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144.卒業旅行5
しおりを挟むロウと二人きりにしてもらったので、存分に楽しもうと思う。とはいえ、魔導具に惹かれてフラフラと歩きだそうとするロウを捕まえておかなくては…。
「ロウ、どこ行くの?」
「はっ!ごめん!」
「いいけど、そっちに行きたいなら僕も行くから、ちゃんと言ってね?」
「うん!あそこの店頭に置かれてる魔導具が気になるから見に行っていい?」
「うん、行こう」
清々しい程の魔導具オタクだ…。まぁ…そんなところも可愛いなんて思っているんだから、惚れた方が負けってことだよね。ロウの魔導具に向ける情熱は本物だ。その気持ちを少しは僕に向けてもらいたいと思うけど、今のロウの態度は僕への信頼でもあるんだろうから、嬉しくもあるんだよね。
手を繋いで、ロウの腰を尻尾で捕まえておく。流石にこれで逸れないよね。露店に並べられている魔導具は見たことのあるものが多い。けれど、作り手によって多少の差異が出るのだ。ロウは、様々な作り手によって作られた魔導具を研究して、最も効率の良い製法、最も力の出る製法を見つけようとしている。
興味深げにじっと見つめて、子供のように瞳を輝かせる。楽しそうだなぁロウ。うん、可愛い。
「うーん、これはなかなか…」
「ロウ、これ買う?」
「うん、あとこっちのも買う!」
「ん、じゃあお会計しようね。」
「うん!」
「ふふっ楽しそうで良かった」
「あ!ごめん!リオネル…魔導具に夢中になっちゃって…楽しくなかったよね…」
「そんなことないけど?ロウが楽しそうの見てるだけで嬉しいよ?」
「うぅっ…そうやって僕のこと甘やかすから!!もう!好き!」
「ん、僕も好きだよ。」
様々な魔導具を買い漁って、荷物が増えたので、僕達は一足先に宿に戻らせてもらうことにした。なにより温泉でゆっくりするの楽しみだし。そんな僕の気持ちを知っているロウも温泉に付き合ってくれるらしい。
恥ずかしがりながらも服を脱いだロウは、露天風呂を目にするとパァッと目を輝かせた。恥ずかしさなんかは忘れてしまったらしい。もう少し恋人の前なんだから恥ずかしがって欲しい気もするけど、はしゃいでるのが可愛いからいいか。
「うわぁ!凄いお風呂だね!」
「うん、石造りで良いお風呂だ。」
「怪我しないように気をつけなきゃね!」
「そうだね、転んだら危ないよね。ロウ、身体洗って早く入ろう」
「ふふっリオネルお風呂好きだねぇ」
「ん、そうだね。幼い頃から入ってるからね。ナルアの影響かも」
「そっか、確かにその印象あるかも?」
「でしょ?ほら、体冷える前にお風呂入るよ」
「うん」
手早く身体を洗って、お風呂に浸かる。なんだか不思議な香りがする湯は、程よい温度で、外気に晒されて冷えた身体を芯から温めてくれる。
「ふぅ…」
「ふぁぁ~気持ちいい…」
「うん、落ち着くね…」
「うん…あ…」
ぱしゃぱしゃと水音が聞こえて、閉じていた目を開く。隣りに居たはずのロウが風呂の反対側の端に移動していた。
「ロウ?なんで離れるの?」
「い、いやぁ…恥ずかし…くて…?」
「駄目。逃げないで。デート、でしょう?」
「う、うん…」
「ローウ?」
「はい…」
近づいてきてくれない…焦れて結局僕の方から近づく。狭い湯船の中では逃げるに逃げられないわけで…すぐに捕まえることができた。腕の中に囲って、尻尾で捕まえる。
「つーかまえた」
「…っ…」
「ねぇ、キスしよっか?」
「…お手柔らかに…お願いします」
「んふふ、可愛い」
ぎゅって目を閉じて、僕からのキスを待っている姿が愛らしい。ぷるぷるしてる…緊張してるんだな。僕だってドキドキしてる。けど、恋人の前では格好つけたいもんね。
「ま…まだ…?」
「ん、ごめん。…するよ?」
「ん…」
静かに唇を合わせる。静かな空間に水音だけが響く。ロウの柔らかな唇を味わって、離れる。目を開ければ、顔を真っ赤にして、息を詰めているロウがいる。
「ぷはぁ……心臓…やばい…」
「僕も…」
「…絶対ウソ!!リオネルめちゃくちゃ余裕そうだもん!」
「そんなことないよ…」
もともと近距離だったけれど、そっとロウの顔を僕の胸に押し当てる。跳ねている心臓の音が聞こえるだろう。
「どう?聞こえた?」
「…うん…一緒だ…心臓の音…リオネルもドキドキしてたんだ…」
「うん、そりゃあ好きな子の前では格好つけてるけどね…ふふっもうバレちゃったけど」
「それでも格好いいよ…リオネルは」
「ありがと…嬉しい」
「そ、そろそろ上がろうか…逆上せそう!」
「だね…」
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