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第0章、元魔王、幼女になっていた。
第01話、平和の終わり①
しおりを挟む「――どこで、間違ったんだろうな、ミリアム」
その日、全てを奪われた。
父は生まれながら全てを掌握したがっていた、魔王だった。
だからこそ、この国に救いはないとわかっていたからこそ、父のいう事を聞いて、父の後継者となり、魔王になるために、国を守るために父を殺した。
父の死後は母親が違う弟を育てる事と、民の為、ついてきてくれる部下の為にこの国を守るために必死で王として働き、この国の為に身を削って働いた。
勇者という存在が攻めてきたこともあったが、それは父のせいだから仕方がない。
勝負をかけられたが、それも仕方がないと思っていたので受けた。勇者という存在は強く、手加減したところで勝てないと思い、少しだけ本気を出して、引き分けとなった。
それから勇者と呼ばれた男が死ぬまで、なぜかこの国に遊びにくる勇者を追い返すことも出来ず、交流というおのを持ってしまった。
勇者の死後も、自分の身が削れるまでは、死ぬまではこの国に尽くしていこうと、思っていた。
しかし、弟は違ったらしい。
弟は、父に似たのだ。
そしてその時は、姉である存在に歪んだ愛情を抱いていたなんて、知らなかった。
「っ……」
「シンっ!」
傷だらけの状態で突然目の前に現れた自分の信頼する配下。
彼は笑いながら近づいていき、体にしがみついてくる。
「お、お逃げください……狙いはあなたです。王……」
「狙いって……何があった!」
「ぐっ……」
「シンっ……」
「姉様」
弟は、血まみれの姿で姉である彼女の前に姿を見せた。
姉の姿を見ると、愛おしそうに笑いながら、目の前に立っているのだ。
何が起きたのだろうと頭の中では理解が出来ない状態が、彼女の周りに起こっている。
呆然としながら、彼女を庇うように一歩、部下の男が守るように手を伸ばす。
しかしそれでも尚、弟は笑いながら姉に血まみれの剣を向ける。
――どこで、間違えたのだろうか?
「姉様、あなたの部下に剣を収めるように言ってくれないでしょうか……でないと僕は、あなたの大切な部下を殺してしまいますよ」
「……クオン、お前は、お前は何をやっている?」
「何って……謀反ですよ姉様。僕はあなたに剣を向け、あなたを殺そうとしています。けど、安心してください姉様……僕はあなたを殺すつもりはないですから、降伏してくださるだけで、大丈夫ですよ」
降伏――つまり、負けを認めろという事になる。
彼女にとって、別に負けてもよかった。
たった一つの小さき命を弟に渡せば、必死で自分を守ろうとしている部下の姿。
魔王は静かに部下の肩を叩き、首を横に振る。
「王ッ……」
「シン。お前は私にとって大切な部下であり、幼いころから私を支えてくれた大切な友人だ。私は大丈夫だからお前は後ろに下がれ」
「お、お待ちを……王ッ!」
ゆっくりと立ち上がり、目の前に立つ大切な弟に近づくため、玉座から離れ、そのまま対等になるために弟の前に立った。
弟は、笑っていた――変わらず、いつもの笑顔を彼女自身に見せていたのだ。
彼の背後には、見覚えのある魔物や幼い頃から弟や彼女に仕えていた者たち――裏切り、と言うものにあったのだろうと、理解する。
「……クオン、お前は私を玉座に下ろし、新たな魔王になると、いう事なのか?」
「察しが良いですね姉様……ええ、今度はあなたの代わりに僕が魔王となり、役目を果たします」
「役目、とは?」
「とりあえず、気に入らない言葉ですけど……世界征服、ですかね?元々魔王と言うのは、そのような存在なのでしょう?」
「……」
嘗て、この世界を支配しようとしている者たちが存在していたー―それが、魔王と言う者とその配下たちの存在だ。
圧倒的な力で全ての種族に攻撃をし、この世界を統一しようと考えた。恐怖と暴力と言う世界に変えるために。
それが、前任の魔王――父の存在だ。
結局はそれを成し遂げる事なく、あっけなく死んだ父の代わりい、争いごとが嫌いな彼女が魔王になった。
弟は、やはり父親に似てしまったらしい――これは、予想外だった。
彼女は首にぶら下げている小さなペンダントを握りしめる。
「……では、世界征服をしたら、お前はこれからどうする?」
「どうもしませんよ……ただ、そうですね……姉様」
「なんだ?」
「――ぜひ、僕の妃になってください」
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