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お決まりのパターン
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新しい生徒、新しい先生、新しい教室。こう新しいものに囲まれると、やっと高校生になった自覚が湧いてくる。
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。そして、私立にも関わらずこの楷楠高校に入学していただきありがとうございます」
担任が話す。女の、明らかに若い担任だ。
「それじゃあまずはみんなから自己紹介してもらおうかな。私が先に自己紹介で長く話しすぎて、みんなが自己紹介する時間が取れなくなっても困るしね。名前と出身校、あとは何でもいいからとりあえずみんなに向けて一言、言えそう? じゃあ出席番号1番から順番にどうぞ」
「えー安島守人です──」
1番が自己紹介を始めた。
俺の出席番号は6番、すぐに順番が回ってくる。だから考える時間が少ない。しかし、この自己紹介で今後の学校生活のポジションが決まると言っても過言ではない。ここで失敗するとスタートダッシュで転んだようなもの、追い上げは厳しい。
こうなることは分かっていたから、今日の自己紹介のためにしっかり言葉を考えてきた。イメージトレーニングもばっちりしてきた。完璧な自己紹介が出来る自信がある。
と言うのも、俺は陰キャにも陽キャにもならない絶妙な位置にいたい、そのための秘策を思いついた。それは、
ありきたりなことを落ち着いた口調で、でも笑顔で言う。
これが出来ればスタートダッシュは大丈夫なはずだ。
順番が回ってきた。
「小野瀬実です。広陰中学出身です。これから三年間よろしくお願いします! あの、そんなにニヤニヤしながらこっちを見られても……分かったもう遅刻はしないからニヤニヤしないでくれ!」
クラス中が爆笑した。そんなことさせようとは全く思ってなかったのに。こんなんじゃ陽キャの中心に立たされてしまう。
こんなことになるなら入学式に行かなきゃよかった。
ニヤニヤするな、って言ってちゃんと聞いてくれている奴は一人もいない。頼むからやめてくれって。もうニヤついた顔なんて見たくない、目が合ったりしたら最悪だ、外の景色でも楽しんでおこう。
この学校は少し標高の高いところに造られていて、窓からは町を見下ろすことができ、さらに奥には海が見える、高校のなかではかなり景色がいいほうだろう。
こんな景色を眺めることができるのも、出席番号1番から6番の特権だ。と言うのも、今の席は出席番号順になっていて、この6番の席は、窓側の列の一番後ろ、黒板から見て右隅の席だ。ここは生徒全員が羨む一番いい席なのだが、俺はここが嫌だ。なぜなら──
「凪中学出身の国枝ひそかです。この三年間、みんなと仲良く楽しく過ごしていきたいです、よろしくお願いします!」
出席番号12番、つまり俺の隣の人、それがさっきぶつかったあの女子になるとは……
「なんでお前がこんなところにいるんだよ!」
他の生徒に聞こえると面倒くさいので小声で言った。
「あ、さっきぶつかっちゃった人だよね? さっきはごめんねぶつかっちゃって」
「お前のせいで入学式に遅れてあんな恥をかかなくちゃいけなくなったんだからな! どうしてくれるんだよ!」
「それは言いすぎだよ!」
知っている。彼女の言っていることは正しい。俺が彼女に遅れたことを八つ当たりしているだけだ。
でも今さらもう引けない! ここで引いたらめっちゃダサい!
