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慰めて
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ノアがどんなに醜悪な噂話をされているとしても、リトはこの王宮のだれよりも、ノアが素晴らしい侍従であることをわかっている。
これまでのあるじたちにも、きっと変わらぬ献身を捧げてきたのだろう。決してリトだけが特別なわけではない。そうだとしても、
(いまは、おれがいちばん大事にされてる)
いまだって、昨日までと変わらぬやさしい手付きでリトの髪を洗ってくれている。いつもより口数が少ないし、元気がないような気はするけれど、それはリトも同じだ。
(きもちいい……)
湯の張られたバスタブに寝そべって髪を洗われながら、リトはほうっとため息を吐いた。ノアの長い指が、丁寧に地肌をこすっていく。ゆうべは過敏になりすぎてつらかったけれど、さすがに今日は大丈夫だ。
丹念にマッサージまでしてくれた手指が離れ、カランを捻る音がして、やわらかなシャワーが後頭部へ触れた。
すすいでくれているあいだも、指の腹がするすると地肌をすべっていくのが気持ちいい。
しっかりトリートメントまで終えたあと、大きな両手がぎゅうっと水気をしぼった。
ここまでで洗髪は終わりだ。ノアはいつも、「ゆっくりあたたまってください」と言い置いて浴室を出ていく。
けれど今夜は、ノアが口を開くまえにリトが手を伸ばした。
立ち上がろうとしてバスタブの縁を掴んでいたノアの右手を、濡れた左手で掴む。
「リト様……?」
どうかなさいましたか、と不安げに覗き込んでくるうつくしい顔を見上げて、リトはどきどきと暴れている心音を聴きながら彼の長い指に指を絡めた。
――正直に、してほしいこと言ってみなよ。
友人の心強い声に背を押される。羞恥で泣きそうになりながら、けれどはっきりとリトは言った。
「慰めて」
ノアが息を呑む気配がする。一瞬で緊張したノアの右手を掴んで持ち上げ、湯の中に沈んでいる己の胸元へ触れさせた。
「ん」
ただ、平らな胸元にノアの手のひらを置いただけなのに、からだが揺れて湯が跳ねた。ぴちゃん、というその水音を合図にしたように、リトの手にされるがままにされていたノアの右手がするりと動いた。
「あっ、♡」
白濁した湯の中で、ノアの長い指はすぐに胸の突起を探り当てた。すでに痛いほど硬くなっている左側のそれを、指の腹でやさしく撫でてくる。
「あ、ん、ん♡ きもち……♡」
自分以外の指で乳首を愛撫されるのははじめてだった。自慰とはぜんぜん違う。ものすごくドキドキするし、頭の芯がビリビリするくらい気持ちがいい。
「リト様……」
熱っぽい声で名前を呼ばれて、リトは涙の膜の張った両目でノアを見上げた。うつくしい顔が近づいてくる。ここひと月ですっかり慣らされてしまったからだが、反射的に瞼を伏せてゆるくくちびるを開いた。
「ん……っ♡」
ノアのやわらかなくちびるが、しっとりとリトのくちびるを食んだ。ノアとは毎日キスをしているのに、なんだかいつもと違う気がする。いつものノアはこんなふうに、いやらしい動きでくちびるを啄んできたりしないし、いやらしい音を立てて舌を絡めてきたりしない。
「ん、んん……っ♡ は、ぁ……ん……♡」
「ん……っ」
水音の合間にノアの上擦った色っぽい吐息が聞こえて、リトは鼓膜から頭の中までぞくぞくしてしまった。
(えっちなキスしながら、乳首こりこりされるのやばい……っ♡ ずっと甘イキしてる……♡)
ひくん、ひくん、とからだがふるえるのを止められない。湯の中で腰が浮いてしまう。
(ノアの指きもちい……♡ あ、右の乳首も触ってくれる……♡ うれしい♡ うれしい♡)
