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第4の異世界ーはるか遠くの銀河で戦う少年
第52話 宇宙を飛ぶ
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『――まもなく次の異世界に到着します。到着まで30分』
デュロリアンからの音声が研究所内に流れ、俺はロリポップを咥えてソファーから立ち上がる。
「さて行くか。ツクナ?」
ツクナは部屋のパソコンに向かっており、まだ動こうとしない。
「待つのじゃ。よし。ハバン、少し左へ動け」
「うん? うおっ!?」
左へ移動すると、さっきまで立っていた場所の真上からドサドサとなにかが落ちてくる。
「な、なんだこれ?」
真っ黒で、なんか全身を覆う鎧のようだ。
「それはフルプレートのアーマーじゃ。ハバンは目立つからの。それを着るとよい」
「目立つかなぁ?」
王子だった頃ならわかる。しかし今は違うし、しかも行くのは自分を知っている人間なんてひとりもいない異世界だ。目立つとかは無いんじゃないかと俺は疑問に思う。
「これ重くて暑いんだよなぁ」
「安心せい。それは次に行く異世界に合わせたアーマーじゃ。軽いしそれほど暑くもない」
「そうなの?」
言われて着てみる。と
「お」
ものすごく軽いことに気付く。
通気性が良いのか、それほど暑苦しい感じもしない。
「いいなこれ」
部屋にある大きな鏡に全身を映しながら俺は率直な着心地を口にする。
マントもついていて中々に格好良い。
被っている兜は顔のすべてを覆っているが、不思議と視界は素顔の状態と同じで広かった。
「ん? なんだこれは?」
アーマーの太腿部分にボタンを見つけて押すと、その部分が張り出して開く。
「そこはこれをしまっておく場所じゃ。ほれ」
「おっと」
投げられた白い棒を受け取る。
「これは……レヴァンソードか」
シミュレーター内で使っていたのと同じものだ。
「うむ。では行くかの」
「ああ」
俺は受け取ったレヴァンソードを太腿部分の収納へと差し込み、デュロリアンへと向かった。
……
『間も無く到着します』
「お、もう到着か」
出てきたハンドルを掴む。
「前みたいに出た直後に誰かはね飛ばさなければいいんだけど」
前の異世界では異空間道を抜けた直後にデュロリアンでリュアンをはねてしまったので、今回も同じようなことになってしまうんじゃないかとちょっと不安だった。
「それはないから安心せい」
「そうなのか?」
なら心配しなくていいかと、アクセルを踏み込む。
「お、出るぞ」
異空間道を抜ける。と、
「うおっ!?」
真っ暗だ、
また夜か? ……いや、
「な、なんだここはっ?」
視界に映るすべてが夜空だ。
地面すら無く、目に映るのは輝く星々と夜の闇だけだった。
「空を飛んでいるのか?」
そうとしか考えられない光景だったが。
「いや、ここは宇宙空間じゃ」
「ウ、ウチュウクウカン? なんだそれは?」
「ハバンの生まれ育った文明レベルでそれを説明するのはなかなか難しいのう。まあ、口で説明するより、実際に見たほうが理解も早いじゃろう」
「そ、そうか? まあいい。それでその、ウチュウクウカンでデュロリアンは移動できるのか?」
「当然じゃ。アクセルを踏めば進み、ハンドルをきれば左右に向く。ハンドルを上と下に動かせば、上下を向かせることもできる。簡単じゃろ?」
「あ、ああ」
まあとりあえず移動に問題は無さそうではある。
「どこへ向かえばいいんだ?」
「あそこじゃ」
ツクナの指差す方向にはなにか丸い物体が浮いていた。
「あの星に向かうのじゃ」
「星? あれが星なのか? 星って遠くで光ってるものじゃないの?」
「それは恒星じゃ。あれは惑星じゃから光は放たん」
「?」
「いや、そう言ってもわからんな。ともかく行けばよい」
「うん」
ハンドルをきってアクセルを踏み込み、謎の球体へとデュロリアンを向かわせる。
「おおっ?」
サイドミラーにはデュロリアンの後部から青い炎のようなものが噴射しているのが見えた。
「な、なんだ? なんか後ろから出てるぞ?」
「宇宙用のエンジンが噴射しているだけじゃ。まあ、宇宙船の推進力としてはだいぶ古い形じゃが、こっちのほうが格好良いからの」
「そうなの?」
古いと言われてもまったくよくわからない。
「まあそれはともかく、この世界ではなにをすればいいんだ?」
「やることは簡単じゃ。ある男の不幸な人生を修正するため、ここベルファランド銀河系にあるオーディアヌ帝国の皇帝を倒せばよい」「
