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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年
第72話 オーディアヌ帝国の目的
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「……先ほど、ハバンさんは帝国に漫画が無い理由をお聞きしましたよね?」
「ああ」
「オーディアヌ帝国の皇帝メイラッド・ローマは、ホーンの殲滅の目論んでいます。ホーンがいなくなれば、漫画もなくなります」
「どういうことだ?」
「漫画はすべてホーンが描いています。漫画だけではなく、絵画や小説など、創作的なものは皆ホーンの作品なのです」
「ホーンが? それ以外の種族の人は描かないのか?」
「はい。ホーンはズァーグで戦うことはできませんが、額の角にズァーグを集中させて想像力を高めることができるのです。ホーン以外では、彼らの想像力には敵わないでしょう」
「なるほど」
ホーンに額がついている理由に合点がいく。そして帝国に漫画が無い理由もわかった。
「帝国はすべてのホーンを殺すつもりです。そのためにホーンを擁する国々は帝国に対抗するため、連合を組みました」
「その戦いの先頭にヨトゥナが立っているというわけだな」
「そうです」
強い意志の篭った目を向けられ、俺はそれに答えるようにルカの目を見返す。
これはそういう戦いだったのか。
ひとつの民族を滅ぼそうとするなど、まったく許し難い蛮行だ。
「しかしなんで帝国はホーンを滅ぼそうとしているんだろう?」
「それはオーディアヌ帝国の国教が原因です」
「国教? ああ……」
国を挙げて信仰している宗教のことか。
「オーディアヌ帝国ではヴァルキラスという神を信仰しています。その神のお告げにより、ホーンを滅ぼすことを決めたのです」
「神のお告げ?」
そんなもので戦争を始めるなど馬鹿げている。
以前の自分ならばそう断じていただろうが、ツクナの話を聞いて神の存在に確信を持った今となってはそうとも言えない。
「神がひとつの民族を滅ぼせなんて告げを出すのか? 信じられないな。だって神が生物を作ったんだろう? 自分で作ったものを滅ぼせなんて言うとは思えない」
「それはそうですが、事実です。メイラッド・ローマはヴァルキラスの告げに従ってホーンを滅ぼすつもりでいるのです」
「そうなのか」
帝国がというよりも、そのメイラッド・ローマという人物に問題はありそうだ。
「しかしルカ君は帝国の事情にくわしいな。敵をよく知っているのは良いことだ」
「あ、いや……はい。ありがとうございます」
なぜか気まずそうな顔をするルカの肩を俺はポンと叩く。
「そろそろ店を出るかの?」
と、ツクナに言われてそうしようかと思ったとき、
「お、ちょっと待って」
1冊の書物が目に入ってそちらへと行く。
手に取ったその書物の表紙を俺はじっと見つめた。
「なんじゃ? 気になる漫画でもあったのかの?」
「ん? いや、これもマンガなのかなって」
この本の表紙は絵ではなく写真というやつだ。これもマンガなのだろうか?
「ああ、それは青年向けの漫画雑誌じゃな。そういうのは水着の女を表紙に使って目を引かせるんじゃが……どうやらそれは少し毛色の違うもののようじゃな」
「うん」
表紙の写真はミズギの女とやらではなく、腕を組んで立っているゼナイエであった。
捲った書物の中身にも彼女の写真が何ページが載っている。
「戦争中ですからね。旗頭であるヨトゥナの長をロキシニアス連合の国々に住まう人々の目に触れさせて、戦意を向上させるのが目的のようです」
「ふむ。プロパガンダじゃな」
「プロパガンダ……」
写真の横にはゼナイエの言葉と思われる戦争への意気込みが書かれていた。
「うーん、やっぱり綺麗な子だなー。人気もありそう」
「ありますよ。5歳でヨトゥナのナイトとなり、多くの戦場で前線に立って帝国兵を退けてきた方ですから。連合の英雄ですよ」
「英雄か」
それはともかくやっぱり綺麗な子だなーっと俺はゼナイエの写真をまじまじと見つめる。
「ハバン」
「うん?」
呼ばれて見下ろすと、ツクナが無表情で俺を見上げていた。
「それを買ってほしいのか?」
そう聞かれて俺は迷うことなく手に持っていた書物を元の場所に戻す。
「いや、いい」
「それでよい」
フッと笑うツクナの手を取り、俺はルカと共に店を出た。
「ツクナ」
ルカをやや先へと歩かせた俺は小声でツクナに声をかける。
「ヴァルキラスって、ツクナの言っていた……」
「いや違う」
ツクナは小さく首を横に振る。
「それは界神じゃ。ツクナの言う神とは違う」
「界神……って?」
