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157.魔術学園8
しおりを挟む契約魔法というのは、簡単に言えば魔物を従える魔法だ。力でもって魔物に認めさせ、その後で契約魔法を使うと魔物を従える事ができる…かもしれない、というものだ。主人となるものの魔法練度にもよるが、一般的には成功確率は40~50%程と言われている。
まぁ詰まるところ、この魔法を使いこなすには、魔物を力で抑えられる程の腕っ節の強さが必要ということだ。と言うわけで、この授業を取る条件として魔物を倒せるだけの力を持っていることが挙げられる。
筋骨隆々といった表現が似合う男性が立っている。おそらくゴリラっぽい?そしてその周りには魔物が寝そべっている。生徒は疎らに居るだけだ。あんまり人気無いのか…?
「時間だな。契約魔法を担当するゴスだ。この授業を受けるには強さを示してもらう必要がある。分かっていると思うが、魔物を従えるには、魔物よりも強くなければならんのだ。授業を取ると決めている者はこの場で試験を受けてもらう。今日受けなくとも、取ると決めたら受ける事になるものだ。受けたい者はいるか?」
「俺がやろう。」
「はいはーい!!」
「む、二人か。よい。前に出なさい。それぞれ私の従魔と戦ってもらう。もちろん殺さない程度にだ。従魔にするには、殺さない手加減も必要であるからな。」
「「はい」」
ククルの相手は、馬に近い形態の魔獣だ。俺は狼っぽい魔獣。素早そうだな…うーん、せっかくウェンさんにお願いしてるんだし、体術で頑張ってみるか。近接戦闘は苦手じゃないけど、俺が戦ってたのって専ら人とだからな。魔獣との戦闘は慣れてないから気をつけないと、ね。
油断大敵!
「それでは、構え。…始め!!」
開始の合図と同時に狼がそのまま襲い掛かってくる。首筋を狙われている。1歩引いて最小限の動きで避ける。そのまま幾度も攻撃してくるのを避けてみる。うん、躱すのは問題はない。
けど…攻撃はなぁ…。俺が習ってるのって暗殺術だし、殺さない攻撃って難しい。…あれ?狼が怯えてる。
「おいおい…その殺気はなんだ…?ストップだ。俺の従魔を殺す気か?」
「え?…いえ、殺す気なんてありません。断じてありません!!それに殺気だって出してない…筈なんですけど…あれ?おかしいな…」
先生からのストップが入って、戦闘は一時中断。殺気のコントロール…甘かったかな?
「うーん…ふっ!」
「……きゅ、きゅーん……」
「……おい、早くその物騒な殺気をしまえ!!この馬鹿タレ!」
「イテッ…すみません…」
本気で殺気を放ってみたらぶん殴られた…。狼は怯えて服従の姿勢を取りつつこちらを伺ってるし…。悪いことしたかなぁ。
「ったく…どこで習ってきやがった…」
「えっと…すみません?」
「まぁいい…取り敢えず戦闘力があることは分かった…一応合格にしておいてやる…。」
「やった!!ありがとうございます!」
「はぁ…厄介な生徒だぜ…。ウォル、来い」
「……きゅん…」
弱々しく鳴いたものの、その場を動くことはない。あれ?先生の従魔なんだから、言う事聞く筈だよね?
「来ないですね…?」
「お前が呼んでみろ」
「ウォル、来い」
「きゅん…」
「……来ましたね?」
「…来ちまったな?コイツは主人をお前だと思っちまってるってことだ。」
「えっと…ウォル、お前の主人はゴス先生だ。ゴス先生の言う事を聞くように!」
「ガウ!」
「ウォル、座ってろ」
「…うん、言う事聞いてますね。大丈夫そうです!」
「お前がそう命じたからな?」
「…きっと気のせいですよ、先生。だって俺魔法使ってないですし!」
「それが問題だ…はぁ…まぁいい。大人しくしておけよ。」
契約魔法もなしに魔物を従える事の方が問題なんだが…。魔物の生存本能的に、自身よりも強いものには服従する傾向がある。だからといって、基本的には闘争本能の方が強いので、どんな相手にも襲い掛かってくる。
格が違いすぎる相手には襲い掛からないというのは聞いたことがあったが…殺気だけで従えるのか…。はぁ…アイツはドラゴン並みだということか?そういった話はドラゴンのような魔物を相手取った場合にしか聞いたことないぞ。
いや…忘れてしまおう…。
「ククル、合格した!」
「ハハハ!素晴らしい殺気だったな!」
「あ…それ怒られたんだから…忘れて!」
「他の生徒も怯えて、近寄ってこんな。」
「…ホントだ…。うぅ…友達作りたかったのに…」
俺達の周りには人居なくなっちゃってる…。めちゃくちゃ避けられてるんだけど。悲しい…。その中で近付いてくる子が一人。
「お前、何者?」
「え?…あ、狐の子!」
「…何者なのかって聞いてるの!!」
「それ、どういう意味?」
「里の者しか知らないはずの技術…その暗殺術…何処て習った?」
周りに聞こえないように、耳元で囁くように言われた。ウェンさんには関わるなって言われてた…んだけど…。ずっと気になってたんだよね!せっかく話しかけてくれたんだもん。
「んーと…友達になってくれたら教えてあげる!」
「はぁ!?」
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