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第3の異世界ー死にたい魔王
第49話 ツクナの温もり
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「ここに触れたいんじゃろう?」
「い、いや俺はその……」
「遠慮をするな。今日の褒美じゃ。存分に撫でるとよい」
「あ……」
引かれた手がツクナの素肌に触れる。
温かい。
そして柔らかく、なめらかな肌触りが心地良い。
「ん……はあ」
ゆっくり撫でまわしていると、やがてツクナが熱っぽい吐息を吐く。
「ツクナ……」
不思議だ。こうしていると胸が熱くなって、気持ちが昂ってくる。
気持ち良い。ずっと触れていたい。
けれどどうしてだろう? ソシアやリュアンなど、他の女に触れたいとは思わないのに、ツクナには触れたいと思う。どうしてだろう?
そんなことを考えつつ、腹を撫でる手が少しずつ上へと滑っていく。
「あ……」
と、ツクナの小さな手がその手を阻む。
「そっちはまだダメじゃ」
「ご、ごめん」
無意識に手が胸のほうへと向かっていた。
そうするつもりはなかったのだが。
「ハバンは意外とスケベなんじゃな」
「い、いや、触るつもりじゃ……」
「まあ惚れた女の胸に触れたいと思うのは当然じゃ。しかしそうしたいならば、もっと自分を磨いて精進せねばいかんぞ」
小さな指で俺の手を撫でながらツクナはそう言う。
「ツクナが認める立派な男になったら、もっと他の大事なところも触らせてやるからの」
「他の大事なところ?」
「言わんでもわかるじゃろ。女の一番大事なところ……」
艶やかな視線で見つめられて、俺の胸はふたたびドキリとしてしまう。
「も、もう寝ようか。うん。寝よう」
「そうじゃな」
目を閉じたツクナの綺麗な顔を眺めながら、俺も眠りへと落ちた。
……
……夢を見た。
幼い自分が、母の胸に抱かれて眠っている夢だ。
どうして今さらこんな夢を?
いい歳をして、母に甘えている夢を見るなどみっともない。しかし心が安らぐ。ずっとこうしていたい心地だ。
「母上……」
やさしかった母の温もりを感じて、俺はぐっすりと眠る。
これは夢だ。
なのに確かな温かさを感じることに、どうしてだろうと俺は不思議に思う
不意に頭を撫でられる。大人にしては小さな手に。
「……ん?」
なにか妙な感じがしてゆっくりと目を開く。
目覚めたはず。しかしまだ感じる温もりがあり、頭も撫でられていた。
「母上……?」
「そんなわけないじゃろう」
「えっ? あ、あれ?」
幼い声を聞いて一気に覚醒する。そして自分がツクナの身体に抱きついて頬を胸に押し付けていることに気付いた。
「ふふっ、母上か。なかなかかわいいことを言うではないか」
と、俺の頭を撫でながらツクナは笑う。
「ご、ごめん」
まさか寝惚けてこんなことになっているとは。
慌てて離れようとする俺だが、ツクナの手は頭を離さない。
「構わん。男をこうして甘えさせるのも、良い女の甲斐性というものじゃ」
「うん……。なら、もう少しだけこうしていてもいいか?」
「うむ。まだツクナも横になっていたいからの。もう少しだけ、こうして頭を撫でていてやろう」
「ありがとう」
ほんのりと膨らみを感じるツクナの胸に頬を乗せたまま、俺はふたたび目を瞑る。
安らぐ。ずっとこうしていられたら。
そんなことを願いながら、俺の意識は二度目の眠りへと落ちていくのだった。
「い、いや俺はその……」
「遠慮をするな。今日の褒美じゃ。存分に撫でるとよい」
「あ……」
引かれた手がツクナの素肌に触れる。
温かい。
そして柔らかく、なめらかな肌触りが心地良い。
「ん……はあ」
ゆっくり撫でまわしていると、やがてツクナが熱っぽい吐息を吐く。
「ツクナ……」
不思議だ。こうしていると胸が熱くなって、気持ちが昂ってくる。
気持ち良い。ずっと触れていたい。
けれどどうしてだろう? ソシアやリュアンなど、他の女に触れたいとは思わないのに、ツクナには触れたいと思う。どうしてだろう?
そんなことを考えつつ、腹を撫でる手が少しずつ上へと滑っていく。
「あ……」
と、ツクナの小さな手がその手を阻む。
「そっちはまだダメじゃ」
「ご、ごめん」
無意識に手が胸のほうへと向かっていた。
そうするつもりはなかったのだが。
「ハバンは意外とスケベなんじゃな」
「い、いや、触るつもりじゃ……」
「まあ惚れた女の胸に触れたいと思うのは当然じゃ。しかしそうしたいならば、もっと自分を磨いて精進せねばいかんぞ」
小さな指で俺の手を撫でながらツクナはそう言う。
「ツクナが認める立派な男になったら、もっと他の大事なところも触らせてやるからの」
「他の大事なところ?」
「言わんでもわかるじゃろ。女の一番大事なところ……」
艶やかな視線で見つめられて、俺の胸はふたたびドキリとしてしまう。
「も、もう寝ようか。うん。寝よう」
「そうじゃな」
目を閉じたツクナの綺麗な顔を眺めながら、俺も眠りへと落ちた。
……
……夢を見た。
幼い自分が、母の胸に抱かれて眠っている夢だ。
どうして今さらこんな夢を?
いい歳をして、母に甘えている夢を見るなどみっともない。しかし心が安らぐ。ずっとこうしていたい心地だ。
「母上……」
やさしかった母の温もりを感じて、俺はぐっすりと眠る。
これは夢だ。
なのに確かな温かさを感じることに、どうしてだろうと俺は不思議に思う
不意に頭を撫でられる。大人にしては小さな手に。
「……ん?」
なにか妙な感じがしてゆっくりと目を開く。
目覚めたはず。しかしまだ感じる温もりがあり、頭も撫でられていた。
「母上……?」
「そんなわけないじゃろう」
「えっ? あ、あれ?」
幼い声を聞いて一気に覚醒する。そして自分がツクナの身体に抱きついて頬を胸に押し付けていることに気付いた。
「ふふっ、母上か。なかなかかわいいことを言うではないか」
と、俺の頭を撫でながらツクナは笑う。
「ご、ごめん」
まさか寝惚けてこんなことになっているとは。
慌てて離れようとする俺だが、ツクナの手は頭を離さない。
「構わん。男をこうして甘えさせるのも、良い女の甲斐性というものじゃ」
「うん……。なら、もう少しだけこうしていてもいいか?」
「うむ。まだツクナも横になっていたいからの。もう少しだけ、こうして頭を撫でていてやろう」
「ありがとう」
ほんのりと膨らみを感じるツクナの胸に頬を乗せたまま、俺はふたたび目を瞑る。
安らぐ。ずっとこうしていられたら。
そんなことを願いながら、俺の意識は二度目の眠りへと落ちていくのだった。
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