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第五話
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ファシル達は合流してから街に向かうまでの道中、運よく怪物と遭遇しなかった。その間、二人は些細な会話を続けた。ファシルは、旅に出てから久しぶりに人と話をするので、楽しくなって一方的に喋り続けた。そのよく喋るファシルの相手をレイリアも楽しそうにし続けた。ある程度お喋りを続けた後、ファシルは思い出したように、レイリアが怪物に襲われていた理由を訊いた。
レイリアは調査のため森に入っていた。そして調査の途中、件の怪物に遭遇したのだそうだ。レイリアの目的は森の調査であり戦闘は想定していなかったので、レイリアは接敵してすぐに逃げるつもりであった。しかし、それが出来なくなったため止む終えずという事であった。そして、ファシルが助けに入って今に至った。
「ありがとう」
と改めてお礼を言うレイリア。
「いいよ」
別に大したことじゃないと言うファシル。ファシルは本当にそのつもりはなかったのでそっけなく返事をした。しかし、人を助ける事が出来た事にはほっと胸を撫で下ろしていた。
歩き続けて森を抜けた二人の視界には、まず広い平原が目に入る。そしてその先にあるとても大きな湖。そしてその湖に隣接する街がリーケスであった。
二人がリーケスの街に到着したのは、夕方になってすぐといったところであった。
街に到着してまず飯屋に入る二人。そこはレイリアの行きつけの店であった。店に入ると、店の中は人が多く入っており繁盛していると言えた。この店はリーケスでも有名な店であり、ここで出される料理は美味しいと評判であった。レイリアが顔見知りなのか店員に声を掛けると、すぐに席に案内された。二人掛けのテーブルに着く二人。席に着くとレイリアは慣れた様子で店員に注文する。
「何にする?」
自分の注文を終えたレイリアはファシルに伺った。ファシルはメニューを見ても分からなかったのでレイリアにおススメされた同じものにした。注文を承った店員が厨房の方へと戻っていく。注文を終えて料理を待っているファシル。
「ここ」
私の奢りだからとさらっと言いのけるレイリア。戸惑ったファシルであったが、持ち合せがあまりなかったのでありがたく頂く事にした。
ファシルはは料理が運ばれてくるのを待っていると、他の席にいた客が近付いてくるなり
「よう!」
とファシルの肩に手を回してきた。その客は酒臭く、相当に酔っていた。
嫌そうにするファシルの顔を見て、その客はからかう様に言葉を投げてくる。
「女連れか」
いい身分だなとあまりよくない呂律で言う客。その声は大きく、周りにいたその客の仲間もそれを聞いて大笑いした。ファシルはいい加減鬱陶しくなり、肩に回された手を払いのけた。
その態度にむっとしたのか、やんのかと半笑いのふざけた態度のまま言う客。ファシルがその客に文句を言おうとしたその時、レイリアに手で制された。
「なに」
なんかようと顔を客に向けて、睨みつけながら言うレイリア。
客はファシルに絡んだ勢いのままレイリアを伺う。しかし、レイリアの顔をしっかりと認識した途端、黙り込んでしまった。たちまち焦った顔になっていく客。その表情は酔いなど吹き飛んだ様であった。黙り込んでいた客は咳払いをして誤魔化しつつ目をそらす。
「オヤジ勘定」
そう言って金を払って仲間と共に店を出ていった。
急なことに理解が追いつかないファシルであったが、丁度来た料理を指して
「どうぞ」
召し上がれと言うレイリアに妙な圧を感じた。
「頂きます」
そう言ってファシルは料理を食べ始めた。
レイリアに勧められた料理は先程までのいざこざを忘れさせる程のとても美味しい料理であった。
「美味しかった」
