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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年
第109話 総攻撃開始
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それから間もなくして、帝国からロキシニアス連合への総攻撃が始まる。
ヨトゥナの指揮をグライドに任せた俺たち5人はデュロリアンへ乗り込み、帝国の本星であるベルドバラファへ向かった。
「こんな古臭い感じの戦闘機で本当に大丈夫なのかね?」
周囲の宇宙空間で戦闘が起こる中、後部座席に乗っているペイナーが不安そうな声を上げる。
「ミサイルの集中砲火を受けても無傷じゃ。心配せんでいい」
「そ、そうなの? こんな小さな機体がそれほど丈夫とは思えないけどねぇ」
まあそう思うのもしかたない。
この世界にある他の戦闘機や宇宙船はもっと大きくて頑丈そうだ。それにくらべればデュロリアンはおもちゃのようであった。
「これほど小型で頑丈ならば、今回の作戦にはおあつらえ向きだ。サミオンツクナを信じるとしよう」
後部座席の真ん中にちょこんと座っているゼナイエが落ち着いた声で言う。
「それよりもこんな重要な作戦にイライゼン師匠が参加していないことには納得できません。なにか他に重要な任務を担っているということならともかく……」
それは俺も思う。
明らかに戦力にはならないペイナーを精鋭に加え、イライゼンを加えなかったことには疑問があった。
「理由はいずれわかる。恐らくな」
どういうことだろう?
わからないが、今ここで理由を話す気は無いらしい。
「お、おい。あの敵戦艦、こっちに向かってきてないかい?」
ペイナーの指差す方向から黒く巨大な戦艦が向かって来ていた。
「ツクナ、どうする?」
「どうもせん。まっすぐ進めばよい」
「ぶ、ぶつかるんじゃないか?」
「ぶつけてやればよい」
と、ハンドルの付け根へ手を伸ばしたツクナがそこにある赤いボタンを押す。
「うおおっ!?」
瞬間、デュロリアンが急加速する。
「うああっ! ハ、ハバンさんっ!」
「ぬあーっ!? こ、これは速すぎるんじゃないかねーっ!」
うしろの2人が叫ぶ中、デュロリアンは急速に巨大戦艦へと接近し、
ズガァァァン!!!
そのまま突き抜ける。
背後を振り返ると、先ほどまで眼前に迫っていた巨大戦艦が大爆発をし、あとには残骸だけが漂っていた。
「でかいだけで脆いのう」
全員が俺とルカ、ペイナーが唖然と背後を見つめる中、ツクナはパソコンを操作しながらポツリとそう呟く。
「こ、この戦闘機はなんなんだい? 頑丈過ぎる」
「戦闘機ではない。80年代に流行ったレトロカーじゃ」
「80年代? ってなんだい?」
「そんなことよりサミオンツクナ。あれだけ盛大に衝突して、この機体は平気なのか?」
「問題ない。無傷じゃ」
実際、移動にはなにも問題は発生していなかった。
「そろそろ到着するのじゃ」
「えっ? って、なにを言ってるんだちびっ子サミオン。まだ出発してから30分も経ってないじゃないか。惑星ベルドバラファには連合軍最高速の戦闘機を全速力で飛ばしたって3時間はかかるはずって……ええっ!?」
うしろでペイナーが声を上げる。
目の前にはすでに巨大な惑星があった。
「わ、惑星ベルドバラファ……。まさかこんなに早く到着できるなんて……」
「たいした戦闘機だ。いや、レトロカーとやらだったか」
フッとゼナイエは落ち着いた様子で笑う。
「し、しかし惑星ベルドバラファにだってウルーガの壁が張り巡らされているはずだ。どうやって突破するんだい?」
「ただ突っ込めばよいだけじゃ」
「いやまさかそれはさすがに……うああっ!?」
バリバリという激しい音を立てながら壁を突破する。
「な、なんて戦闘機だっ!」
「戦闘機ではないと言っておるじゃろう。まあよい」