両胸の突起を捏ね回されて、気持ちよくしてくれるのがうれしすぎて一生懸命ノアの舌を吸ってしまった。
「ん、ふ……、」
「……っ♡ っ、ん、んっ♡」
技巧もなにもないリトの舌に応えてくれながら、ノアはその左手をゆっくりと湯の中へすべらせた。指先が薄い腹を辿り、臍をくすぐって、きちんと手入れされている淡い下生えを掻き分け、ゆるく勃ち上がっている性器へ触れる。
「っ、♡ ん、~っ♡」
(ちんちん、触られてる……っ♡ あ、すごい、なにこれ、きもちい……っ♡)
大きな手のひらでやさしく揉み込むようにされるのが、こんなに気持ちいいなんて知らなかった。お尻でばかりオナニーしていたせいで勃起が弱くなっていたのに、あっという間に硬くなる。
「気持ちいいですか?」
くちびるを離したノアが、湯の中で左手を上下させながらやさしい声で訊いてくる。
「うん、うん、きもちい……っ♡ あ、あ、あ♡」
はじめて与えられる他人の手からの刺激に、リトは一瞬でとろとろになってしまった。右手は左右の乳首を気まぐれに行き来しながら、ときおり爪の先でかりかりと引っ掻いてくれる。
「ちくび、も、きもちい、っあ♡ だめっ、だめ、いっちゃう、いっちゃう♡」
「このまま出して頂いて大丈夫ですよ」
「い、く、いく、いく……っ♡」
びくん、と全身が緊張して、リトは湯を跳ね上げながら絶頂した。
(乳首で甘イキしながら射精するの、きもち……♡)
「は、はあーっ♡ 、は、ーっ♡」
最後まで絞り出すように扱いてくれていた手が離れていく。余韻が引いていくにつれ、リトの思考もクリアになってきた。
「ごめん、お湯の中に出しちゃった……」
「構いませんよ。でも、もう一度おからだを洗いましょう」
「ん……」
ノアの腕が、バスタブの中のリトのからだを抱き起こしてくれた。間近で目が合う。
「……気持ちよかった。ありがと……」
いまさら恥じらいながらリトがそう言うと、ノアは本当にうれしそうに、花がほころぶような笑みを浮かべた。
これまでのあるじたちにも、きっと変わらぬ献身を捧げてきたのだろう。決してリトだけが特別なわけではない。そうだとしても、
(いまは、おれがいちばん大事にされてる)
いまだって、昨日までと変わらぬやさしい手付きでリトの髪を洗ってくれている。いつもより口数が少ないし、元気がないような気はするけれど、それはリトも同じだ。
(きもちいい……)
湯の張られたバスタブに寝そべって髪を洗われながら、リトはほうっとため息を吐いた。ノアの長い指が、丁寧に地肌をこすっていく。ゆうべは過敏になりすぎてつらかったけれど、さすがに今日は大丈夫だ。
丹念にマッサージまでしてくれた手指が離れ、カランを捻る音がして、やわらかなシャワーが後頭部へ触れた。
すすいでくれているあいだも、指の腹がするすると地肌をすべっていくのが気持ちいい。
しっかりトリートメントまで終えたあと、大きな両手がぎゅうっと水気をしぼった。
ここまでで洗髪は終わりだ。ノアはいつも、「ゆっくりあたたまってください」と言い置いて浴室を出ていく。
けれど今夜は、ノアが口を開くまえにリトが手を伸ばした。
立ち上がろうとしてバスタブの縁を掴んでいたノアの右手を、濡れた左手で掴む。
「リト様……?」
どうかなさいましたか、と不安げに覗き込んでくるうつくしい顔を見上げて、リトはどきどきと暴れている心音を聴きながら彼の長い指に指を絡めた。
――正直に、してほしいこと言ってみなよ。
友人の心強い声に背を押される。羞恥で泣きそうになりながら、けれどはっきりとリトは言った。
「慰めて」
ノアが息を呑む気配がする。一瞬で緊張したノアの右手を掴んで持ち上げ、湯の中に沈んでいる己の胸元へ触れさせた。
「ん」