ありがとうとレイリアにお礼を言うファシル。そのお礼は、美味しい料理を教えてくれた事と奢ってくれた事の二つの意味を込めてであった。
「いえいえ」
どういたしましてと言うレイリア。
二人は店を出てそういったやり取りをしていると、レイリアが何か用事を思い出したらしく、挨拶もそこそこに足早に去っていった。店の前で解散となったファシルは宿屋を探し始めた。
街を見て回るファシルは、リーケスの街の大きさに見とれていた。目に入って来る建造物はどれも大きく立派である。宿屋探しから街散策に目的が変わってしばらくした頃、ファシルは人気のない場所に辿り着いていた。そこは倉庫街で、街のはずれであった。
ファシルは来た道を戻ろうと踵を返すと、そこには男達が立っていた。そして後ろからも数人現れた。ファシルは男達に囲まれてしまった。ファシルは嫌な予感を感じて、身構えた。
すると、一人の男が喋り出した。その男がこの集団の長の様であった。
「さっきはよくも」
恥をかかせてくれたなと声を上げる長。その長はよく見ると飯屋で絡んできたケツ顎の男であった。ケツ顎は相当頭に来ているのか早口でまくし立てた。しかしファシルはケツ顎の言い分を一蹴した。
「知るか」
そんなこと、と至って平坦な口調で言い返すファシル。
ケツ顎はファシルの態度と言葉に顔を真っ赤にし、言葉にならない事をわめき始めた。
ケツ顎のわめきを仲間が鎮める。どうやら飯屋の事とは別に本題がある様であった。
「その剣」
何処で手に入れた、と落ち着きを取り戻したケツ顎が言う。
ケツ顎が飯屋で絡んできた目的はその事が理由であったらしい。
(嘘だな)
ファシルはケツ顎の嘘くさい理由に内心毒を吐きつつも質問に答えた。
「森で拾った」
ファシルが短く端的に答えると、その答えを吟味する間もなく
「嘘をつくな!」
とケツ顎は怒鳴り声を上げた。
「確かに森には剣が落ちている」
「しかし、それは王国兵でも特殊任務に当たる者が持つ剣」
「その辺に落ちている剣とは違う」
と大きな声でまくし立てるケツ顎。そして一息置いて
「確か」
ある村に調査任務が出ていたはず、ととぼけた様に言ったケツ顎の言葉端からは、ファシルを今すぐに痛めつけたいといった意思が伺えた。
ファシルは知らなかったが、ファシルが携帯していた剣は王国兵特殊部隊謹製の剣で間違いなかった。そんな事とは露知らず、ファシルは携帯していた剣を鞘から抜いた。ファシルは白を切るのが面倒くさくなったのだ。
ファシルが剣を抜いた事を合図にケツ顎の命令が下る。
「村の生き残りだ!殺せ!」
王国兵はケツ顎の号令の下、動き出した。王国兵達は、標的は一人だと舐めてかかっていた。ケツ顎を抜いて四人の王国兵が戦うを構えをとった。人数的な心理で、自分たちは有利で勝機はこちらにあると疑わず、攻めにかかった王国兵達。しかしその目算は王国兵の予想を大きく外れる。まず初めに、抜刀が一番遅かった者の腕が切り裂かれた。そして次に移る。
次の者は、切り裂かれた仲間を見ていて少しひるんだ隙を突かれた。標的の迫る剣に対して目は追いついているが、ひるむといった予備動作のせいで体の動作が間に合わなかった。
標的の剣の軌道を、構えた剣で防ごうとしたが、それは既に剣が通り抜けた後であった。
後に残る二人からは標的の速い剣が、構えた剣の上を素通りしたように見えていた。
残った王国兵の片方はその光景に恐れおののいたが、もう一人は果敢に攻めた。
「ヴォル」
標的に向けて放たれた炎系魔法。それは小さな爆発を起こして標的の場所を吹き飛ばす。
爆発によって発生した煙が薄らいだ時、人影が見えた。恐れでひるんでいた王国兵が、叫びんで奮い立ちその人影に切り掛かる。
「これで終わりだっ!」
切り掛かった王国兵の手には、勢いよく肉を切ったという感触が伝わっていた。
魔法を放った王国兵は仲間が人影を切るところを見ていた。
(やったか?!)
