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194.魔術学園2年生8

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若干の気だるさの残る体で起き出して、横で寝ているテスラさんの美しい寝顔を暫し鑑賞し、ご飯を作りに向かう。廊下でお狐さんに遭遇した。

「おはよぉお狐さん、早起きだね。よしよし!」

「こん!」

「ノエル」

「きゅー(はぁい)」

「お狐さんと遊んであげて。俺はご飯作ってるから」

「きゅ!(わかった)」

俺についてこようとするお狐さんの首をそっと加えて遊べる少し広めの部屋に向かっていった。ノエルも成長したなぁ、お姉さんっぽい。ノエルは得意な影の魔法を使って、お狐さんが影でできたネズミのようなシルエットを追いかける。楽しそうで何より。

今日は休みなのでゆっくりしてもいいんだけど、デートして研究室に一緒に篭もる予定だ。テスラさんの研究は魔道士ヘルメスの残した魔法や魔法陣についてだからね。つまりは日本語だし俺は読めるので、訳してテスラさんに解説している。

俺はテスラさんなら強大な力を持っても絶対に悪用したりしないと知っているし、テスラさんの役に立てるのが嬉しい。今までは俺が守られるばかりだったし、対等になれたようで誇らしい。まぁただの前世の知識だから俺が特別成長したとかではないんだけど…。

「ふぁぁ…あ…ナルアくんおはよぉ」
 
「おはようティナさん、ソファで休んでていいよ?」

「うんん…手伝うよ」

「そう?ありがとう」

コウモリの獣人だからティナさんは本来夜行性で朝には弱い。それでも朝ごはんを作るし、ウェンさんのお見送りは欠かさないので、相変わらず仲良し夫婦といった感じだ。

「お狐さんはノエルと遊んでるからね」

「うん。ありがとうナルアくん」

眠そうなティナさんに包丁を持たせるのも不安だなぁと、手で千切って作るサラダと火にかけてあるスープを混ぜてもらうようにお願いした。俺は俺でメインになる魚と肉を切って焼いていく。みんなよく食べるので沢山作る。

丁度出来上がった頃にウェンさんとテスラさんが顔を出した。ノエルを呼んでお狐さんも連れてきてもらう。みんなが顔を揃えたところで、朝ご飯を食べ始めた。我ながら上出来!

片付けはウェンさんとテスラさんでやってくれるというので任せて、お腹いっぱいになって眠たそうなお狐さんを寝かしつける。ティナさんも一緒に眠ってしまった。あとでウェンさんが二人ともベッドに運んでくれるだろう。

俺は外行き用の準備を整えて、テスラさんと家を出る。手を繋いで、尻尾もしっかりと絡めて、恋人なんだぞ!というアピールをしながら歩く。テスラさんはモテるからね。匂い付けもしてるし、番にもなってるけどそれでも声を掛けてくるんだから凄いよね…。

この間手入れに預けた武器を取りに行って、それから俺の好きな甘いものを食べ歩いたり、市場を冷やかしたりして存分に楽しんだ。そして食材の買い出しなんかもして家に戻ってきた。

お茶などを用意してから研究室に篭もる。そしてテスラさんに差し出された魔法陣を見る。

「ナルア、ここは何が書いてある?どういった意味なんだ?」

「えっと…」

…俺様最強魔法……魔法陣の研究を手伝うようになってから度々思うんだけど、ナルシストっていうか…自信家っぽいんだよね、ヘルメスって。

「…簡単に言うとヘルメス最強魔法…?みたいな感じですね…」

「なるほど…ということはこの魔法陣は最強格の魔法が発動できるということか?」

「うーん…その…最強どうのこうのっていうのは、多分関係無くて、ただ単に自慢っていうか…俺は強いんだぞアピール?みたいなものだと思います。」

冷却、継続、氷点下。などと書かれているので用途としては冷凍庫だろうな。

「おそらく継続的に冷やすことが出来る魔法陣ですね。」

「なるほど…具体的にどの文字が何を指定しているのか書いてくれるか?」

「はい」

言われた通りに書き記していく。テスラさんも書いているが、こちらの世界の人は、日本語を正しく書くことが出来ていない。そのためこちらの世界の人が日本語を使って魔法陣を作ることは出来ないのだろうな。

「ナルア…この魔法陣の文字と、ナルアの書いたこれは同じ様に読めるのか?」

「はい、読めます。テスラさんが書いたものは読めないですけど」

「…そうか…同じ様に書いたつもりだが違うのだな」

テスラさんは残念そうだけれど、悪用の可能性がある以上日本語が使える人は少ない方がいいと思う。今残されているヘルメスの魔法陣は厳重に管理されているし、場合によっては魔力を流したら死ぬこともある。大型魔法の魔法陣だった場合、魔力が足りなくなっても魔力を吸われて死ぬらしいんだけど…。

俺が魔法陣を解析することで、魔法陣を有効活用出来るようになる可能性が高いということだ。テスラさんが研究を許されているのも、ヘルメスの魔法陣の極一部だけらしいしね。

必要魔力量も魔法陣の効果が分かれば凡そ予想が立てられるというわけだ。それさえ分かれば安全に魔法陣を使えるようになる。

ヘルメスの魔法陣には日本での家電の効果なんかを再現したものが多くて、彼がいかに便利な生活を求めていたのかが伺える。というかヘルメスも俺の前世と同じ時代くらい発展した時代から来たのだろうな。

扇風機に冷凍庫、冷蔵庫、エアコン、ドライヤー、明かり、ヒーター等々、俺が見ただけでもそのくらいあったのだ。効果範囲の差なんかも見受けられたので、色々試しながら作っていたんだろう。

「生活の質を向上させられそうだな。」

「そうですね!」

「だが…相当な魔石供給がなければ普及は夢のまた夢だな」

「…たしかに…」

俺達は魔力が多いから問題ないけれど一般の人の魔力量では難しいのか…。鍛える…というか魔力量を増やすような特訓を積めば多少は増えるんだけど、分かってはいてもやる人は少ないからなぁ。

「じゃあお金のある人とかしか使えないですね…」

「そうだな…加えて複写の難しさの問題もある。先程私が書いたものはナルアによると違うらしいしな…まともに書き写せるものがどれ程いるか…」

「ヘルメスの魔法陣…なかなか立ちはだかる問題は多いみたいですね」

「ああ。それでも諦めるつもりはないがな。気長にやるとしよう。ナルアのおかげでだいぶ捗っているしな。」

「えへへ!テスラさんの役に立てて嬉しいです!」

「ナルアは居てくれるだけで役にたっている。いつも癒やされている」

「俺もです!」

甘ったるい雰囲気のまま午後の時間はゆったりと過ぎていった。




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