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148.卒業

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旅行に行ったあとは、各々が進学先の為の準備や卒業課題、引っ越しなんかの手続きに追われ、慌ただしく過ぎていった。忙しくしている間のことは、あっという間の出来事だった。

そして今日の日を持って、この思い出深い学校を卒業する。皆との別れはあれど、これが今生の別れという訳ではない。寂しい気持ちはあるが、皆の新たなる門出を祝う気持ちの方が大きい。

朝、カッチリとしたジャケットを身につける。黒をベースに飾り付けられており、上品さと派手さが上手く噛み合っている。つまりとても格好いいって事だ。リオネルも俺と揃いの衣装を着ている。うわぁこれはイケメンだわ。いっぱい告白されるんだろうな。頑張れロウくん…。

「ナルア、似合っているぞ。その衣装」

「えへへ!コイルさんが作ってくれた服だもんね!」

「ああ、ナルアの大切な一日を彩る衣装を作ることができて嬉しい。」

「んふふ!ありがと」

「リオネルも似合っている。サイズも問題ないな」

「はい、ありがとうございます」

「よし!じゃあ行きますか!最後の登校だね…」

「ん、なんだか感慨深いね…」

「そうだね…明日には家も出るしね…」

「寂しくなるね…」

「だね、でも離れてもリオネルは俺の大事な弟だから!」

「ん、ありがと」

ゆっくりと竜車へと乗り込んだ。お世話になってきた御者さんにも挨拶を済ませた。因みに卒業まで担任だったケイン先生へのお礼の品もクラスの皆と準備した。代表でヨルクが渡すことになっている。ヨルクは個人的に訓練してもらったりしていたので、一番お世話になっているからね。

教室までの道も最後と思えば、自ずと歩の進みもゆっくりになる。…後ろからバタバタと駆けてくる人達…俺達に向かってきている。振り返って避けもせずにそれを受け止める。

「おっはよー!!ナルア!リオネル!」

「おはよリリス、ロウ」

リリスの軽い身体を受け止めたが、なんだかテンションが高いらしいな。ピンクのドレスを身に着けており、愛らしい。髪型もきっちりセットされている。ロウは、リオネルに抱きとめられて幸せそうだ。ロウの格好は白と黒ベースのジャケットだ。

「おはよう二人とも!」

「おはよう…」

「ところでリリス走ったら危ないでしょ?」

「うん、ごめん!」

「ロウまで付き合わないの。駄目でしょ?」

「うっ…ごめんなさい…今日のナルアくんとリオネルの服格好良くてテンション上がっちゃって…」

「ふふっそっか。ロウも可愛いよ。」

「リリスも今日も可愛いねー!」

「えへへ!ありがと!ナルア」

むっ!!
鋭い視線を感じる。あぁ、ウルか…。俺がリリスを抱き締めるような形になっているものな。嫉妬ですね…。

「ウルおはよ」

「はよ…ってか早く離れろよ」

「はいはい、ふふっ」

「笑ってんなよ…」

「ごめんごめん。お詫びに可愛いリリスをご覧に入れます!」

リリスの肩を持ちくるりと振り返らせる。リリスを視界に入れたウルは暫し固まって、赤くなった顔をそらし手で隠しながら、ぼそっといいんじゃねぇの…と呟いた。

不器用だなぁとは思うけれど、それを聞いたリリスも嬉しそうだったので良いのだろう。メルもいつの間にか合流しており、ヨルクやエルもやってきた。

「おはよう皆」

「「「「「おはよ」」」」」

「可愛いなナルア」
 
「あ、ありがと…」

「ヨルク様…止めてくださいね。」

「わ、悪い…」

「ありがとエル」

「いや、いつもヨルク様が悪いな…」

「いやいいよ。エルが謝ることじゃないし!」

みんなが揃って、卒業式の時間も近づいてきた。先生が教室に入ってきた。ざわついていた教室内が静けさを取り戻す。

「お前たち、今日までよく頑張ったな。お前たちは今日で卒業だ。明日からは新しい生活が始まっていくだろう。苦労することも多いだろう。しかしお前たちなら大丈夫だ!努力を惜しまず、ここまで食らいついて来たのは、俺の生徒ではお前たちだけだからな。自信を持っていけ!…これで俺の話は終わりだ。移動するぞ。」

ケイン先生は口は悪いが、良い先生だ。いつだって俺達をちゃんと見ていてくれた。的確な指導を受けることができて、成長出来たのは偏に先生のおかげだろう。先生の言葉を受けて泣いてしまっている子もいた。俺だって前世の記憶がなければ泣いていただろう。





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