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159.魔術学園10
しおりを挟む校門のところで待ってくれているテスラさんの元に急ぐ。ウェネルとの追いかけっこを楽しみすぎてしまった。ついつい時間を忘れてしまった。
「テスラさーん!!」
「…ナルア、おかえり」
「遅れてごめんなさい!」
「構わない。学園は楽しかったか?」
「うん!魔法実践とか、契約魔法とか色んな授業受けたんだ!それにククルとウェネルっていう友達も出来たの!」
「それは良かったな。しかし…私にも構ってくれると嬉しい」
「あはは!テスラさんが一番だよ。大好き!」
「そうか…それなら安心だな。」
「うん!あ…」
「どうした?」
「ククル…置いてきた…今日にでも話すって言ってたんだけど…」
「ああ、置いて行かれたな?随分と狐と遊ぶのが楽しかったようだな。流石猫というか…追いかけ回すのが好きなんだな。」
振り返ると、門に凭れているククルの姿が…。ちょっと怒ってるかも…
「あ、あはは…ククル、ごめんね?じゃあ一緒に帰ろっか?」
「はぁ…それで誤魔化されてやるのは今日だけだぞ。」
「はぁい。」
「…ナルア…後で話を聞かせてもらおう。」
わぁ…テスラさんも怒ってるかも…これは…お仕置きだぁ…。テスラさんのお仕置きは…本気のテスラさんとぶっ続けの戦闘訓練をすることになる。まぁ只管地面に転がされるだけの簡単なお仕事です!すっごい痛いし怖いけどね…。
「…テスラさん……わかったよ…」
「ウェンも交えて話さねばならないようだな?」
「…うん…」
そうだった…ウェンさんには狐の子とは関わるなって言いつけられたもんなぁ。ウェンさんにも扱かれるのか…俺生きてるかな…。ははっ…
放心状態に近い俺の手を引いて歩くテスラさん。ククルは俺の様子を見て何かを察したのか、大人しくついてくる。若干申し訳無さそうにしている。よっぽど俺の様子が哀れだったのかもしれない。
「テスラさん…手加減してくれる?」
「それは出来ない相談だな。」
「だよね…」
「ナルア、何故怒っていると思う?」
「えっと…危ないことしたから?」
「まぁ、そうだな。わざわざ危険に首を突っ込むようなことをしているからだ。私が鍛えておけばナルアが傷つかないで済むかもしれないからな。」
「うん…ごめんなさい…」
家についたらククルと話してくると言って、二人で応接室に向かった。俺は俺でウェンさんのとこ行かなきゃなぁ。多分もう知ってるし…。
「ウェンさん!来たよー!」
「ん、待ってたっすよ。それで、何を思って近づいたのか聞かせてくれるっすか?俺はちゃんと忠告したっすけどね?」
「…ごめんなさい…でも俺…ククル以外に友達になってくれそうな人彼以外に居なくて…それに良い子そうだったし!」
「はぁ…仕方がないっすね。関わってしまった以上今更っすから…一応話しておくっすけど、俺の出身地は暗殺者の里っす。本来なら俺はそこの当主になる予定だったっす。けど、里を抜けてここにいるっす。だから里の奴からしたら裏切者なんすよ。だから里の奴は俺を消そうとするっす。」
「…そんな大事だと思わなくて…ごめんなさい…」
「まぁ大丈夫っすよ?里の奴より俺の方が強いっすから。ただ、ナルアくんも注意した方がいいっす。」
「うん…」
「じゃあ早速訓練するっすよ。身を守れるように、厳しめに行くっすから覚悟するっすよ。」
「はい」
死にものぐるいで食らいつき、ウェンさんの訓練に耐え抜く。本当に限界ギリギリまで追い詰められ、ようやく開放された。
「お疲れ様っす。よく頑張ったっすね。」
「はぁ…はぁ…ありがとう…ございました…」
「ククル、といったか?」
「はい。はじめまして、テスラさん」
「ああ、それで用件はなんだ?」
「初めに誤解のないように言わせて頂きたいのですが、貴方の番、ナルアに手を出す気は無いということです。我々竜人は確かに強い者を好みますので、初対面時は口説くようなことを言いました。けれど、相手の居る者に言い寄ることはしません。」
「ああ、それならばいい。」
「それで今回話させて頂くのは、交渉です。簡単に言えば、俺や国の竜人を指導して頂きたい。その代わり、俺は学園内で貴方の番を守りましょう。俺は学園内では強い方です。そして、竜人が側にいるというだけでも変な奴が寄って来にくいでしょう。」
「…まぁ、悪くはないか。条件はもう少し詰めよう。」
「っ!まさか受けて頂けるとは…」
「…やめるか?」
「いえ、お願いします。」
まあ、もし交渉決裂してもナルアとは友達になったのだし、もし何かあれば手を貸すつもりではあったが。やはり溺愛されているらしいな…。
このあと小一時間は学園でのナルアの様子を話したり、ナルアを邪な目で見ている輩の洗い出し等々…疲れた……。ナルアを守るという契約…かなり大変かもしれんな…。まぁ俺が苦労するだけで国の者が報われるなら、それも悪くない。
「ククル様、良かったのですか?あんな契約をしてしまって…」
「ああ、いいんだよ。レヴィ、お前も鍛えてもらえ。」
「私が…しかし枠はたった五人なのに…」
「お前は最初から入れようと思っていた。遠慮するな。あとの四人の選考は任せた。まぁ強い奴は優先するが、ある程度の常識がなければ除外だな。テスラさんは容赦なさそうだったからな…。下手すれば殺されかねない。」
「…畏まりました。」
「ふにゃあ…」
「ナルア…疲れているようだな。」
訓練から戻れば、テスラさんが座っていたのでスリスリさせてもらう。落ち着く…。
「…あれ?そういえばククルは?」
「もう帰ったぞ。」
「ええ…挨拶してないよ?」
「まぁ明日も会えるだろう。」
「確かにそっか。」
「ご飯にするか?」
「ん?んー…あんまり食欲ないかも」
「分かった。少なめに作ろう。」
「テスラさんが作ってくれるの?やったー!」
「ちゃんと食べるんだぞ。」
「うん」
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