「しかも、『入学式の日の登校中にぶつかって、その人と隣の席』って、お前は漫画のヒロインか何かなのか? ベタなことしか出来ないのか?」
「別にやりたくてやってるわけじゃないもん!」
「恨むなら神を恨め。お前はそんなことしか出来ない運命なんだ」
もはや自分でもよく分からない反論だが、何とか黙らせることは出来たか。
お前まだ喋るのか? もういいだろ諦めろ。
「それってつまり、私とあなたは運命で繋がれたんだよ、って言いたいの?」
何そのカウンター!? そんなこと言ってないだろ? 顔赤らめながらそのセリフを囁かれたらこっちも恥ずかしくなるだろ! 可愛いのは反則だろ……
「ちち違うそんなこと言ってないだろ! うるさい! も、もう黙ってろ!」
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。そして、私立にも関わらずこの楷楠高校に入学していただきありがとうございます」
担任が話す。女の、明らかに若い担任だ。
「それじゃあまずはみんなから自己紹介してもらおうかな。私が先に自己紹介で長く話しすぎて、みんなが自己紹介する時間が取れなくなっても困るしね。名前と出身校、あとは何でもいいからとりあえずみんなに向けて一言、言えそう? じゃあ出席番号1番から順番にどうぞ」
「えー安島守人です──」
1番が自己紹介を始めた。
俺の出席番号は6番、すぐに順番が回ってくる。だから考える時間が少ない。しかし、この自己紹介で今後の学校生活のポジションが決まると言っても過言ではない。ここで失敗するとスタートダッシュで転んだようなもの、追い上げは厳しい。
こうなることは分かっていたから、今日の自己紹介のためにしっかり言葉を考えてきた。イメージトレーニングもばっちりしてきた。完璧な自己紹介が出来る自信がある。
と言うのも、俺は陰キャにも陽キャにもならない絶妙な位置にいたい、そのための秘策を思いついた。それは、
ありきたりなことを落ち着いた口調で、でも笑顔で言う。
これが出来ればスタートダッシュは大丈夫なはずだ。
順番が回ってきた。
「小野瀬実です。広陰中学出身です。これから三年間よろしくお願いします! あの、そんなにニヤニヤしながらこっちを見られても……分かったもう遅刻はしないからニヤニヤしないでくれ!」
クラス中が爆笑した。そんなことさせようとは全く思ってなかったのに。こんなんじゃ陽キャの中心に立たされてしまう。
こんなことになるなら入学式に行かなきゃよかった。
ニヤニヤするな、って言ってちゃんと聞いてくれている奴は一人もいない。頼むからやめてくれって。もうニヤついた顔なんて見たくない、目が合ったりしたら最悪だ、外の景色でも楽しんでおこう。
この学校は少し標高の高いところに造られていて、窓からは町を見下ろすことができ、さらに奥には海が見える、高校のなかではかなり景色がいいほうだろう。
こんな景色を眺めることができるのも、出席番号1番から6番の特権だ。と言うのも、今の席は出席番号順になっていて、この6番の席は、窓側の列の一番後ろ、黒板から見て右隅の席だ。ここは生徒全員が羨む一番いい席なのだが、俺はここが嫌だ。なぜなら──
「凪中学出身の国枝ひそかです。この三年間、みんなと仲良く楽しく過ごしていきたいです、よろしくお願いします!」
出席番号12番、つまり俺の隣の人、それがさっきぶつかったあの女子になるとは……
「なんでお前がこんなところにいるんだよ!」
他の生徒に聞こえると面倒くさいので小声で言った。
「あ、さっきぶつかっちゃった人だよね? さっきはごめんねぶつかっちゃって」
「お前のせいで入学式に遅れてあんな恥をかかなくちゃいけなくなったんだからな! どうしてくれるんだよ!」
「それは言いすぎだよ!」
知っている。彼女の言っていることは正しい。俺が彼女に遅れたことを八つ当たりしているだけだ。
でも今さらもう引けない! ここで引いたらめっちゃダサい!
「しかも、『入学式の日の登校中にぶつかって、その人と隣の席』って、お前は漫画のヒロインか何かなのか? ベタなことしか出来ないのか?」
「別にやりたくてやってるわけじゃないもん!」
「恨むなら神を恨め。お前はそんなことしか出来ない運命なんだ」
もはや自分でもよく分からない反論だが、何とか黙らせることは出来たか。
お前まだ喋るのか? もういいだろ諦めろ。
「それってつまり、私とあなたは運命で繋がれたんだよ、って言いたいの?」
何そのカウンター!? そんなこと言ってないだろ? 顔赤らめながらそのセリフを囁かれたらこっちも恥ずかしくなるだろ! 可愛いのは反則だろ……
「ちち違うそんなこと言ってないだろ! うるさい! も、もう黙ってろ!」
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