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第3の異世界ー死にたい魔王
第28話 勇者って悪い奴?
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「あ」
「どう? 勇者いた?」
「うーん、あの奥のおっきいイスに座ってるのが勇者だと思うんですけど」
「そのイスに座ってるのは領主じゃない?」
謁見の間なら、奥に座ってるのは領主だろう。
なんで勘違いしたんだろうと、首を傾げた俺も中を覗いてみる。
「あ」
これはどういう状況だろう?
豪奢な服の男が横向きに跪いており、その背に踵を乗せて奥のイスに座っている者がいる。
顔の整った若い男だ。鎧を着ているのでたぶんあれが勇者だとは思った。
「あれが勇者なのか?」
「うむ。あれが勇者デムーロニーじゃ」
「勇者デムーロニー……あの男がね」
デムーロニーは骨付き肉をかじりつつ、もう片方の手で女を抱き寄せて胸を揉みしだいていた。
「おいっ! 酒が無くなったぞっ! 早く持って来いっ!」
「は、はいっ!」
給仕らしき男が慌てた様子で扉から出て行く。
よっぽど急いでいたのか、俺たち3人にはまったく気付かずに。
「まったくこの町は飯も酒もまずい上に、たいして良い女もいねぇ。この勇者様が滞在してやってるんだぜ。もっとましな食い物や女を用意できねぇのか? ええ? 領主さんよ?」
「も、申し訳ありません勇者様」
足を乗せられている男が謝罪の言葉を口にする。
「新たに現れた魔王の軍によって周辺の村々が荒らされ、食物が思うように手に入らず、町民が町から逃げてしまい女のほうも減って……ぐあっ」
乗っている踵が領主の背を叩く。
「まるで俺のせいみてーじゃねーか? 俺がとっとと魔王を倒させねーからとでも言いてーのか? ああおい?」
「め、滅相もございません。そのようなことは微塵も……」
「俺にはそう聞こえたなぁ。お前らはどうだ?」
勇者の声に、3人の女が反応してそちらを向く。
「あたしには勇者様を悪く言っているように聞こえたね」
「わたしもー」
「わたくしもそのように聞こえましたわ」
あの女たちは勇者の仲間だろうか? そんな様子だ。
「あー気分悪いなー。魔王退治やめっかなー?」
「そ、そんなっ! 勇者様でなければ魔王を倒すことはできませんっ! どうかお許しくださいっ!」
「そうだよなぁ」
イスから立ち上がった勇者はなぜか上着を脱いで上半身を裸にする。
「美しい容姿、高い身長、そしてこの引き締まった肉体。これほど素晴らしい外見を持つ俺にしか、魔王を倒すことはできないのだっ! ふははははっ!」
「きゃーっ! 勇者様かっこいいっ!」
「イケメンっ! 素敵ーっ!」
「はあ……なんて逞しくて美しいの。惚れ惚れしてしまいますわ……」
これ見よがしに肉体を披露する勇者。
それを目にした仲間の女たちはきゃーきゃーと嬉しそうな声を上げていた。
「どういうことだ?」
「男の場合はイケメン、高身長、引き締まった肉体がこの世界で才能を引き出せる条件なんじゃ」
「ふーん」
やっぱり変な世界だ。
「新たな魔王とて、この俺の魅力で虜にしてやるぜーっ! ぐはははははっ! ……ん? おいガキ、なにを睨んでるんだ?」
勇者の目が部屋の端っこで隠れている男の子へ向く。
「あ、あれは私の子で……」
「領主のガキか。おいガキ、こっちへ来い」
「えっ?」
「早く来い。俺の命令が聞けないのか?」
「ひっ……」
低い声で言われてビクリと震えたその男の子が勇者のほうへ歩いて行く。と、
「あぐっ!?」
勇者に殴られた男の子が床へと仰向けに倒れる。
「二度と俺を睨むな。次は殺すぞ」
そう吐き捨てると勇者はふたたびイスへ座った。
「子供を殴るなんて……」
あれが人類を魔王から守る勇者だと言うのか? とてもそうは思えない。
「本当にそうですねっ! わたしだったら子供を殴るなんてぬるいことをしないで、骨を折ってやってましたよっ!」
「えっ?」
「えっ?」
俺が見ると、リュアンは気まずそうに目を逸らす。
「そ、そういえば君は人類を滅ぼす魔王だったね」
「いえその……冗談ですよっ! わたし子供好きですからーっ!」
「う、うん」
めちゃくちゃ目が泳いでるけど。
「あ、あんなひどい奴はここで退治してやりましょうっ!」
「あ、リュアンっ」
扉を開いたリュアンが中へ入って行ってしまう。
「どう? 勇者いた?」
「うーん、あの奥のおっきいイスに座ってるのが勇者だと思うんですけど」
「そのイスに座ってるのは領主じゃない?」
謁見の間なら、奥に座ってるのは領主だろう。
なんで勘違いしたんだろうと、首を傾げた俺も中を覗いてみる。
「あ」
これはどういう状況だろう?
