136 / 239
134.小学校最高学年後編9
しおりを挟む魔力総量を測って、それから魔法技術の名目で、何でもいいので一つ自分の使える中で最も高度な魔法を使って見せる。俺の場合は、魔術学園の試験でも使った雷の魔法かな。複合魔法の上に無詠唱でも発動できる。なので評価は高いはず!ケイン先生もちょっとびっくりしてた。やったね!昔よりも無詠唱の時の雷の威力上がってるし。
これで取り敢えず午前中は終了だ。昼になったのでこれからヨルクのところに行かなくちゃね。ロウくんといる所を邪魔するのは悪いんだけど…
「ロウくん、ごめんね。リオネル借りていいかな?」
「あ、うん!今リオネルから聞いたよ。僕もナルアくんの味方だからね!」
「ありがと!じゃあ行こリオネル」
「うん」
優しさが身にしみる…。可愛いなぁロウくん!大好きだー!ギューしようとしたらリオネルに止められちゃったけどさ。まぁそれはいい。それよりも今からのことだ。話って…何なんだろ。人混みの中からヨルクが近づいてくる。王子様だけあって流石の存在感だ。
「ナルア、リオネル、こっちだ。」
「あ、うん」「ああ」
そう言ってすぐに背を向けたヨルクを追うように歩く。誰でもヨルクを一目見れば彼が王子だとわかるようで、人垣が割れていく。その後ろをついていくのは些か恥ずかしいし、目立ちたくはないけれど、この際仕方がない。
辿り着いたのは個室になっていて、防音性に優れたサロンのようなところだ。そこに高価そうな食事が用意されていた。ここにいるのは俺とリオネルとヨルクの三人だけのようだ。
「…座ってくれ。取り敢えず食べよう。」
「うん、いただきます」「…いただきます」
「いただきます」
……………………………
………………
食べ始めて暫し無言の時間が続く。気まずい…。何か話したほうがいいのか?でも、話があるって言ったのはヨルクの方だし…。
「…話って何なの?」
俺がまごついている間にリオネルが代わりに聞いてくれた。神妙な顔をして食べていたヨルクが顔を上げる。
「…ナルアは…学校を卒業した後…どうするつもりだ?」
「え?えっと魔術学園都市に行くよ。魔術学園に入学するんだ。」
魔術学園に行くと言うと、ヨルクはなんだか傷ついたような表情を一瞬見せ、すぐにそれを消し去る。王族として教育されているだけあって表情のコントロールは流石のものだ。国を離れることは伝えていなかったか…。
「…そうか…やはりナルアはこの国を出るのだな…いや、それが聞きたかっただけなんだ…この国を出るなら…たかだかこの国の第三王子の力は及ばないだろう…それならば俺が居なくとも…いいのだな…。」
「そうだな。そもそもこの国にいるとしてもお前が守る必要なんてないがな。僕もいるし両親もいる。そしてナルアの恋人もだ。」
弱音を吐くように言ったヨルクの言葉を切って捨てるように、リオネルが言葉を返す。俺は返す言葉がなかったので、有り難いんだけど流石に辛辣すぎやしないか…?
「そう…だな…ナルアを守れるのは俺だけ、などというのは…俺のただの思い上がりだ…」
「…その…ありがとな…そんなに俺を想ってくれて…答えられはしないけどさ…嬉しかったよ。」
「…ああ…ナルア、いつかお前が不安になることもなく帰ってこられる国にすると約束する。だから…国を出ても…またいつか…会いに来てくれ。そのときは…友達として、飲みにでも行こう。」
「うん…また帰ってくる。…俺意外とこの国、嫌いじゃなかったよ。まぁもちろん嫌な思いをしたことも多かったけどね。」
「ああ…ありがとう…その言葉だけでいい。王や兄の第三王子についてはなんとかしてみせる。」
「気をつけろよ。多少強くなったとは言っても、僕やナルアに勝ったことなんてないんだから。」
「わかっている。ありがとうリオネル。」
今回の話については、ここで区切りをつけて、そこからは和やかな会話を続けた。今まで話さなかった分沢山話すことがあって、お土産のお礼とか、これからヨルクがどうするつもりなのか、とかそんなことを聞いた。
リオネルにも感謝だな。俺は一度仲良くなった相手に強く言うのは苦手だし。本来リオネルもそういったことは苦手なはずだけど、今回は俺のために代わりに言ってくれたのだろう。本当に俺の弟、良い子すぎやしないか?思いやりがある子に育って何よりだね。
ヨルクはエルが迎えに来ていたので、そこで一旦別れる。その際、エルが視線を寄越した。おそらく心配してくれているのだろう。大丈夫、という意味を込めて頷いておいた。軽く頷き返して、エルはヨルクの斜め後ろを歩いていった。
「リオネル、ありがとね。大好き!」
「ん?うん」
「えへへ!リオネルは良い子に育ったな!」
「ナルアも良い子だよ。」
「リオネルの方が良い子だろ?」
「そう?まぁいいけど…早く行かないと遅れるよ」
「あ!ほんとだ!急ぐぞリオネル!」
「うん」
バタバタと廊下を走って、訓練場に急ぐ。先生に見つかったら怒られるだろうけど、時間も割とギリギリで廊下には人影は一つもなかった。気配を消して駆け込む。うん、まだ始まってない。セーフ!
22
お気に入りに追加
3,266
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる