誰からも愛される聖獣に転生したのに、推しにだけ嫌われています

羽里うめこ

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実技指導

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 ヴォルフが笑った気配がして、ふ、と吐息が唇にかかった。心臓が跳ねる。
 触れるというよりはほとんど食むようにして、ヴォルフの唇がリトの唇に重なった。

「んっ」

 くちびる全体を、あむあむと味わうようにされている。くすぐったいような、でも単純な擽ったさとは違う甘やかな痺れが背筋を走って、勝手に背が反った。

「ちいさな口だな」

 唇を触れ合わせたまま、楽しそうにヴォルフが言った。

「歯も、舌もちいさい」
「んぁ……っ」

 ヴォルフの肉厚な舌先が、輪郭を確かめるように歯列をなぞってくる。むず痒さに思わず喘ぐと、ゆるんだ隙間から舌先がねじ込まれた。

「ぁ、は……っ」
「ん……」

 リトの怯えきったちいさな舌を、ヴォルフの大きな舌はあっという間に捕まえて絡め取ってしまった。先程まで飲んでいた、香ばしい茶の味がする。ちゅく、と鳴る水音と、ヴォルフの色っぽくかすれた吐息に鼓膜からうなじまでぞくぞくした。

(え、えっちなキスだ……これ……っ)

 リトだって、ただ触れ合うだけのキスで済むと思っていたわけではない。先程までの話から推察するに、他人にマナを分け与えるためには体液を介する必要があるのだろう。しかし、頭ではわかっていても、実際にされてみると戸惑わずにはいられなかった。

「ふぁ、あ……ぁん、んん……んっ」

 敏感な上顎をくすぐられるたび、捕まえられた舌をちゅこちゅこと扱かれるたび、鼻にかかった感じきった声が出てしまう。

(えっちなキス、きもちいい……からだ勝手にびくびくしちゃう、はずかしい)

 びくつく背を支えてくれている大きな手のひらが、ときおりなだめるようにからだを撫でてくれるのもたまらなかった。肌触りのいいセーターの下で、自分の手で開発しきってしまった乳首がつんと勃っているのがわかる。アナニーにハマりすぎて勃起しづらくなってしまったペニスと違って、乳首のほうは些細な刺激でもすぐにツンと硬くなった。

(ちくび、服にこすれてきもちいよお……)

 快楽に頭がぼうっとして、だんだん気持ちがいいことしか考えられなくなってきた。

「ん……っ、んく、ん、ん♡」
「ふ……、」

(ヴォルフのだえき、おいしい……もっと、もっとほしい)

 気が付いたら、両手をヴォルフの頬に添えて、必死にその舌と唇を吸っていた。自分がどれだけはしたない音を立てて唾液を啜っているか、気持ちのいいことに夢中になっているリトは気付かなかった。

 やがて、こらえきれないように喉奥で笑いながら、ヴォルフがリトの顎を指先でおさえてゆっくりと顔を離した。

「――末恐ろしいフェルだな、おまえは。このまま一日じゅう腕へ抱いて、際限なくマナを注いでしまいそうだ」

 欲しがって突き出したままだったちいさな舌先を、ヴォルフの親指の腹でそっと撫でられ、リトはハッとした。

「あ、お、おれ……」
「欲しがりで感じやすい。フェルにとってはこの上ない資質だ。召喚されず聖界で生まれていたら、きっとよいマテリスになっただろう」

 慈しむようなやさしい眼差しで、ヴォルフは言った。
 しかし、いまだ彼の膝の上で腰を抱かれているリトには、きちんとわかっていた。

(褒められたかんじになってるけど、要は天性の淫乱だってことなのでは……?!)

 己の性欲が強いことには薄々気が付いていたが、言葉にされるといたたまれない心地になった。

「では、次はわたしの番ですね」

 いつの間にか背後に立っていたダレンの両手が、後ろからリトのからだを抱き上げた。

「わ……っ」

 軽々と持ち上げられ、先程までリトが座っていた椅子に腰を下ろしたダレンの膝へ、ひょいと乗せられてしまった。甘い、いいにおいがする。驚いて見上げた先で、ダレンはアメジストの双眸をとろりと細めた。

「わたしとキスするの、お嫌ですか?」

 蜜のしたたるような甘くかすれたこの声でこんなことを言われて、誘惑を跳ね除けられる人間がいるだろうか。いるかもしれないが、少なくともリトには無理だった。頭で考えるよりも先に、「いやじゃないです」と口から出ていた。自分は本当にどうしようもない淫乱なのかもしれない。

「よかったです♡ いっぱい気持ちよくなってくださいね……♡」

 そう吐息混じりにささやいた艶めいた唇が、しっとりとリトの唇に触れた。

「ん……っ」

 感触をたのしむように何度かやわくついばんだあと、やわらかな舌先が中へ入れてほしそうにあわいを撫でた。強引に押し入ってきてくれればいいのに、ダレンはそうしない。リトが自分から欲しがるのを待っている。

(やさしいのかいじわるなのかわかんない……)

 ほとんど泣きそうになりながら、リトはおずおずと口を開いた。自らふるえる舌を伸ばして、ダレンの舌先へ触れる。互いの舌先がちょんと触れ合っただけでびくっとして、咄嗟に引っ込めかけたリトの舌を、ダレンは先程までの謙虚さが嘘のような横暴な仕草で捕まえた。

「ん、んーっ、ぁ、あ、んん……っ」

 じゅこじゅこと、わざとらしく音を立てて口の中を掻き回されている。頭の芯がくらくらするようなあまい匂いに包まれながら、先程のヴォルフとのキスですっかり敏感になっていた咥内を好き放題されて、からだが勝手にびくびくとふるえるのを止められなかった。

(きもちいい、どうしよ、どうしよ、頭の中がえっちになっちゃう)

 そう思ったときには、リトはもうとろんととろけた目をして、ダレンの舌先をちゅくちゅくと吸っていた。そこから、甘くておいしい蜜がたくさん出てくる。もっと欲しかった。
 応えるように、ダレンのその甘い舌が、リトの咥内の気持ちのいいところを念入りに撫でていった。

(あ、だめ、だめ、いっぱいきもちいいのきちゃう)

「ん、んあ、あ、あ……♡」

 ダレンの首のうしろへ両手を回し、必死に唾液を飲み込みながら、リトはじわじわと込み上げてきた甘やかな絶頂に全身を痙攣させた。

「……っ♡ っ♡ ぁ……♡」
「はぁ、んん……びくびく甘イキしてるの、かぁわいい……♡」

 リトの感じきった吐息ごと貪るように堪能したあと、ようやくダレンは唇を離した。余韻にひくんひくんとふるえているリトを腕に抱いたまま、うっとりとした眼差しで見下ろしてくる。

(キスで……人前で甘イキしちゃった……ていうか……腰のとこに……なんかゴリゴリしたやつが……当たっ……)

 ゲームの中で、レヴィの奥のところをよしよし♡ごんごん♡していたあれだ。

「……ご、ごめんなさい……」

 予想外の事態に動揺して、リトはとっさに謝ってしまった。
 謝った瞬間に、身を包んでいる甘い香りがいっそう濃く薫りながらねっとりと全身へ絡み付いてきた気がして、ぞくりと背がふるえた。

「だめですよ、リトさま。こんな状況でかわいらしく謝ったりしたら、悪いおとなに付け込まれてぐっちょぐちょにされちゃいますからね……?」

 どろりとした色香をたたえるうつくしい笑みでたしなめられて、リトはこくこくとうなずく他なかった。



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