65 / 119
第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年
第65話 ヨトゥナの予言
しおりを挟む
――ハバンたちが去った円の間。
ゼナイエはイスから立ち上がり、大きな窓から外を眺めていた。
「ゼナイエ様、私はやはり納得できません。いかにあの者が強い力を持っているとはいえ、素性の知れぬ者にサミオンのクラスを与えるなど……」
「……」
グライドの言い分はその通りだ。素性の知れない者にサミオンのクラスを与えるなど異例中の異例。ゼナイエもそれは十分に理解している。それでもツクナというあの女にサミオンのクラスを与えたのは、ある可能性を感じたからであった。
「グライド、我はあのツクナという女が予言の者ではないかと考えている」
「よ、予言の? あの者がですか?」
「ああ」
ヨトゥナには古くから伝わる予言がある。
『幼き女、思考深き者により闇のナイトは払われ、ヨトゥナと宇宙に平穏をもたらす』
ヨトゥナの初代最高師範が残した予言だ。
初代最高師範、ドゥアン・セットカランはズァーグによって未来視が可能であったという。
ドゥアンはいつか遠い未来に宇宙は未曾有の戦乱に見舞われ、それを救うべきヨトゥナには崩壊の危機が訪れると予言した。そしてそれを救う者が現れるとも予言したのだ。
「オーディアヌ帝国の侵略によって宇宙は未曾有の戦乱に見舞われ、それを救うべきヨトゥナは今、崩壊の危機を迎えている。そこに現れたのがあの女だ。予言が真実ならば、我はあのツクナという童が思考深き者なのではないかと思う」
「しかしドゥアン・セットカラン様の未来視はあまりはっきりしたものではなかったと言い伝えられております。仮に予言が当たっていたとしても、幼き女性で思考の深い者であれば、それはゼナイエ様のことではないでしょうか?」
「……我もそうではないかと思ったことはある」
だから最高師範という立場を与えられた。
思考深き幼き女。
予言のその者と考らえれ、ゼナイエは最高師範となった。
しかしそのことによって訪れたのは平穏ではなく、むしろを混乱であったのだ。
「我の存在によってヨトゥナは危機に陥っている。それを我にはどうすることもできない」
「……あの者ならばヨトゥナの危機を救い、オーディアヌ帝国の侵略からロキシニアス連合に所属する国々を救ってくれるというのですか?」
「わからん。わからんが、我はあの者に期待している。しばらくは様子を見るとしよう」
「ゼナイエ様がそうご決断なさったならば、私はもうなにも言いません。しかしあちら側の……ペイナー・サーミットがなんと言ってくるか……」
「ペイナーがなにを言ってこようと、最高師範である我の決定を覆すことなどできん。放っておけばよいことだ」
「ですが、この件でペイナーがゼナイエ様を糾弾し、あちら側につくナイトが増えることにでもなれば、厄介なことになります」
「……」
その可能性があることはゼナイエも理解している。しかしそのリスクを負ってでも、ツクナをサミオンとすることに意味があると判断した。
予言を全面的に信じているわけでもない。半分はゼナイエの勘だ。あの幼き女とその弟子がヨトゥナとこの宇宙を救う手助けをしてくれると、そんな気がした。
「今回の件が無かったとしても、このままではいずれヨトゥナは分裂する。そうなれば帝国は攻勢を強めてロキシニアス連合はこの戦争に敗北するだろう」
「そ、それは……」
黙り込むグライドを背に、ゼナイエは遠くを見つめて目を細める。
「まずはどんな活躍を見せてくれるのか。期待させてもらおうじゃないか」
「……」
背後で表情を硬くするグライドを尻目に、ゼナイエはわずかに微笑むのだった
ゼナイエはイスから立ち上がり、大きな窓から外を眺めていた。
「ゼナイエ様、私はやはり納得できません。いかにあの者が強い力を持っているとはいえ、素性の知れぬ者にサミオンのクラスを与えるなど……」
「……」
グライドの言い分はその通りだ。素性の知れない者にサミオンのクラスを与えるなど異例中の異例。ゼナイエもそれは十分に理解している。それでもツクナというあの女にサミオンのクラスを与えたのは、ある可能性を感じたからであった。
「グライド、我はあのツクナという女が予言の者ではないかと考えている」
「よ、予言の? あの者がですか?」
「ああ」
ヨトゥナには古くから伝わる予言がある。
『幼き女、思考深き者により闇のナイトは払われ、ヨトゥナと宇宙に平穏をもたらす』
ヨトゥナの初代最高師範が残した予言だ。