「それ簡単か?」
帝国とは大国のことだろう。
そこの皇帝を倒すことが簡単とは思えなかった。
デュロリアンからの音声が研究所内に流れ、俺はロリポップを咥えてソファーから立ち上がる。
「さて行くか。ツクナ?」
ツクナは部屋のパソコンに向かっており、まだ動こうとしない。
「待つのじゃ。よし。ハバン、少し左へ動け」
「うん? うおっ!?」
左へ移動すると、さっきまで立っていた場所の真上からドサドサとなにかが落ちてくる。
「な、なんだこれ?」
真っ黒で、なんか全身を覆う鎧のようだ。
「それはフルプレートのアーマーじゃ。ハバンは目立つからの。それを着るとよい」
「目立つかなぁ?」
王子だった頃ならわかる。しかし今は違うし、しかも行くのは自分を知っている人間なんてひとりもいない異世界だ。目立つとかは無いんじゃないかと俺は疑問に思う。
「これ重くて暑いんだよなぁ」
「安心せい。それは次に行く異世界に合わせたアーマーじゃ。軽いしそれほど暑くもない」
「そうなの?」
言われて着てみる。と
「お」
ものすごく軽いことに気付く。
通気性が良いのか、それほど暑苦しい感じもしない。
「いいなこれ」
部屋にある大きな鏡に全身を映しながら俺は率直な着心地を口にする。
マントもついていて中々に格好良い。
被っている兜は顔のすべてを覆っているが、不思議と視界は素顔の状態と同じで広かった。
「ん? なんだこれは?」
アーマーの太腿部分にボタンを見つけて押すと、その部分が張り出して開く。
「そこはこれをしまっておく場所じゃ。ほれ」
「おっと」
投げられた白い棒を受け取る。
「これは……レヴァンソードか」
シミュレーター内で使っていたのと同じものだ。
「うむ。では行くかの」
「ああ」
俺は受け取ったレヴァンソードを太腿部分の収納へと差し込み、デュロリアンへと向かった。
……
『間も無く到着します』
「お、もう到着か」
出てきたハンドルを掴む。
「前みたいに出た直後に誰かはね飛ばさなければいいんだけど」
前の異世界では異空間道を抜けた直後にデュロリアンでリュアンをはねてしまったので、今回も同じようなことになってしまうんじゃないかとちょっと不安だった。
「それはないから安心せい」
「そうなのか?」
なら心配しなくていいかと、アクセルを踏み込む。
「お、出るぞ」
異空間道を抜ける。と、
「うおっ!?」
真っ暗だ、
また夜か? ……いや、
「な、なんだここはっ?」
視界に映るすべてが夜空だ。
地面すら無く、目に映るのは輝く星々と夜の闇だけだった。
「空を飛んでいるのか?」
そうとしか考えられない光景だったが。
「いや、ここは宇宙空間じゃ」
「ウ、ウチュウクウカン? なんだそれは?」
「ハバンの生まれ育った文明レベルでそれを説明するのはなかなか難しいのう。まあ、口で説明するより、実際に見たほうが理解も早いじゃろう」
「そ、そうか? まあいい。それでその、ウチュウクウカンでデュロリアンは移動できるのか?」
「当然じゃ。アクセルを踏めば進み、ハンドルをきれば左右に向く。ハンドルを上と下に動かせば、上下を向かせることもできる。簡単じゃろ?」
「あ、ああ」
まあとりあえず移動に問題は無さそうではある。
「どこへ向かえばいいんだ?」
「あそこじゃ」
ツクナの指差す方向にはなにか丸い物体が浮いていた。
「あの星に向かうのじゃ」
「星? あれが星なのか? 星って遠くで光ってるものじゃないの?」
「それは恒星じゃ。あれは惑星じゃから光は放たん」
「?」
「いや、そう言ってもわからんな。ともかく行けばよい」
「うん」
ハンドルをきってアクセルを踏み込み、謎の球体へとデュロリアンを向かわせる。
「おおっ?」
サイドミラーにはデュロリアンの後部から青い炎のようなものが噴射しているのが見えた。
「な、なんだ? なんか後ろから出てるぞ?」
「宇宙用のエンジンが噴射しているだけじゃ。まあ、宇宙船の推進力としてはだいぶ古い形じゃが、こっちのほうが格好良いからの」
「そうなの?」
古いと言われてもまったくよくわからない。
「まあそれはともかく、この世界ではなにをすればいいんだ?」
「やることは簡単じゃ。ある男の不幸な人生を修正するため、ここベルファランド銀河系にあるオーディアヌ帝国の皇帝を倒せばよい」「
「それ簡単か?」
帝国とは大国のことだろう。
そこの皇帝を倒すことが簡単とは思えなかった。
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