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180.学園祭3
しおりを挟む学年ごとに魔法を披露することになっているから、同学年同士で話し合って内容を決めてくれ、ということらしい。俺達は取り敢えず大枠だけでも決めておこうと会議室を取った。
「皆はどんな内容が良いか意見はあるか?」
「うーん、俺は何でもいいよ。」
「ナルアと同意見だ。そもそも使える魔法も少ないからな。」
「俺もだぜ。まぁいい物にしたいとは思ってるんだが…何分魔法は上手くねぇ。」
ククルとミヤさんは肉体強化系が得意なんだよね。いい感じにアピールできると良いんだけど。今日見せてもらったみたいなバラバラな感じじゃなくて合わせ技みたいなのがいいな。
「えっと…合わせ技みたいなのが出来るといいなーと思うんだけど、多分俺とカルネさんは全般出来るから、チノさんの地属性、ククル、ミヤさんの肉体強化を中心に考えたほうが良いと思うんだ。」
「それぞれに見せ場を作るということか?」
「はい!どうでしょうか?」
「俺はありがてぇよ。けどよ…他のやつに申し訳ねぇよ。」
「私はそんなことは無いと思いますが。強化魔法も立派な才能ですからね。」
「そ、そうか…?じゃあそれで頼む。」
「俺も賛成だ」
「カルネさんはどうですか?」
「もちろん俺にも見せ場はあるんだろう?それなら構わない」
「ありがとうございます。では構成を考えましょうか」
地属性の使い方…肉体強化は足場を作ってその機動力をアピールしたり岩とかを切ってもらったり…?カルネさんは多彩な魔法を使ってもらって…
うーん…
「今日ナルアがやってたのが基礎じゃ駄目なのか?」
「出来なくは無いと思うけど…自分一人では出来るけど人とやったことってないからどのくらい難しいのかわかんなくて…取り敢えずやってみましょうか」
「ああ」「おう」「ええ」
ククルの提案にしたがって、訓練場は押さえてあるとフェルノさんにも言われてるし訓練場に向かった。天候ショーは俺とカルネさんで行って、地上でチノさんとククル、ミヤさんに暴れて貰う。良い気がしてきた!
「えっと…それじゃあまずどんな感じで魔法を使っていくのか説明しますね。」
「ああ頼む」
「まず水を出してそこに熱を加えていきます。すると水蒸気ができるんで、冷やしてそれをいい感じに集めると雨が降ります」
「……つまり、水、火、氷属性が必要だということか?」
「はい!」
「…水と火を担当しようと思うがいいか?」
「はい!じゃあお願いします!」
最初は小さめの実験で、ということで、1立方メートルくらいの水を温めていく。ちなみにチノさんが水を貯める器を作ってくれた。得意だというだけあって無駄のない魔法だった。
水蒸気が立ち上っていくのを冷やしていく。雲っぽく見えるかな。やがて水が落ちてくる。
「いい感じじゃないですか?じゃあこんな感じで行きましょう!」
「ああ」
「じゃあ俺達は地上で何かやるか?」
「ククルとミヤさんがチノさんが作った岩を削るとかどう?力もアピール出来ると思うし、チノさんの地属性の凄さも見せつける感じで!」
「じゃあまずナルアくんたちの空を先に…地面は私が整えますよ。先程のような水を入れる器や、ナルアくんたちが乗るステージを担当しましょう。」
「その間俺達は待機か。」
「それか、剣術を披露するのはどう?剣舞っていいと思うんだけど。」
「剣…ぶ…?けんぶってなんだ…?」
「ん?えっと…剣を持って舞うんだよ。ちょっとだけなら出来るはず」
この世界で剣を持つようになってから、前世でのアニメとかで見たのか剣舞に憧れて練習したもんね。最初は闇雲に剣振り回してるようにしか見えなくてテスラさんとかにも止められたんだけど…止めずに地道にやったよね。
他の人に見せたことは無かったけど、初披露だね!二人とも剣には長けているから、いい感じに出来ると思うし。俺はリズム感があまり良くなかったからさ…
氷で作り出したひと振りの剣を持って軽く舞ってみせる。俺は上手くないけど…でも参考にはなると思うし!
美しく見えるように軽やかに見えるように、猫のしなやかな筋肉を活かしクルクルと跳ねながら剣を振るう。
「……えっと…どうかな?剣に長けてる人には向いてるかと思うんだけど」
「ああ、いいと思う。ナルア、すごいなお前は。」
「そう?ありがとククル」
「…凄すぎて呆けちまったぜ…あんなん出来るか不安だが…やってみよう!」
「二人は力もあるから、剣舞の途中で、チノくんに障害物を出してもらって斬ったりするのも良いんじゃないかな!」
「なるほど…」「それもいいな!」
みんなと意見を出し合いながら様々な見て楽しめる要素を入れ込んでいく。良い演技が出来そうだ!国の皆にも楽しんでもらえると思う。楽しみだ!
おまけ
小さい頃の思い出…剣舞
最近剣を習い始めたナルアが剣に見立てた木の棒を小さな手で握り一心不乱に振り回している。まぁ小さい頃なら有りがちなこと、と見逃していたのだが…
最近は動きがさらに激しくなった上に、剣の軌道がぐちゃぐちゃで…癖になったら不味いだろうと止めるようにしていたのだが…やめようとしないのである日聞いてみることにした。
「ナルア、それは何をしているんだ?誰に教えられた?」
「テスラさん…これはおどりなの!!すごい?」
「…あ…ああ、凄いな」
ナルアのヘンテコな動きには眉を顰めたが…しかし真っ直ぐなキラキラとした嬉しそうなナルアに負けた…。しかし踊りだったとはな。私の見たことのあるものとは随分違うようだが…
小さな足を精一杯広げて蹴り上げるような動き…まぁとてもゆっくりなのだが…をしたかと思えば次は剣を持ってクルクルと回ってみせる。
なんだかよくわからんが…楽しそうだ。可愛らしいので見守ることにしよう。
この時は大きくなってから見せられた剣舞に驚かされる事になるとは全く思っていなかった。ナルアが剣術も出来るようになってから見た剣舞は、見違えたように洗練されて美しかった。
人前ではやらないようにと言い聞かせておいたが…ナルアのことだ忘れているだろうな。
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