42 / 119
第3の異世界ー死にたい魔王
第42話 城の最深部へ
しおりを挟む
「ふむ、どうやら崖下には水が溜まっていたようじゃな」
「あ、だからずぶ濡れに……」
敗者は自害と言いつつ、死ぬつもりなんてなかったようだ。
ツクナはこれを知っていたのだろう。デムーロニーも健在だった。
「う……はあ、はあ……」
「大丈夫か?」
苦しそうに呼吸をするデムーロニーがゆっくりと身体を起こす。
「こ、ここは……? 一体どうなって……」
「その答えはあそこだ」
蹲って地面に手をつくセグマルドと、その側に倒れ伏す4人の男を指差す。
「か、勝ったんだなっ! さすがハバン君だっ!」
「いや、それほどのことはしていないんだけどな」
顔に装着している道具をはずしてツクナに渡す。
「なんなんだこれ?」
「眼鏡じゃ。かけるとかしこそうに見える」
「ふーん」
不思議な道具だ。
「でも、そんなのなくたって、ハバンさんが勝つってわたしはわかってましたよっ。ハバンさんのほうがずっとイケメン度は高いですもんねっ」
「そ、そんなことはないと思うけど」
「いや、勝ってたじゃろうな」
受け取ったメガネとやらを異空間に放り込みながらツクナは言う。
「ハバンはツクナが育てている男じゃ。他の男に劣るなどありえん」
「じゃあどうして道具を渡したり、いろいろ助けてあげたの?」
「ツクナの男になり得るならば、完璧でなくてはならん。半端な勝ち方ではダメなんじゃ」
「ふーん。ハバンさんって、ツクナちゃんの恋人になるの?」
「えっ? いやその……」
言葉に詰まって俺は口篭る。
「なーんて冗談ですよ。ハバンさんは小さい子にもモテるんですね」
「う、うん……」
「ツクナがハバンを好きなのではない。ハバンがツクナを好きなのじゃ」
「はいはい。大人びてるみたいで、意外にかわいらしいとこありますね、ツクナちゃん」
「ははは……」
それはまあともかく、勝ててよかった。これで先に進める。
倒れている4人と蹲るセグマルドのわきを通って俺たちは先へ進む。
この先にハイパーサタンと呼ばれる女がいる。一体どんな奴なのか? 自分たちで勝てるだろうか? ツクナが一緒なので大丈夫とは思うも、少し不安であった。
「ハバン、これを腕にはめておくのじゃ」
「うん? 腕輪?」
綺麗な装飾が施された銀色の腕輪を受け取り、それを右腕にはめる。
「なにこれ?」
「そのときになればわかる」
「そのとき……?」
って、どのときだろう? まあいいか。
「あ、それ、かわいいー。わたしにもちょーだいっ」
「ツクナとハバンの分しかない」
「えーっ! 残念……」
うな垂れるリュアンを連れてさらに先へ進むと、やがて大きな扉の前に出る。
「ここにハイパーサタンがいるの?」
「は、はい。ここが城の最深部で、魔王のいる場所です」
仰々しく、おどろおどろしい扉だ。いかにも悪い奴が奥にいそうな感じがした。
「なあツクナ、俺たちでハイパーサタンに勝てるかな?」
「愚問じゃ。勝てないのならここには来ない」
「そ、そうだな」
ツクナがこう言うなら大丈夫だ。
意を決して、俺は扉を押して開く。
「む……」
扉から奥まで道が続いている。その道の両わきには大量の水が溜まっており、道はさながら橋のようであった。
「あれ、か?」
橋の先にある円形の地面に置かれている玉座には顔全体を覆う仮面を被った誰か座っている。まだ遠くてよくは見えないが、きっとあそこに座っている女が……。
「は、はい。あれがハイパーサタンです」
こちらには気付いているだろう。しかしハイパーサタンはなんの反応も見せず、黙って俯いたまま、動かずに座っていた。
不気味だ。いきなり魔法で攻撃してきたりしないだろうか?
