度の事はしている。だからこそ神父はルーナを指名したのだ。
頭を掻きながら、ルーナはとりあえず自分が着ている上着を脱ぎ棄て、引きちぎりながら神父に指示を出す。
「神父様、とりあえず今からボクの部屋の机に置いてある緑色で『傷薬』って書いてある小瓶、布切れ、お湯と、あと包帯があるなら包帯持ってきて!傷もそんな深くないから命には別条ないかもしれないけど、応急処置ぐらいはしておかないと多分危ない」
「お、おう、わかった!すぐ持ってくる!」
「うん、お願い」
神父は言われた通りにする為すぐに外に出て行った事を確認すると、傷だらけになっている青年に再度視線を向ける。
気絶しているのか、意識はない。ただ、傷は深くはないので命には問題はないだろう。ただ、黴菌などが入ってしまったら大変だと思いながら、破り捨てた上着で軽く抑えるように、腹部にある傷に布を置いた瞬間。
突然、手首を掴まれる。
「ッ‼」
一瞬の出来事で驚いたルーナは目を見開き、目の前の青年に視線を向ける。手首を掴まれて痛いが、それ以上に警戒をしているのであろうと、すぐに理解する。
だって、知らない女がケガしたところに触れようとされたら、誰だって警戒するに決まっている。鋭い殺気が、ルーナに襲い掛かった。
だが、同時に握りしめてきた手の力も弱くなってきている事が分かったルーナは、そのまま青年に向かって話しかける。
「大丈夫、医者ではないけど、応急処置ぐらいなら出来る……この手を放してくれないか?」
「……」
「ボク……わたしはあなたの敵じゃないし、こんな子供みたいな女があなたを殺す力があると思いますか?大丈夫、安心して」
「……」
青年の瞳が、ルーナの顔を映し出している。透き通るようなエメラルドの瞳が、ルーナの漆黒の瞳と合わさりながら、徐々にその力を緩めてくれる。
息を静かに吐き、青年は手首を放すと、今度はルーナの腕を掴んできた。しかし、先ほどより力はなく、殺気も感じない。
「……ありが、とう」
「別に。怪我人見たら放っておけない性格だから気にしないで、お兄さん」
そっと笑いながら青年に話しかけると、安心したのか青年はそのままゆっくりと目を閉じて、再度意識を失う。目を開けたのも警戒心から来たモノだったのだろうかと思いながら、ルーナは神父が来るのを待った。
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