惑星に突入したデュロリアンはベルドバラファの空を飛ぶ。
眼下には街並みが見え、その上空には巨大な球体が浮いていた。
「な、なんだあれは?」
不気味な真っ黒い球体だ。
あれがなんなのか俺にはまったくわからない。
「……あれは空中要塞グニールっ!? か、完成していたのか……」
ルカが驚きの声を上げた。
「知っているの?」
「ええ……。あれは先代皇帝の時代に設計だけされていた空中要塞です。ウルーガの壁を必要としないほど頑強に作られていて、全方位からの攻撃に対応して反撃を行えます。惑星間での移動も可能で、他星への侵略を想定して開発を提案されたのですが、平和な時代にそんなものは必要無いと先代皇帝の命で開発はされなかった強力な兵器です」
「ちょ、ちょっと待ってくれっ! なんで君がそんなことを知っているんだい?」
「……」
ペイナーの問いにルカは黙る。
俺はレプニールが彼に言った言葉から、ルカが何者かは知っている。恐らくツクナも知っていることだろう。
「……今さら隠すことでもありません。私は先代皇帝スクアルナータの子息ルオナルア。それが本当の名前です」
「ええっ!?」
と、大声を上げたのはペイナーだけ。
俺とツクナはともかく、ゼナイエも声は上げなかった。
「ゼ、ゼナイエ……。君はもしかしたら知っていたんじゃ……?」
「ああ」
一言そう呟いたゼナイエにペイナーは絶句して声を失う。
「我が彼のオーディアヌ帝国からの脱出を手助けしたからな。この件は極秘で、知っているのは我とグライドのみだ」
「ど、どうしてそんなことを……?」
「惑星ベルドバラファから脱出してきた彼の戦闘機をたまたま助けることになった。それだけだ」
「そ、それだけって……敵国の王子がこちらにいるなら、なにかしらの交渉で戦争を有利にできたんじゃないのかい?」
「彼は現皇帝のメイラッド・ローマから命を狙われていた。だから祖国を脱出したのだ。なにか交渉をすれば彼の命を帝国に差し出すことになる。そんな非道はヨトゥナの教えに反する」
「しかし命をって……どうして?」
それは俺も知らない。
聞いていいことなのかはわからず、気にしないようにしていたが……。
「それは……私があれを偽物と知っているからでしょう」
「あれって……なんのことだい?」
「オーディアヌ帝国の皇帝メイラッド・ローマに成り代わり、ホーンの滅亡を目論む愚か者のことです」
「こ、皇帝メイラッド・ローマが偽物だってっ!?」
驚きに叫んだのはやはりペイナーのみだった。
「あれは兄の偽物です。間違いありません」
「偽物って……けど、そんなことありえるのかい? 別人なんだろう?」
「はい。奴は白仮面と白アーマーで身を隠して、姿を隠しています」
「いやそれだって、中身が違ったら気付くと思うけど?」
「そうなんです。しかし奴は兄のすべてを知っているかのように、正体を偽っていいます。漫画を憎み、ホーンを殲滅しようとする醜悪な思想と残酷非道な性格がなければまるで本物のように……」
「だったらなにかあって変節したんじゃ……」
「そんなことはありえませんっ!」
悲痛な声音を上げたルカに、車内はシンと静まる。
「私はあの白仮面を被った偽物が我が兄であるメイラッド・ローマを殺した瞬間をこの目にしましたっ! 間違い無く、あれは偽物のメイラッド・ローマなんですっ!」
「……」
ルカが嘘をついているとは思わない。
事実、皇帝メイラッド・ローマは偽物なのだろう。
「けど、まったくの別人が本人になり切れるなんて考えにくい。たぶんその偽物は本物の皇帝をよく知っている人物じゃないかな? だとすれば、それは王子のルカ君もよく知っている人物かも……」
「はい。兄をよく知っている人物には心当たりがあります。その人は兄をよく知っていて、成り代わることも可能ではないかと思います」
「その人って誰なの?」
「兄が殺される前に行方不明となった私の姉テオナです。しかし姉はナイトとして戦う力などありませんでしたし、なにより兄を強く慕っておりました。あの偽物の正体が姉のテオナではずはないんです」
「……うん」
はっきりとルカが断言したため、俺は異論を挟めず肯定する。
しかしもしかしたら。
そんな思いが俺の中にはあった。
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「こんな古臭い感じの戦闘機で本当に大丈夫なのかね?」
周囲の宇宙空間で戦闘が起こる中、後部座席に乗っているペイナーが不安そうな声を上げる。
「ミサイルの集中砲火を受けても無傷じゃ。心配せんでいい」
「そ、そうなの? こんな小さな機体がそれほど丈夫とは思えないけどねぇ」
まあそう思うのもしかたない。
この世界にある他の戦闘機や宇宙船はもっと大きくて頑丈そうだ。それにくらべればデュロリアンはおもちゃのようであった。
「これほど小型で頑丈ならば、今回の作戦にはおあつらえ向きだ。サミオンツクナを信じるとしよう」
後部座席の真ん中にちょこんと座っているゼナイエが落ち着いた声で言う。
「それよりもこんな重要な作戦にイライゼン師匠が参加していないことには納得できません。なにか他に重要な任務を担っているということならともかく……」
それは俺も思う。
明らかに戦力にはならないペイナーを精鋭に加え、イライゼンを加えなかったことには疑問があった。
「理由はいずれわかる。恐らくな」
どういうことだろう?
わからないが、今ここで理由を話す気は無いらしい。
「お、おい。あの敵戦艦、こっちに向かってきてないかい?」
ペイナーの指差す方向から黒く巨大な戦艦が向かって来ていた。
「ツクナ、どうする?」
「どうもせん。まっすぐ進めばよい」
「ぶ、ぶつかるんじゃないか?」
「ぶつけてやればよい」
と、ハンドルの付け根へ手を伸ばしたツクナがそこにある赤いボタンを押す。
「うおおっ!?」
瞬間、デュロリアンが急加速する。
「うああっ! ハ、ハバンさんっ!」
「ぬあーっ!? こ、これは速すぎるんじゃないかねーっ!」
うしろの2人が叫ぶ中、デュロリアンは急速に巨大戦艦へと接近し、
ズガァァァン!!!
そのまま突き抜ける。
背後を振り返ると、先ほどまで眼前に迫っていた巨大戦艦が大爆発をし、あとには残骸だけが漂っていた。
「でかいだけで脆いのう」
全員が俺とルカ、ペイナーが唖然と背後を見つめる中、ツクナはパソコンを操作しながらポツリとそう呟く。
「こ、この戦闘機はなんなんだい? 頑丈過ぎる」
「戦闘機ではない。80年代に流行ったレトロカーじゃ」
「80年代? ってなんだい?」
「そんなことよりサミオンツクナ。あれだけ盛大に衝突して、この機体は平気なのか?」
「問題ない。無傷じゃ」
実際、移動にはなにも問題は発生していなかった。
「そろそろ到着するのじゃ」
「えっ? って、なにを言ってるんだちびっ子サミオン。まだ出発してから30分も経ってないじゃないか。惑星ベルドバラファには連合軍最高速の戦闘機を全速力で飛ばしたって3時間はかかるはずって……ええっ!?」
うしろでペイナーが声を上げる。
目の前にはすでに巨大な惑星があった。
「わ、惑星ベルドバラファ……。まさかこんなに早く到着できるなんて……」
「たいした戦闘機だ。いや、レトロカーとやらだったか」
フッとゼナイエは落ち着いた様子で笑う。
「し、しかし惑星ベルドバラファにだってウルーガの壁が張り巡らされているはずだ。どうやって突破するんだい?」
「ただ突っ込めばよいだけじゃ」
「いやまさかそれはさすがに……うああっ!?」
バリバリという激しい音を立てながら壁を突破する。
「な、なんて戦闘機だっ!」
「戦闘機ではないと言っておるじゃろう。まあよい」
惑星に突入したデュロリアンはベルドバラファの空を飛ぶ。
眼下には街並みが見え、その上空には巨大な球体が浮いていた。
「な、なんだあれは?」
不気味な真っ黒い球体だ。
あれがなんなのか俺にはまったくわからない。
「……あれは空中要塞グニールっ!? か、完成していたのか……」
