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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年
第84話 ツクナと映画を見る
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……それから何時間が経っただろうか。
映画は終了したようで、モニターは目の前から消えた。
「これが映画じゃ。どうじゃった?」
いつの間にか俺の膝に座っていたツクナが顔を真上に向けて問う。
「う、うん……」
どうやらこれは写真と似たようなもののようだが、写真と違うのは静止状態を記録するのではなく、動作や音も記録できるもののようだ。
そして映画とは、その動作や音で物語を作るものということはわかった。
それがわかった上で、俺がツクナに問いたいことは。
「あの黒い仮面とアーマーの人、俺の着てた仮面とアーマーと同じじゃない?」
「初めて映画……いや、映像というものを目にして聞くことがそれかの?」
ツクナはクスクスと笑う。
「まあよい。察しの通り同じじゃ。それよりも映画の内容はどうじゃった?」
「うん? ああ、おもしろかったよ」
眠気も忘れて見てしまった。
「どこがおもしろかった?」
「そうだな。あの黒いアーマーの人が……」
つらつらと感想を述べると、ツクナは嬉しそうに笑って俺の胸に頭を擦りつけてくる。
「うむうむ。そうじゃの。ハバンは映画を見る目があるの。では次にさっきの映画の前日譚になる続編を見せてやろうかの」
「ぜ、前日譚? いや、それよりもさっきの映画とこの世界が似ていてツクナがこの世界を好きなのはわかったけど、それがなんだと言うんだ? 戦争をすぐに終わらせないこととなにか関係があるような言い方だったけど」
「ああ、そういえばそんな話をしておったな」
と、ツクナは立ち上がり、今度は向かい合った状態で俺の膝へと乗っかった。
「お、おお」
こちらを見上げるツクナの頬を撫でる。
なんとも愛しい表情で、見つめていると胸の鼓動が早くなっていく。
「ツクナはこの世界が好きじゃから、この世界のやり方で目的を達成したいと考えておる」
「この世界のやり方って……ん、ふっ」
耳に息を吹きかけられて身が震える。
「ツ、ツクナ……」
「ふふふ、ハバンは大人なのに女慣れをしておらんな」
「そ、そういうわけじゃ」
「この世界のやり方とは、ツクナの科学は使わずにこの世界にあるものだけを使うということじゃ。まあ、デュロリアンだけは移動の足として使うがの」
「……そうか。けど平気かな? ちょっと不安だ」
今までの世界ではツクナの科学を使って目的を達してきた。それが無くなるなら心許ない。
「平気じゃ。ツクナは十分にズァーグを使いこなせるし、ハバンもしっかり鍛えた」
「けど、俺はツクナほどズァーグを使えない。なんか……身体から放出したズァーグの形を変えて遠くの音を聞くとかそういう使い方はできないし」
「あれをやるには優れた想像力と知識が必要じゃ。遠くの音を聞くにはズァーグの形を集音機に変えるわけじゃが、これは集音器の構造を正確に理解して想像できなければならん。鍛えてできるようになるのは難しいのじゃ」
「う、うん。そうか。確かにちょっと俺には無理そう」
そもそも集音器がわからないし、想像力にも自信が無い。
「まあ、そう不安になることもない。ハバンなら今のままで十分に強いからの」
「そう、かな?」
「うむ。ツクナが言うから間違い無いのじゃ」
「うん。なら平気か」
ツクナがこう言うのだから大丈夫だろう。
俺は安心してツクナの頬を撫でる。
「この世界でツクナの科学は使わん。しかし」
「ん?」
キッとツクナの表情が締まったのを見て俺の撫でる手は止まる。
「もしもこの世界のやり方を逸脱する者が敵として現れたら、そのときはこちらもそれなりに逸脱はさせてもらうがの」
「そ、そんなの現れるかな?」
「さての。それよりも続きの前日譚を見るのじゃ」
「あ、いや、見たいけどもう眠いよ。今度にしよう」
「うん? うん。そうじゃの。ツクナも眠い」
ふぁっとあくびをしたツクナを胸に抱いて俺は立ち上がる。
「じゃあ歯を磨いて寝るか」
「待つのじゃ」
洗面所へ歩いて行こうとした俺をツクナは止めた。
「ツクナもハバンに聞きたいことがある」
「聞きたいことって?」
なんだろうと俺は首を傾ぐ。
「うん。昼間に行った本屋での、ゼナイエが表紙の漫画雑誌を買わなかった理由じゃ。漫画雑誌をというよりも、ゼナイエを載せた表紙にハバンは惹かれていた。そうじゃな?」
「ま、まあそれは……うん」
ゼナイエの美しさに惹かれてあの書物を欲していたのは事実だが。
「なぜ買わなかった? ほしければ買ってやったぞ?」
「それは……」
胸に抱き上げているツクナの目をじっと見つめる。
「お前のほうがずっと美しくて魅力的だから」
ゼナイエを見て惹かれる必要は無い。そう感じた。
「そうじゃ。美しい女を見たければ、側にいるツクナを見ればよい。他の女を見る必要は無い」
「そうだな。その通りだ」
胸に頭を預けてきたツクナの身体をやさしく抱きしめる。