ただ、平らな胸元にノアの手のひらを置いただけなのに、からだが揺れて湯が跳ねた。ぴちゃん、というその水音を合図にしたように、リトの手にされるがままにされていたノアの右手がするりと動いた。
「あっ、♡」
白濁した湯の中で、ノアの長い指はすぐに胸の突起を探り当てた。すでに痛いほど硬くなっている左側のそれを、指の腹でやさしく撫でてくる。
「あ、ん、ん♡ きもち……♡」
自分以外の指で乳首を愛撫されるのははじめてだった。自慰とはぜんぜん違う。ものすごくドキドキするし、頭の芯がビリビリするくらい気持ちがいい。
「リト様……」
熱っぽい声で名前を呼ばれて、リトは涙の膜の張った両目でノアを見上げた。うつくしい顔が近づいてくる。ここひと月ですっかり慣らされてしまったからだが、反射的に瞼を伏せてゆるくくちびるを開いた。
「ん……っ♡」
ノアのやわらかなくちびるが、しっとりとリトのくちびるを食んだ。ノアとは毎日キスをしているのに、なんだかいつもと違う気がする。いつものノアはこんなふうに、いやらしい動きでくちびるを啄んできたりしないし、いやらしい音を立てて舌を絡めてきたりしない。
「ん、んん……っ♡ は、ぁ……ん……♡」
「ん……っ」
水音の合間にノアの上擦った色っぽい吐息が聞こえて、リトは鼓膜から頭の中までぞくぞくしてしまった。
(えっちなキスしながら、乳首こりこりされるのやばい……っ♡ ずっと甘イキしてる……♡)
ひくん、ひくん、とからだがふるえるのを止められない。湯の中で腰が浮いてしまう。
(ノアの指きもちい……♡ あ、右の乳首も触ってくれる……♡ うれしい♡ うれしい♡)
両胸の突起を捏ね回されて、気持ちよくしてくれるのがうれしすぎて一生懸命ノアの舌を吸ってしまった。
「ん、ふ……、」
「……っ♡ っ、ん、んっ♡」
技巧もなにもないリトの舌に応えてくれながら、ノアはその左手をゆっくりと湯の中へすべらせた。指先が薄い腹を辿り、臍をくすぐって、きちんと手入れされている淡い下生えを掻き分け、ゆるく勃ち上がっている性器へ触れる。
「っ、♡ ん、~っ♡」
(ちんちん、触られてる……っ♡ あ、すごい、なにこれ、きもちい……っ♡)
大きな手のひらでやさしく揉み込むようにされるのが、こんなに気持ちいいなんて知らなかった。お尻でばかりオナニーしていたせいで勃起が弱くなっていたのに、あっという間に硬くなる。
「気持ちいいですか?」
くちびるを離したノアが、湯の中で左手を上下させながらやさしい声で訊いてくる。
「うん、うん、きもちい……っ♡ あ、あ、あ♡」
はじめて与えられる他人の手からの刺激に、リトは一瞬でとろとろになってしまった。右手は左右の乳首を気まぐれに行き来しながら、ときおり爪の先でかりかりと引っ掻いてくれる。
「ちくび、も、きもちい、っあ♡ だめっ、だめ、いっちゃう、いっちゃう♡」
「このまま出して頂いて大丈夫ですよ」
「い、く、いく、いく……っ♡」
びくん、と全身が緊張して、リトは湯を跳ね上げながら絶頂した。
(乳首で甘イキしながら射精するの、きもち……♡)
「は、はあーっ♡ 、は、ーっ♡」
最後まで絞り出すように扱いてくれていた手が離れていく。余韻が引いていくにつれ、リトの思考もクリアになってきた。
「ごめん、お湯の中に出しちゃった……」
「構いませんよ。でも、もう一度おからだを洗いましょう」
「ん……」
ノアの腕が、バスタブの中のリトのからだを抱き起こしてくれた。間近で目が合う。
「……気持ちよかった。ありがと……」
いまさら恥じらいながらリトがそう言うと、ノアは本当にうれしそうに、花がほころぶような笑みを浮かべた。
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