ルカが驚きの声を上げた。
「知っているの?」
「ええ……。あれは先代皇帝の時代に設計だけされていた空中要塞です。ウルーガの壁を必要としないほど頑強に作られていて、全方位からの攻撃に対応して反撃を行えます。惑星間での移動も可能で、他星への侵略を想定して開発を提案されたのですが、平和な時代にそんなものは必要無いと先代皇帝の命で開発はされなかった強力な兵器です」
「ちょ、ちょっと待ってくれっ! なんで君がそんなことを知っているんだい?」
「……」
ペイナーの問いにルカは黙る。
俺はレプニールが彼に言った言葉から、ルカが何者かは知っている。恐らくツクナも知っていることだろう。
「……今さら隠すことでもありません。私は先代皇帝スクアルナータの子息ルオナルア。それが本当の名前です」
「ええっ!?」
と、大声を上げたのはペイナーだけ。
俺とツクナはともかく、ゼナイエも声は上げなかった。
「ゼ、ゼナイエ……。君はもしかしたら知っていたんじゃ……?」
「ああ」
一言そう呟いたゼナイエにペイナーは絶句して声を失う。
「我が彼のオーディアヌ帝国からの脱出を手助けしたからな。この件は極秘で、知っているのは我とグライドのみだ」
「ど、どうしてそんなことを……?」
「惑星ベルドバラファから脱出してきた彼の戦闘機をたまたま助けることになった。それだけだ」
「そ、それだけって……敵国の王子がこちらにいるなら、なにかしらの交渉で戦争を有利にできたんじゃないのかい?」
「彼は現皇帝のメイラッド・ローマから命を狙われていた。だから祖国を脱出したのだ。なにか交渉をすれば彼の命を帝国に差し出すことになる。そんな非道はヨトゥナの教えに反する」
「しかし命をって……どうして?」
それは俺も知らない。
聞いていいことなのかはわからず、気にしないようにしていたが……。
「それは……私があれを偽物と知っているからでしょう」
「あれって……なんのことだい?」
「オーディアヌ帝国の皇帝メイラッド・ローマに成り代わり、ホーンの滅亡を目論む愚か者のことです」
「こ、皇帝メイラッド・ローマが偽物だってっ!?」
驚きに叫んだのはやはりペイナーのみだった。
「あれは兄の偽物です。間違いありません」
「偽物って……けど、そんなことありえるのかい? 別人なんだろう?」
「はい。奴は白仮面と白アーマーで身を隠して、姿を隠しています」
「いやそれだって、中身が違ったら気付くと思うけど?」
「そうなんです。しかし奴は兄のすべてを知っているかのように、正体を偽っていいます。漫画を憎み、ホーンを殲滅しようとする醜悪な思想と残酷非道な性格がなければまるで本物のように……」
「だったらなにかあって変節したんじゃ……」
「そんなことはありえませんっ!」
悲痛な声音を上げたルカに、車内はシンと静まる。
「私はあの白仮面を被った偽物が我が兄であるメイラッド・ローマを殺した瞬間をこの目にしましたっ! 間違い無く、あれは偽物のメイラッド・ローマなんですっ!」
「……」
ルカが嘘をついているとは思わない。
事実、皇帝メイラッド・ローマは偽物なのだろう。
「けど、まったくの別人が本人になり切れるなんて考えにくい。たぶんその偽物は本物の皇帝をよく知っている人物じゃないかな? だとすれば、それは王子のルカ君もよく知っている人物かも……」
「はい。兄をよく知っている人物には心当たりがあります。その人は兄をよく知っていて、成り代わることも可能ではないかと思います」
「その人って誰なの?」
「兄が殺される前に行方不明となった私の姉テオナです。しかし姉はナイトとして戦う力などありませんでしたし、なにより兄を強く慕っておりました。あの偽物の正体が姉のテオナではずはないんです」
「……うん」
はっきりとルカが断言したため、俺は異論を挟めず肯定する。
しかしもしかしたら。
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