「ふふふ、今日も一緒に寝てやろう。ツクナの腹を撫でてもよいぞ」
「それは嬉しいな」
にこやかに微笑むツクナを抱いたまま、俺は洗面所へと歩き出した。
映画は終了したようで、モニターは目の前から消えた。
「これが映画じゃ。どうじゃった?」
いつの間にか俺の膝に座っていたツクナが顔を真上に向けて問う。
「う、うん……」
どうやらこれは写真と似たようなもののようだが、写真と違うのは静止状態を記録するのではなく、動作や音も記録できるもののようだ。
そして映画とは、その動作や音で物語を作るものということはわかった。
それがわかった上で、俺がツクナに問いたいことは。
「あの黒い仮面とアーマーの人、俺の着てた仮面とアーマーと同じじゃない?」
「初めて映画……いや、映像というものを目にして聞くことがそれかの?」
ツクナはクスクスと笑う。
「まあよい。察しの通り同じじゃ。それよりも映画の内容はどうじゃった?」
「うん? ああ、おもしろかったよ」
眠気も忘れて見てしまった。
「どこがおもしろかった?」
「そうだな。あの黒いアーマーの人が……」
つらつらと感想を述べると、ツクナは嬉しそうに笑って俺の胸に頭を擦りつけてくる。
「うむうむ。そうじゃの。ハバンは映画を見る目があるの。では次にさっきの映画の前日譚になる続編を見せてやろうかの」
「ぜ、前日譚? いや、それよりもさっきの映画とこの世界が似ていてツクナがこの世界を好きなのはわかったけど、それがなんだと言うんだ? 戦争をすぐに終わらせないこととなにか関係があるような言い方だったけど」
「ああ、そういえばそんな話をしておったな」
と、ツクナは立ち上がり、今度は向かい合った状態で俺の膝へと乗っかった。
「お、おお」
こちらを見上げるツクナの頬を撫でる。
なんとも愛しい表情で、見つめていると胸の鼓動が早くなっていく。
「ツクナはこの世界が好きじゃから、この世界のやり方で目的を達成したいと考えておる」
「この世界のやり方って……ん、ふっ」
耳に息を吹きかけられて身が震える。
「ツ、ツクナ……」
「ふふふ、ハバンは大人なのに女慣れをしておらんな」
「そ、そういうわけじゃ」
「この世界のやり方とは、ツクナの科学は使わずにこの世界にあるものだけを使うということじゃ。まあ、デュロリアンだけは移動の足として使うがの」
「……そうか。けど平気かな? ちょっと不安だ」
今までの世界ではツクナの科学を使って目的を達してきた。それが無くなるなら心許ない。
「平気じゃ。ツクナは十分にズァーグを使いこなせるし、ハバンもしっかり鍛えた」
「けど、俺はツクナほどズァーグを使えない。なんか……身体から放出したズァーグの形を変えて遠くの音を聞くとかそういう使い方はできないし」
「あれをやるには優れた想像力と知識が必要じゃ。遠くの音を聞くにはズァーグの形を集音機に変えるわけじゃが、これは集音器の構造を正確に理解して想像できなければならん。鍛えてできるようになるのは難しいのじゃ」
「う、うん。そうか。確かにちょっと俺には無理そう」
そもそも集音器がわからないし、想像力にも自信が無い。
「まあ、そう不安になることもない。ハバンなら今のままで十分に強いからの」
「そう、かな?」
「うむ。ツクナが言うから間違い無いのじゃ」
「うん。なら平気か」
ツクナがこう言うのだから大丈夫だろう。
俺は安心してツクナの頬を撫でる。
「この世界でツクナの科学は使わん。しかし」
「ん?」
キッとツクナの表情が締まったのを見て俺の撫でる手は止まる。
「もしもこの世界のやり方を逸脱する者が敵として現れたら、そのときはこちらもそれなりに逸脱はさせてもらうがの」
「そ、そんなの現れるかな?」
「さての。それよりも続きの前日譚を見るのじゃ」
「あ、いや、見たいけどもう眠いよ。今度にしよう」
「うん? うん。そうじゃの。ツクナも眠い」
ふぁっとあくびをしたツクナを胸に抱いて俺は立ち上がる。
「じゃあ歯を磨いて寝るか」
「待つのじゃ」
洗面所へ歩いて行こうとした俺をツクナは止めた。
「ツクナもハバンに聞きたいことがある」
「聞きたいことって?」
なんだろうと俺は首を傾ぐ。
「うん。昼間に行った本屋での、ゼナイエが表紙の漫画雑誌を買わなかった理由じゃ。漫画雑誌をというよりも、ゼナイエを載せた表紙にハバンは惹かれていた。そうじゃな?」
「ま、まあそれは……うん」
ゼナイエの美しさに惹かれてあの書物を欲していたのは事実だが。
「なぜ買わなかった? ほしければ買ってやったぞ?」
「それは……」
胸に抱き上げているツクナの目をじっと見つめる。
「お前のほうがずっと美しくて魅力的だから」
ゼナイエを見て惹かれる必要は無い。そう感じた。
「そうじゃ。美しい女を見たければ、側にいるツクナを見ればよい。他の女を見る必要は無い」
「そうだな。その通りだ」
胸に頭を預けてきたツクナの身体をやさしく抱きしめる。
「ふふふ、今日も一緒に寝てやろう。ツクナの腹を撫でてもよいぞ」
「それは嬉しいな」
にこやかに微笑むツクナを抱いたまま、俺は洗面所へと歩き出した。
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