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122.王国(リオネル視点)3
しおりを挟むあれからロウとの時間を取ることもままならないくらいに、冒険者としての心得なんかを今一度母に教えこまれていた。もちろん今までもトータ師匠にも教えてもらっていた。けれど、やはり本格的に冒険者になるとなれば、今までの知識じゃ全然足りない。
今まで知らなかった母の強さについても知ることが出来て、大変だと感じるけれど楽しいとも感じていた。けれどその裏でロウがどんなことを考えているのかなんて想像もしなかった。
1週間ぶりに時間が出来て、ロウの家を訪ねた。もう暗くなっていたにもかかわらず、ロウの部屋には明かりが灯されていない。出掛けているのかとも思ったけれど、ロウは暗くなってから出掛けることはあまり無いようだった。
「ロウ?…ロウ!居ないの?」
火の魔法であたりを照らしながら歩く。そして部屋にある明かりをつけた。少しの眩しさに目を細めながらも、部屋の中を見渡す。そして部屋の隅で蹲るように倒れている彼を発見して駆け寄る。
何があったんだ…。部屋の中は荒らされていないし、誰かになにかをされたという可能性は低そうだ。ロウも怪我をしているわけではなさそうだ。抱き起こせば、ゆっくりとこちらに視線を向けた。そしてガバリと抱き着かれ、勢いそのままに床に倒れ込む。
「わわっ!…ロウ、大丈夫?」
「…リオネル…ほんもの?」
「え?うん本物だよ」
「ん、夢でもいいや…捨てないで…側にいて…大好きだよ」
不安げなロウは、ぎゅうぎゅうと抱き着いてくる。かわいい…じゃなくて!触れてみれば、その違いは明白で、骨が浮くほどに痩せているらしかった。それに顔にも隈が出来ている。
「うんずっと一緒にいる。大丈夫だよ。……それで…何があったの?痩せてるみたいだし…隈も酷い…」
「…それは……面倒くさいって思わない?」
至近距離で見つめ合いながら、聞いてみると伏せるように目を逸らされる。
「ん?」
「だから、僕のことを面倒くさいって思わないって聞いてるの!」
「ふふっ思わない。絶対」
「…わかった…あのね…会いに来てくれないし…なんか他の人達と楽しそうにしてるの見ちゃって…それで…捨てられるのかなってずっと考えちゃって…食べれなくなって、寝れなくなって…何もする気が起きなかった…」
「…なるほど…」
躊躇いがちに、それでも本心だろうことを話してくれている。その言葉をしっかりと受け止める。かなり不安にさせてしまったらしい。僕がロウを捨てるなんてありえない。けれど気持ちは口に出して伝えないと駄目だよね。
「ごめんね。不安にさせて。大好きだよ。だから絶対に離してなんてあげないよ。ロウはずっとずっと僕の側にいてくれないと駄目なんだよ。」
「うん…ねぇリオネル…僕…ずっと側にいていいんだよね?」
「当たり前でしょ。いてくれないと困る…僕ロウが居なかったから、ずっとロウのこと探してまわるよ?」
「でも…会いに来てくれなかった…」
拗ねたように言うロウ…可愛い。好き。久しぶりに会ったロウにキュンキュンが止まらない。なんでこんなにも愛らしいんだろう…。誰かに取られそうでイヤだ。閉じ込めたい。
「それは…ごめんね…。会いに行ったら…ロウの側から離れたくなくなっちゃうから…」
「うぅ…そんなこといって…ずるい…すき…」
首筋に顔を擦り付けてくるロウが天使。僕…駄目かも…。二人きりでいたらマズいかもしれない。こんなにも弱ってるロウに酷いことなんてしたくない。うん、家に連れて帰ろう。
「ロウ大好き…ねぇ、今日は家に来ない?」
「…リオネルの家…?」
「うん、いつでも来ていいよ?」
「ホント?」
「うん、父と母にちゃんと紹介する。」
「わかった…行く」
「ありがと。抱っこして行くから、寝てていいよ。」
「…うん…」
スヤスヤと寝始めたロウを抱き上げて、出来るだけ揺らさないように家に連れ帰る。
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