「すべての世界を作り出した神とは別物で、その神に作り出されたこの世界だけの神じゃ。言うなれば経営者に雇われている店長みたいなもんじゃな」
「や、雇われ店長……か」
途端にヴァルキラスという神がしょぼく思えてきた。
「ああ」
「オーディアヌ帝国の皇帝メイラッド・ローマは、ホーンの殲滅の目論んでいます。ホーンがいなくなれば、漫画もなくなります」
「どういうことだ?」
「漫画はすべてホーンが描いています。漫画だけではなく、絵画や小説など、創作的なものは皆ホーンの作品なのです」
「ホーンが? それ以外の種族の人は描かないのか?」
「はい。ホーンはズァーグで戦うことはできませんが、額の角にズァーグを集中させて想像力を高めることができるのです。ホーン以外では、彼らの想像力には敵わないでしょう」
「なるほど」
ホーンに額がついている理由に合点がいく。そして帝国に漫画が無い理由もわかった。
「帝国はすべてのホーンを殺すつもりです。そのためにホーンを擁する国々は帝国に対抗するため、連合を組みました」
「その戦いの先頭にヨトゥナが立っているというわけだな」
「そうです」
強い意志の篭った目を向けられ、俺はそれに答えるようにルカの目を見返す。
これはそういう戦いだったのか。
ひとつの民族を滅ぼそうとするなど、まったく許し難い蛮行だ。
「しかしなんで帝国はホーンを滅ぼそうとしているんだろう?」
「それはオーディアヌ帝国の国教が原因です」
「国教? ああ……」
国を挙げて信仰している宗教のことか。
「オーディアヌ帝国ではヴァルキラスという神を信仰しています。その神のお告げにより、ホーンを滅ぼすことを決めたのです」
「神のお告げ?」
そんなもので戦争を始めるなど馬鹿げている。
以前の自分ならばそう断じていただろうが、ツクナの話を聞いて神の存在に確信を持った今となってはそうとも言えない。
「神がひとつの民族を滅ぼせなんて告げを出すのか? 信じられないな。だって神が生物を作ったんだろう? 自分で作ったものを滅ぼせなんて言うとは思えない」
「それはそうですが、事実です。メイラッド・ローマはヴァルキラスの告げに従ってホーンを滅ぼすつもりでいるのです」
「そうなのか」
帝国がというよりも、そのメイラッド・ローマという人物に問題はありそうだ。
「しかしルカ君は帝国の事情にくわしいな。敵をよく知っているのは良いことだ」
「あ、いや……はい。ありがとうございます」
なぜか気まずそうな顔をするルカの肩を俺はポンと叩く。
「そろそろ店を出るかの?」
と、ツクナに言われてそうしようかと思ったとき、
「お、ちょっと待って」
1冊の書物が目に入ってそちらへと行く。
手に取ったその書物の表紙を俺はじっと見つめた。
「なんじゃ? 気になる漫画でもあったのかの?」
「ん? いや、これもマンガなのかなって」
この本の表紙は絵ではなく写真というやつだ。これもマンガなのだろうか?
「ああ、それは青年向けの漫画雑誌じゃな。そういうのは水着の女を表紙に使って目を引かせるんじゃが……どうやらそれは少し毛色の違うもののようじゃな」
「うん」
表紙の写真はミズギの女とやらではなく、腕を組んで立っているゼナイエであった。
捲った書物の中身にも彼女の写真が何ページが載っている。
「戦争中ですからね。旗頭であるヨトゥナの長をロキシニアス連合の国々に住まう人々の目に触れさせて、戦意を向上させるのが目的のようです」
「ふむ。プロパガンダじゃな」
「プロパガンダ……」
写真の横にはゼナイエの言葉と思われる戦争への意気込みが書かれていた。
「うーん、やっぱり綺麗な子だなー。人気もありそう」
「ありますよ。5歳でヨトゥナのナイトとなり、多くの戦場で前線に立って帝国兵を退けてきた方ですから。連合の英雄ですよ」
「英雄か」
それはともかくやっぱり綺麗な子だなーっと俺はゼナイエの写真をまじまじと見つめる。
「ハバン」
「うん?」
呼ばれて見下ろすと、ツクナが無表情で俺を見上げていた。
「それを買ってほしいのか?」
そう聞かれて俺は迷うことなく手に持っていた書物を元の場所に戻す。
「いや、いい」
「それでよい」
フッと笑うツクナの手を取り、俺はルカと共に店を出た。
「ツクナ」
ルカをやや先へと歩かせた俺は小声でツクナに声をかける。
「ヴァルキラスって、ツクナの言っていた……」
「いや違う」
ツクナは小さく首を横に振る。
「それは界神じゃ。ツクナの言う神とは違う」
「界神……って?」
「すべての世界を作り出した神とは別物で、その神に作り出されたこの世界だけの神じゃ。言うなれば経営者に雇われている店長みたいなもんじゃな」
「や、雇われ店長……か」
途端にヴァルキラスという神がしょぼく思えてきた。
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