豪奢な服の男が横向きに跪いており、その背に踵を乗せて奥のイスに座っている者がいる。
顔の整った若い男だ。鎧を着ているのでたぶんあれが勇者だとは思った。
「あれが勇者なのか?」
「うむ。あれが勇者デムーロニーじゃ」
「勇者デムーロニー……あの男がね」
デムーロニーは骨付き肉をかじりつつ、もう片方の手で女を抱き寄せて胸を揉みしだいていた。
「おいっ! 酒が無くなったぞっ! 早く持って来いっ!」
「は、はいっ!」
給仕らしき男が慌てた様子で扉から出て行く。
よっぽど急いでいたのか、俺たち3人にはまったく気付かずに。
「まったくこの町は飯も酒もまずい上に、たいして良い女もいねぇ。この勇者様が滞在してやってるんだぜ。もっとましな食い物や女を用意できねぇのか? ええ? 領主さんよ?」
「も、申し訳ありません勇者様」
足を乗せられている男が謝罪の言葉を口にする。
「新たに現れた魔王の軍によって周辺の村々が荒らされ、食物が思うように手に入らず、町民が町から逃げてしまい女のほうも減って……ぐあっ」
乗っている踵が領主の背を叩く。
「まるで俺のせいみてーじゃねーか? 俺がとっとと魔王を倒させねーからとでも言いてーのか? ああおい?」
「め、滅相もございません。そのようなことは微塵も……」
「俺にはそう聞こえたなぁ。お前らはどうだ?」
勇者の声に、3人の女が反応してそちらを向く。
「あたしには勇者様を悪く言っているように聞こえたね」
「わたしもー」
「わたくしもそのように聞こえましたわ」
あの女たちは勇者の仲間だろうか? そんな様子だ。
「あー気分悪いなー。魔王退治やめっかなー?」
「そ、そんなっ! 勇者様でなければ魔王を倒すことはできませんっ! どうかお許しくださいっ!」
「そうだよなぁ」
イスから立ち上がった勇者はなぜか上着を脱いで上半身を裸にする。
「美しい容姿、高い身長、そしてこの引き締まった肉体。これほど素晴らしい外見を持つ俺にしか、魔王を倒すことはできないのだっ! ふははははっ!」
「きゃーっ! 勇者様かっこいいっ!」
「イケメンっ! 素敵ーっ!」
「はあ……なんて逞しくて美しいの。惚れ惚れしてしまいますわ……」
これ見よがしに肉体を披露する勇者。
それを目にした仲間の女たちはきゃーきゃーと嬉しそうな声を上げていた。
「どういうことだ?」
「男の場合はイケメン、高身長、引き締まった肉体がこの世界で才能を引き出せる条件なんじゃ」
「ふーん」
やっぱり変な世界だ。
「新たな魔王とて、この俺の魅力で虜にしてやるぜーっ! ぐはははははっ! ……ん? おいガキ、なにを睨んでるんだ?」
勇者の目が部屋の端っこで隠れている男の子へ向く。
「あ、あれは私の子で……」
「領主のガキか。おいガキ、こっちへ来い」
「えっ?」
「早く来い。俺の命令が聞けないのか?」
「ひっ……」
低い声で言われてビクリと震えたその男の子が勇者のほうへ歩いて行く。と、
「あぐっ!?」
勇者に殴られた男の子が床へと仰向けに倒れる。
「二度と俺を睨むな。次は殺すぞ」
そう吐き捨てると勇者はふたたびイスへ座った。
「子供を殴るなんて……」
あれが人類を魔王から守る勇者だと言うのか? とてもそうは思えない。
「本当にそうですねっ! わたしだったら子供を殴るなんてぬるいことをしないで、骨を折ってやってましたよっ!」
「えっ?」
「えっ?」
俺が見ると、リュアンは気まずそうに目を逸らす。
「そ、そういえば君は人類を滅ぼす魔王だったね」
「いえその……冗談ですよっ! わたし子供好きですからーっ!」
「う、うん」
めちゃくちゃ目が泳いでるけど。
「あ、あんなひどい奴はここで退治してやりましょうっ!」
「あ、リュアンっ」
扉を開いたリュアンが中へ入って行ってしまう。
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