そう思った王国兵の目には煙の中で二か所光った様に見えた。
人を切った感触に、どうだと言わんばかりに振り返った王国兵であったが、その目には信じられないものが映った。仲間に二つの剣が突き刺さっていた。
理解が追いついていないその頭で感じた、喉ぼとけのところを冷たいものが横に通る感覚。
「え」
疑問符を一言残し、王国兵は絶命した。
ケツ顎は目の前の出来事が信じられなかった。嘘なのではと思い頬をつねったが痛みがしっかりと感じられた。信じられない信じたくない光景に呆けていると声がかかる。
「おい」
その声にハッとしたケツ顎は相手を恐る恐る見た。
「まだ」
続けるかとあっさりとした、冷静な声による問い掛けであった。
ケツ顎は、どうにかしたい思いと、それを否定する絶対的な光景にどうしていいか分からなくなった。しかしどうにかしなければならなかった。
(飯屋で恥をかかされ、王国謹製の剣をだしに仕返ししてやろうと絡んでみればこのざま)
(挙句の果てにはまだ続けるかだと……ふざけやがって……)
(しかしこの状況は俺一人では対処できない……)
葛藤が続き、蒸気が出る程に沸騰した感情が落ち着いて一つの答えを出す。
ケツ顎は深呼吸し、ひと呼吸おいてからしゃべり始める。
「いいだろう、お前の強さに免じて俺の本気を見せてやる」
そう言うとケツ顎の長い詠唱が始まった。
レイリアは調査のため森に入っていた。そして調査の途中、件の怪物に遭遇したのだそうだ。レイリアの目的は森の調査であり戦闘は想定していなかったので、レイリアは接敵してすぐに逃げるつもりであった。しかし、それが出来なくなったため止む終えずという事であった。そして、ファシルが助けに入って今に至った。
「ありがとう」
と改めてお礼を言うレイリア。
「いいよ」
別に大したことじゃないと言うファシル。ファシルは本当にそのつもりはなかったのでそっけなく返事をした。しかし、人を助ける事が出来た事にはほっと胸を撫で下ろしていた。
歩き続けて森を抜けた二人の視界には、まず広い平原が目に入る。そしてその先にあるとても大きな湖。そしてその湖に隣接する街がリーケスであった。
二人がリーケスの街に到着したのは、夕方になってすぐといったところであった。
街に到着してまず飯屋に入る二人。そこはレイリアの行きつけの店であった。店に入ると、店の中は人が多く入っており繁盛していると言えた。この店はリーケスでも有名な店であり、ここで出される料理は美味しいと評判であった。レイリアが顔見知りなのか店員に声を掛けると、すぐに席に案内された。二人掛けのテーブルに着く二人。席に着くとレイリアは慣れた様子で店員に注文する。
「何にする?」
自分の注文を終えたレイリアはファシルに伺った。ファシルはメニューを見ても分からなかったのでレイリアにおススメされた同じものにした。注文を承った店員が厨房の方へと戻っていく。注文を終えて料理を待っているファシル。
「ここ」
私の奢りだからとさらっと言いのけるレイリア。戸惑ったファシルであったが、持ち合せがあまりなかったのでありがたく頂く事にした。
ファシルはは料理が運ばれてくるのを待っていると、他の席にいた客が近付いてくるなり
「よう!」
とファシルの肩に手を回してきた。その客は酒臭く、相当に酔っていた。
嫌そうにするファシルの顔を見て、その客はからかう様に言葉を投げてくる。
「女連れか」
いい身分だなとあまりよくない呂律で言う客。その声は大きく、周りにいたその客の仲間もそれを聞いて大笑いした。ファシルはいい加減鬱陶しくなり、肩に回された手を払いのけた。
その態度にむっとしたのか、やんのかと半笑いのふざけた態度のまま言う客。ファシルがその客に文句を言おうとしたその時、レイリアに手で制された。
「なに」
なんかようと顔を客に向けて、睨みつけながら言うレイリア。
客はファシルに絡んだ勢いのままレイリアを伺う。しかし、レイリアの顔をしっかりと認識した途端、黙り込んでしまった。たちまち焦った顔になっていく客。その表情は酔いなど吹き飛んだ様であった。黙り込んでいた客は咳払いをして誤魔化しつつ目をそらす。
「オヤジ勘定」
そう言って金を払って仲間と共に店を出ていった。
急なことに理解が追いつかないファシルであったが、丁度来た料理を指して
「どうぞ」
召し上がれと言うレイリアに妙な圧を感じた。
「頂きます」
そう言ってファシルは料理を食べ始めた。
レイリアに勧められた料理は先程までのいざこざを忘れさせる程のとても美味しい料理であった。
「美味しかった」
ありがとうとレイリアにお礼を言うファシル。そのお礼は、美味しい料理を教えてくれた事と奢ってくれた事の二つの意味を込めてであった。
「いえいえ」
どういたしましてと言うレイリア。
二人は店を出てそういったやり取りをしていると、レイリアが何か用事を思い出したらしく、挨拶もそこそこに足早に去っていった。店の前で解散となったファシルは宿屋を探し始めた。
街を見て回るファシルは、リーケスの街の大きさに見とれていた。目に入って来る建造物はどれも大きく立派である。宿屋探しから街散策に目的が変わってしばらくした頃、ファシルは人気のない場所に辿り着いていた。そこは倉庫街で、街のはずれであった。
ファシルは来た道を戻ろうと踵を返すと、そこには男達が立っていた。そして後ろからも数人現れた。ファシルは男達に囲まれてしまった。ファシルは嫌な予感を感じて、身構えた。
すると、一人の男が喋り出した。その男がこの集団の長の様であった。
「さっきはよくも」
恥をかかせてくれたなと声を上げる長。その長はよく見ると飯屋で絡んできたケツ顎の男であった。ケツ顎は相当頭に来ているのか早口でまくし立てた。しかしファシルはケツ顎の言い分を一蹴した。
「知るか」
そんなこと、と至って平坦な口調で言い返すファシル。
ケツ顎はファシルの態度と言葉に顔を真っ赤にし、言葉にならない事をわめき始めた。
ケツ顎のわめきを仲間が鎮める。どうやら飯屋の事とは別に本題がある様であった。
「その剣」
何処で手に入れた、と落ち着きを取り戻したケツ顎が言う。
ケツ顎が飯屋で絡んできた目的はその事が理由であったらしい。
(嘘だな)
ファシルはケツ顎の嘘くさい理由に内心毒を吐きつつも質問に答えた。
「森で拾った」
ファシルが短く端的に答えると、その答えを吟味する間もなく
「嘘をつくな!」
とケツ顎は怒鳴り声を上げた。
「確かに森には剣が落ちている」
「しかし、それは王国兵でも特殊任務に当たる者が持つ剣」
「その辺に落ちている剣とは違う」
と大きな声でまくし立てるケツ顎。そして一息置いて
「確か」
ある村に調査任務が出ていたはず、ととぼけた様に言ったケツ顎の言葉端からは、ファシルを今すぐに痛めつけたいといった意思が伺えた。
ファシルは知らなかったが、ファシルが携帯していた剣は王国兵特殊部隊謹製の剣で間違いなかった。そんな事とは露知らず、ファシルは携帯していた剣を鞘から抜いた。ファシルは白を切るのが面倒くさくなったのだ。
ファシルが剣を抜いた事を合図にケツ顎の命令が下る。
「村の生き残りだ!殺せ!」
王国兵はケツ顎の号令の下、動き出した。王国兵達は、標的は一人だと舐めてかかっていた。ケツ顎を抜いて四人の王国兵が戦うを構えをとった。人数的な心理で、自分たちは有利で勝機はこちらにあると疑わず、攻めにかかった王国兵達。しかしその目算は王国兵の予想を大きく外れる。まず初めに、抜刀が一番遅かった者の腕が切り裂かれた。そして次に移る。
次の者は、切り裂かれた仲間を見ていて少しひるんだ隙を突かれた。標的の迫る剣に対して目は追いついているが、ひるむといった予備動作のせいで体の動作が間に合わなかった。
標的の剣の軌道を、構えた剣で防ごうとしたが、それは既に剣が通り抜けた後であった。
後に残る二人からは標的の速い剣が、構えた剣の上を素通りしたように見えていた。
残った王国兵の片方はその光景に恐れおののいたが、もう一人は果敢に攻めた。
「ヴォル」
標的に向けて放たれた炎系魔法。それは小さな爆発を起こして標的の場所を吹き飛ばす。
爆発によって発生した煙が薄らいだ時、人影が見えた。恐れでひるんでいた王国兵が、叫びんで奮い立ちその人影に切り掛かる。
「これで終わりだっ!」
切り掛かった王国兵の手には、勢いよく肉を切ったという感触が伝わっていた。
魔法を放った王国兵は仲間が人影を切るところを見ていた。
(やったか?!)
そう思った王国兵の目には煙の中で二か所光った様に見えた。
人を切った感触に、どうだと言わんばかりに振り返った王国兵であったが、その目には信じられないものが映った。仲間に二つの剣が突き刺さっていた。
理解が追いついていないその頭で感じた、喉ぼとけのところを冷たいものが横に通る感覚。
「え」
疑問符を一言残し、王国兵は絶命した。
ケツ顎は目の前の出来事が信じられなかった。嘘なのではと思い頬をつねったが痛みがしっかりと感じられた。信じられない信じたくない光景に呆けていると声がかかる。
「おい」
その声にハッとしたケツ顎は相手を恐る恐る見た。
「まだ」
続けるかとあっさりとした、冷静な声による問い掛けであった。
ケツ顎は、どうにかしたい思いと、それを否定する絶対的な光景にどうしていいか分からなくなった。しかしどうにかしなければならなかった。
(飯屋で恥をかかされ、王国謹製の剣をだしに仕返ししてやろうと絡んでみればこのざま)
(挙句の果てにはまだ続けるかだと……ふざけやがって……)
(しかしこの状況は俺一人では対処できない……)
葛藤が続き、蒸気が出る程に沸騰した感情が落ち着いて一つの答えを出す。
ケツ顎は深呼吸し、ひと呼吸おいてからしゃべり始める。
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