初代最高師範、ドゥアン・セットカランはズァーグによって未来視が可能であったという。
ドゥアンはいつか遠い未来に宇宙は未曾有の戦乱に見舞われ、それを救うべきヨトゥナには崩壊の危機が訪れると予言した。そしてそれを救う者が現れるとも予言したのだ。
「オーディアヌ帝国の侵略によって宇宙は未曾有の戦乱に見舞われ、それを救うべきヨトゥナは今、崩壊の危機を迎えている。そこに現れたのがあの女だ。予言が真実ならば、我はあのツクナという童が思考深き者なのではないかと思う」
「しかしドゥアン・セットカラン様の未来視はあまりはっきりしたものではなかったと言い伝えられております。仮に予言が当たっていたとしても、幼き女性で思考の深い者であれば、それはゼナイエ様のことではないでしょうか?」
「……我もそうではないかと思ったことはある」
だから最高師範という立場を与えられた。
思考深き幼き女。
予言のその者と考らえれ、ゼナイエは最高師範となった。
しかしそのことによって訪れたのは平穏ではなく、むしろを混乱であったのだ。
「我の存在によってヨトゥナは危機に陥っている。それを我にはどうすることもできない」
「……あの者ならばヨトゥナの危機を救い、オーディアヌ帝国の侵略からロキシニアス連合に所属する国々を救ってくれるというのですか?」
「わからん。わからんが、我はあの者に期待している。しばらくは様子を見るとしよう」
「ゼナイエ様がそうご決断なさったならば、私はもうなにも言いません。しかしあちら側の……ペイナー・サーミットがなんと言ってくるか……」
「ペイナーがなにを言ってこようと、最高師範である我の決定を覆すことなどできん。放っておけばよいことだ」
「ですが、この件でペイナーがゼナイエ様を糾弾し、あちら側につくナイトが増えることにでもなれば、厄介なことになります」
「……」
その可能性があることはゼナイエも理解している。しかしそのリスクを負ってでも、ツクナをサミオンとすることに意味があると判断した。
予言を全面的に信じているわけでもない。半分はゼナイエの勘だ。あの幼き女とその弟子がヨトゥナとこの宇宙を救う手助けをしてくれると、そんな気がした。
「今回の件が無かったとしても、このままではいずれヨトゥナは分裂する。そうなれば帝国は攻勢を強めてロキシニアス連合はこの戦争に敗北するだろう」
「そ、それは……」
黙り込むグライドを背に、ゼナイエは遠くを見つめて目を細める。
「まずはどんな活躍を見せてくれるのか。期待させてもらおうじゃないか」
「……」
背後で表情を硬くするグライドを尻目に、ゼナイエはわずかに微笑むのだった
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
公爵家次男の巻き込まれ人生
零
ファンタジー
ヴェルダン王国でも筆頭貴族家に生まれたシアリィルドは、次男で家を継がなくてよいということから、王国軍に所属して何事もない普通の毎日を過ごしていた。
そんな彼が、平穏な日々を奪われて、勇者たちの暴走や跡継ぎ争いに巻き込まれたりする(?)お話です。
※見切り発進です。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界
Greis
ファンタジー
【注意!!】
途中からがっつりファンタジーバトルだらけ、主人公最強描写がとても多くなります。
内容が肌に合わない方、面白くないなと思い始めた方はブラウザバック推奨です。
※主人公の転生先は、元はシナリオ外の存在、いわゆるモブと分類される人物です。
ベイルトン辺境伯家の三男坊として生まれたのが、ウォルター・ベイルトン。つまりは、転生した俺だ。
生まれ変わった先の世界は、オタクであった俺には大興奮の剣と魔法のファンタジー。
色々とハンデを背負いつつも、早々に二度目の死を迎えないために必死に強くなって、何とか生きてこられた。
そして、十五歳になった時に騎士学院に入学し、二度目の灰色の青春を謳歌していた。
騎士学院に馴染み、十七歳を迎えた二年目の春。
魔法学院との合同訓練の場で二人の転生者の少女と出会った事で、この世界がただの剣と魔法のファンタジーではない事を、徐々に理解していくのだった。
※小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。
小説家になろうに投稿しているものに関しては、改稿されたものになりますので、予めご了承ください。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる