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225.不穏な空気2
しおりを挟むサンディーテの方が多少落ち着いたと報告があったかと思えば、次は祖国にてドラゴンが出没したという。ドラゴンは滅多に人前に姿を表すことはない。卵を奪われたのを取り返しに来るとかはあるみたいだけど…。
母さんによると、警戒に当たっていた父さん率いる騎士団が駆けつけて、街一つの被害で収めることができたらしい。…街が一つ消し飛んだ…それでも被害が抑えられた方だなんて…
アニメや漫画の中でなら、よくある話で済ませてきた。けれどここは現実だ。多くの人が命を落としたはずだ。母さんは言わないけど…重苦しい雰囲気でそれくらいのことは簡単に想像がつく。
「テスラさん…リオネル…大丈夫だよね…?みんな…大丈夫だよね」
「ああ、魔導具だって渡したんだ、大丈夫。」
「うん、父さん達だってヨルク達だって強くなってたでしょ?」
「うん…」
様々な国から集まって出来ているこの魔術学園都市でも、帰国する人が段々と増えてきた。人が疎らになった学園で、ククルも帰ると聞かされた。ウェネルは既に里に一度帰省していたが、戻ってきていた。
「そっか…ククル気をつけてね。最近は何が起こってもおかしくないから」
「ああ、またこちらに戻ってきたら宜しく頼む」
「うん、待ってるからね」
「ああ」
半数近くの生徒が帰国したことで、学園は休学ということになった。そして俺達は学園長兼この都市の責任者的な立ち位置であるフェルノさんに呼ばれていた。
「テスラ様、ナルアくん、リオネルくん、ウェン…呼び出しに応じてくれてありがとうございます…無理を承知でお願いしたい…この都市に存在するダンジョンに異変が起こっていると報告が上がっている。調査を入れたが帰ってくることは無かったよ…。
そこで、何が起こっているのか確かめてほしい。もし…サンディーテのようにスタンピードが起こるのだとすれば早急に避難が必要だ」
「テスラさん…どうしますか…?」
「そうだな…私は協力しよう。ウェンは置いていく。何かあった時に備えるべきだからな。」
「…わかったっす。」
「リオネルは…?」
「僕も行くよ。覚悟は出来てる。冒険者になった時からね。」
「じゃあ三人でダンジョンに潜ります。一応…作りためた魔導具を置いていくので、何かあったときには有効活用して下さい。あと…契約魔法に応じて頂けますか?」
「ご協力感謝します。…契約は問題ないけれど、それで契約魔法の内容は?」
「この場でのことは、絶対に情報を漏らさないこと」
「構いません。」
テスラさんが契約魔法を行使する。その後、俺は簡潔に魔道士ヘルメスの魔法陣の解析に成功したことを話し、戦いに役立つ魔法陣を効果説明付きで渡していく。信じてもらえない可能性もあったが、フェルノさんは信じてくれた。
ヘルメスの魔法陣は、戦いに利用出来るような、攻撃性の高いものは殆ど無かった。渡した魔法陣は俺が作ったものが主である。この事実が知られれば、俺は今までの比でなく狙われることだろう。
そんなチートじみた力を使ってでも…みんなを守れるならそれでいい。命を落としてしまえばそれまでだ。どうしても今回の異常事態を乗り越えなくてはならない。今後魔法陣が戦争なんかに利用されてしまわない様に、魔法陣に回数制限をつけておいた。
戦いには支障はない筈だ。それに、かなりの魔力量が必要となるからそんなに沢山使えないと思う。フェルノさんにもくれぐれも今回のことが終われば破棄してくれ、と頼んでおいたし…約束は守ってくれると信じてる。
連絡用魔導具も渡して俺達は早急にダンジョンに入る準備を整えるべく動き出す。
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