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カリキュラム

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「今後のカリキュラムを決めましょう」

 キスで甘イキしてしまったリトと、腰にゴリゴリと当たっていたそれが落ち着いたあと、元の席に戻ったダレンは何事もなかったかのようにそう言った。

「マグナルクに召喚されてきた聖獣には、まずこの世界のお勉強をしていただくことになっているんです。聖獣の住まう聖界とわたしたちの住むこの世界とでは、習慣も生活様式も物事の価値観もなにもかもが違いますから……ヴォルフさまも、うちの母にいろいろと教わったんですよね?」
「ああ。人前で全裸になるな、と真っ先に教わったな」
「そこから……?!」

 リトは思わず声に出して突っ込んでしまった。ヴォルフは特に気にした様子もなく、鷹揚に茶を飲んでいる。

「聖界にも、もちろん服はある。オレがいま着ているこれも、ルピの民族衣装を模して作ってもらったものだ。だが、オレたちが服を着るのは人型のときの肌を外部の刺激から守るためだったり、着飾ること自体が目的で、人前で裸を晒すことに対してはなんの抵抗もない。そもそも、獣の姿でいるときは服など着ないからな」
「わたしたちも、大昔は服なんか着てなかったはずなんですけどね。こういった羞恥心は、人間さんといっしょですね♡」

 ダレンはうれしそうだ。人間との相違も共通点も、彼にとってはうれしいことらしい。

「リトさまは地球からいらしたようなものですから、ヴォルフさまよりはこの世界に馴染みやすいかもしれませんね」

(地球……)

 昨日、ダレンがそう口にしていたときにもわずかな違和感があったが、この世界には、リトの暮らしていた『地球』という惑星の概念があるのだ。ゲームの中では、そんな単語は出てこなかった。

「月曜日から木曜日までの午前中は、わたしが授業をいたします。リトさまには平行してマナの摂取をがんばって頂いて、金曜日にヴォルフさまから成長の具合を見ていただくことにしましょう。土日はおやすみです」

 この世界も完全週休二日制なんだな、とリトは頭の片隅のほうで思った。曜日に関しては言語魔法がわかりやすく翻訳してくれている可能性があるが、一週間が七日であることや、一日が二十四時間であることも同じだ。毎日きちんと太陽がのぼって落ち、月が出る。そういえば、ゲームの中のカレンダーも十二ヶ月だった。

「わたしとヴォルフさま以外にも、マナの供給に協力してくれそうなひとがいたら積極的にお願いしてほしいのですけど――先程の様子を見たら心配になっちゃったので、身近にいる安全そうなひとにだけお願いしてください」
「は、はい」
「それでなくとも美味しそうなんですから、あんまり無防備なところを見せちゃだめですよ」

(やっぱり美味しそうって言ってるよね……?!)

 魔族も天族も、人間を食べたりしないはずだ。言語魔法の、翻訳ミスかなにかだろうか。



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