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140.卒業旅行1
しおりを挟む待ちに待った卒業旅行の日が目前に迫っている。明日から学校の秋の少し長めの休みで、1週間程の休みだ。俺達はその休みを利用して、3泊4日の予定で王国内にある療養なんかにも使われる温泉地に行くことになっている。
俺達はいつも送り迎えしてくれている御者さんをツテに竜車を2台手配してもらった。4人ずつで乗るんだけど、まだどう分かれるかは決めていないから明日の朝決めることになる。温泉地までは足の早い竜車でも3時間ほどかかる。そのため明日は早朝に集まって出発する。
「準備は終わったのか?ナルア」
「うん!完璧!」
「そうか、では明日も早いようだし、寝るか?」
「うん、テスラさんも早起きしなきゃだもんね」
「そうだな。まぁ邪魔するつもりは無い。」
というのも、俺達の卒業旅行についての話をリオネルに改めて聞いていたらしいテスラさんに、気配を消してついていく、と言われたのだ。外には魔獣がいて危険だからとかそういうことではなくて、どうやらメンバーにヨルクが居るのがお気に召さなかったらしい。
まぁ…俺に告白してきたことも知っている訳で…俺が全く相手にしていないけど、やっぱり泊まりとなると気になるんだろうね。イケメンの嫉妬とか俺得でしかない。格好いいのに!俺テスラさんのこと大好きだってめちゃくちゃアピールしてるのに!可愛いよね!
「じゃあおやすみなさい、テスラさん」
「おやすみナルア」
少し肌寒くなってきた時期ではあるが、テスラさんの温かな体温に包まれて眠りにつく。テスラさんの心臓の鼓動音が聞こえる。規則的に刻まれる音…落ちつく。
……今更だけど俺ってテスラさん無しで眠れるのか…?いや…今は寝よう。眠れなかったらその時はその時!多分テスラさんが来てくれるか、俺がテスラさんの宿にお邪魔すれば済むことだろう。
早朝みんなには家に来てもらうことになっている。テスラさんとリオネルと朝ご飯を食べて、軽く身体を動かした所で、ロウくんがやってきた。
「おはよう!二人とも」
「「おはよう」」
「早かったねロウ」
「うん…えへへ、楽しみで早く来ちゃった…迷惑だったかな…?」
「ううん、大丈夫だよ。そんなに楽しみだったの?可愛いね。」
「ッ///」
おおっ!ロウくん照れてるよ。リオネルもやるねー!みんなを待ちがてら、荷物の最終確認を行っておくことにする。着替えなんかはもちろん、お金もちゃんと入っている事を確認した。ちなみに今回の旅行の代金は皆で冒険者の仕事をこなしたり、作った魔導具を売ったり、回復魔法を使ったりして稼いだものを使っている。
そうこうしているうちに、他のみんなも集まってきた。そして竜車に乗るのだが…
「俺はナルアと一緒がいい。」
「ナルアと乗るのは僕だよ。ね?ナルア」
「あぁ、うんリオネルと乗るよ」
「じゃあそういうことだから。ヨルクは大人しく向こうに乗ってよ。」
「いやだ!」
「ヨルク様…あちらに乗りますよ。ワガママ言わないでください。」
「だって旅行だぞ?エルだって好きな人と乗りたいだろう!?」
「はぁ…本当に仕方がない人ですね…。というか今回は"友達"としての旅行でしょう。楽しい気分を台無しにするような事はしないで頂きたい。」
「うぐぅ……わ…わるかった…」
「そんなに俺らと乗るのは嫌だったかよ。ヘタレ王子」
「う、ウルそんなことはないぞ。」
「ならナルアに迷惑かけてねぇでさっさと乗れ」
「はい…」
相変わらず、エルとウルに弱いなぁヨルクは。彼らの協力もあって無事に2組に別れて、竜車乗り込むことができた。俺、リオネル、ロウくん、メルとウル、リリス、ヨルク、エルの4人ずつで竜車の中で過ごした。
竜車に揺られて、運ばれること3時間程。わいわいと騒ぎながらの移動はとても楽しくてあっという間に温泉地までやってきていた。とりあえず荷物を置くべく、宿へ向かう。ヨルク達が宿を用意してくれただけあって豪華な感じの宿らしい。聞いた話では日本の高級旅館のような雰囲気みたい。
「おお!なんか不思議な匂い!」
「温泉の匂いかな?」
「温泉楽しみだね、リオネル!」
「そうだねナルア…でも…一緒には入れないだろうね…」
「え?なんで…?」
「いや、コイルさんが駄目って言ってたよ?聞いてない?」
「…注意事項いっぱい言われて聞き流していたから…」
「そっか。でも…恋人の裸は他の奴に見せたくないでしょ。僕だって嫌だよ。だから部屋のお風呂に二人で入るつもり。」
ロウくんがリオネルの隣でまた真っ赤になっている。うんうん、可愛いね。日本人感覚で、裸の付き合いも当然と思っていたけど…恋人の裸は見せたくない、というのは分かる。
「そっかぁ。俺もそうするしかないか。」
「色々大変だねぇ。恋人がいるとさ。」
「メルは恋人作んないの?」
「そうだね、もっと生活が安定してからでいいかなって思ってるよ。」
「そっか、メルはいい男だしモテるだろうしね。」
「そうだな、メルは優しいし、気遣いもできるしな。」
「…いきなり褒められると照れるよ…。」
竜車から荷物をおろして、御者さんにお礼を言って宿に入る。少しだけ遅れてやってきたヨルクたちがチェックインをしてくれた。二人部屋が3部屋と、リリスと俺が一人部屋だ。部屋分けはエルとヨルク、ウルとメル、リオネルとロウくんだ。
今日はこれからこの温泉街を散策する予定だ。荷物も置いて身軽になったので、沢山歩き回っても平気だ。いっぱい楽しもう!少し離れたところにテスラさんの気配も感じるので、安心だ。
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