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182.学園祭5
しおりを挟むついに来週には学園祭の本番がやってくる。それにあわせて各国の王族や代表者たちも来訪する。テスラさんには危険だから絶対に一人では外に出るなと言い聞かされている。王族に絡むと面倒事になりかねないのはもう身を持って知っているので、家で大人しくしていることにする。
みんなもうすぐ会えるんだな。そんなふうに遠い国に思いを馳せる。
ヨルク達は、魔術学園都市へ行くための席を争っている人たちを高みの見物していた。残りの3枠を争う猛者たちの中で初めに席を確定させたのは、ナルア達の父親であるトワだった。
副騎士団長を長年勤めてきた実力は伊達ではないのだ。ツェルトが国を出た今では騎士団長になっている。国王となった兄からの信頼も厚い。
「よし!!ナルアー!!会いに行くからねー!」
「「「あははは!」」」
「流石団長!よ!親バカ!」
「おいおい、煩いぞー!お前達、訓練覚悟しておくんだな」
「「「「「「「ヒェ……」」」」」」
「そんなの職権乱用だー!はんたーい!」
「ふむ、そんなに訓練が嬉しいんだね。」
「ちょっ!副団長のせいっすよ!親バカとか余計な事ばっかり言うから!」
「副団長のばか!」「ホントだよ!」「あんたのせいだ!」
「はははっ!そうかそうかそんなに訓練したいのかお前たち!」
「副団長まで…クソ!!」「もう遅いんだな。…なら今のうちに言えるだけ言ってやる!副団長の脳筋ー!ばかー!」「そうだな。アホ副団長ー!!」
不満が爆発した騎士団員たちの適当な罵声が飛び交う。それはさておき次の試合が始まる。ウルと魔術師団員だ。ウルはもともとの戦闘のセンスもあって身体の出来上がった今では相当の実力を持っている。
対する魔術師団員もテスラさんの下で働いていたのだから、実力者で無い筈がない。威力の強い、時間のかかる魔法を使うのではなく、素早く発動できる魔法を使いこなす。隙のない戦術だ。
それでも僅差でウルが勝利を収めた。
「ウルが勝ったか」
「そのようですね。あと一枠は誰になるでしょうね」
「さてな。見てみないことにはわからないだろう」
「それは違いありません。意外な人物かもしれませんしね。」
「ああ」
勝ち上がっているのは覆面で顔を隠した小柄な獣人と体格の良い騎士団員だ。一見して小柄な獣人が不利なように思えるのだが、何故か勝ち上がるのはいつも小柄な獣人の方だった。
彼が何者なのかという疑問については答えを知っていても意外に映る。まさかあそこまで強いとはな…あの一家は一体どうなっているのだか…。
スピードの乗った剣での一閃が大型獣人を襲う。小柄な身体から繰り出される力強い攻撃に堪らずダウンする。危うげなく小柄な獣人が勝利を収めた。こうして、残りの3枠が出揃った。ナルアの父のトワ、ウル、謎の獣人。
楽しい旅になりそうだ。もうすぐ会えるなナルア。是非とも成長した姿を見せたいものだ。国王の補佐役として色々学んできたからな。
「ねぇテスラさん?誰が来るか聞いてる?」
「ああ、聞いているが。」
「え!誰なの?誰なの?」
「ふふっそうだな…来るまで楽しみにしているといい。」
「ええ!?教えてよー!」
「秘密、だ。」
ニッコリ笑顔にウインクまでされてしまえば、閉口せざるおえなかった。テスラさんの顔には弱いんだ。仕方ないよね。まぁ誰かしらには会えるんだ。楽しみに待つとしよう。
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