このまま進んでいいものかどうか、俺は足を止めていた。
「うーん……ここは慎重に進んだほうが……」
奴の動向に注視しながら少しずつ進む。そうしようと思ったとき、
「うおおおおっ! そこはわたしの玉座だーっ! 返せーっ!」
「世界平和のために死んでもらうぞハイパーサタンっ!」
「えっ? ちょ……っ」
リュアンとデムーロニーが、玉座に座るハイパーサタンへ向かって駆け出す。
「ま、待て2人ともっ!」
しかし俺の言葉など聞かずに2人は行ってしまう。
「ツ、ツクナっ!」
「放っておけ。死にはしないじゃろう」
「けど……」
心配する俺をよそに、2人はハイパーサタンへ迫る。
「あ、だからずぶ濡れに……」
敗者は自害と言いつつ、死ぬつもりなんてなかったようだ。
ツクナはこれを知っていたのだろう。デムーロニーも健在だった。
「う……はあ、はあ……」
「大丈夫か?」
苦しそうに呼吸をするデムーロニーがゆっくりと身体を起こす。
「こ、ここは……? 一体どうなって……」
「その答えはあそこだ」
蹲って地面に手をつくセグマルドと、その側に倒れ伏す4人の男を指差す。
「か、勝ったんだなっ! さすがハバン君だっ!」
「いや、それほどのことはしていないんだけどな」
顔に装着している道具をはずしてツクナに渡す。
「なんなんだこれ?」
「眼鏡じゃ。かけるとかしこそうに見える」
「ふーん」
不思議な道具だ。
「でも、そんなのなくたって、ハバンさんが勝つってわたしはわかってましたよっ。ハバンさんのほうがずっとイケメン度は高いですもんねっ」
「そ、そんなことはないと思うけど」
「いや、勝ってたじゃろうな」
受け取ったメガネとやらを異空間に放り込みながらツクナは言う。
「ハバンはツクナが育てている男じゃ。他の男に劣るなどありえん」
「じゃあどうして道具を渡したり、いろいろ助けてあげたの?」
「ツクナの男になり得るならば、完璧でなくてはならん。半端な勝ち方ではダメなんじゃ」
「ふーん。ハバンさんって、ツクナちゃんの恋人になるの?」
「えっ? いやその……」
言葉に詰まって俺は口篭る。
「なーんて冗談ですよ。ハバンさんは小さい子にもモテるんですね」
「う、うん……」
「ツクナがハバンを好きなのではない。ハバンがツクナを好きなのじゃ」
「はいはい。大人びてるみたいで、意外にかわいらしいとこありますね、ツクナちゃん」
「ははは……」
それはまあともかく、勝ててよかった。これで先に進める。
倒れている4人と蹲るセグマルドのわきを通って俺たちは先へ進む。
この先にハイパーサタンと呼ばれる女がいる。一体どんな奴なのか? 自分たちで勝てるだろうか? ツクナが一緒なので大丈夫とは思うも、少し不安であった。
「ハバン、これを腕にはめておくのじゃ」
「うん? 腕輪?」
綺麗な装飾が施された銀色の腕輪を受け取り、それを右腕にはめる。
「なにこれ?」
「そのときになればわかる」
「そのとき……?」
って、どのときだろう? まあいいか。
「あ、それ、かわいいー。わたしにもちょーだいっ」
「ツクナとハバンの分しかない」
「えーっ! 残念……」
うな垂れるリュアンを連れてさらに先へ進むと、やがて大きな扉の前に出る。
「ここにハイパーサタンがいるの?」
「は、はい。ここが城の最深部で、魔王のいる場所です」
仰々しく、おどろおどろしい扉だ。いかにも悪い奴が奥にいそうな感じがした。
「なあツクナ、俺たちでハイパーサタンに勝てるかな?」
「愚問じゃ。勝てないのならここには来ない」
「そ、そうだな」
ツクナがこう言うなら大丈夫だ。
意を決して、俺は扉を押して開く。
「む……」
扉から奥まで道が続いている。その道の両わきには大量の水が溜まっており、道はさながら橋のようであった。
「あれ、か?」
橋の先にある円形の地面に置かれている玉座には顔全体を覆う仮面を被った誰か座っている。まだ遠くてよくは見えないが、きっとあそこに座っている女が……。
「は、はい。あれがハイパーサタンです」
こちらには気付いているだろう。しかしハイパーサタンはなんの反応も見せず、黙って俯いたまま、動かずに座っていた。
不気味だ。いきなり魔法で攻撃してきたりしないだろうか?
このまま進んでいいものかどうか、俺は足を止めていた。
「うーん……ここは慎重に進んだほうが……」
奴の動向に注視しながら少しずつ進む。そうしようと思ったとき、
「うおおおおっ! そこはわたしの玉座だーっ! 返せーっ!」
「世界平和のために死んでもらうぞハイパーサタンっ!」
「えっ? ちょ……っ」
リュアンとデムーロニーが、玉座に座るハイパーサタンへ向かって駆け出す。
「ま、待て2人ともっ!」
しかし俺の言葉など聞かずに2人は行ってしまう。
「ツ、ツクナっ!」
「放っておけ。死にはしないじゃろう」
「けど……」
心配する俺をよそに、2人はハイパーサタンへ迫る。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
41
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる