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100.小学校最高学年編16
しおりを挟むテスラさんの見つけた場所へは冒険者ギルドに寄ってから向かうらしい。ギルドで街の周辺で異変が起こっていないことを確認するんだって。危険な魔物が出没していることもあるからだそうだ。町の外に行くからには、こういった魔物の情報を知らないままでは危険だからね。
町の外行くのなら、自分の命は自分で守らないといけない。自己責任ってやつだ。テスラさんは実力者だし、何かあっても対処できる。けれど弘法も筆の誤まり、なんて諺もある。人生何があるかわからないからね。
「お!今日も依頼か?精が出るなぁ!」
「いや、今日はこの子と出掛ける。外の状況を確認に来た。」
「お?おお!別嬪さんだな!…ちょっと確認するから待ってろ」
「ああ」
冒険者ギルドって年齢制限が設けられているから来たことなかったけど、イメージ通りのところだ。筋骨隆々の男やセクシーな大剣持ちのお姉さん、いかにも魔法使いっぽいローブを着ているひ弱そうな人なんかがグループでいたり、受付を担当する人が何人も並んでいる。ちなみに冒険者登録には、犯罪歴の確認と魔力量、戦闘力の適性検査が行われる。
冒険者ギルドは国際的に独立した機関として成り立っているので、国を問わず様々な場所に拠点が存在している。この拠点もその一つで、この国にある冒険者ギルドとしては最大だ。
「おお!可愛い子がいるじゃねぇか!…む?そんな雑魚そうなやつじゃ無くて俺のとこ来いよ!守ってやるぜ?」
「……」
「…あ?無視かよ。性格は可愛くねぇのな。おいっ!」
…肩を掴まれそうになるのを、気配だけで避ける。絡まれるのってテンプレっぽくて、ちょっと楽しいとか思っちゃったけど、しつこくされるのは嫌だな。それにしても、冒険者の人って見る目ないな。幾ら偽装しているからって、国の守護神とまで謳われたテスラさんの強さがわからないなんて。
「…は?…おい!…くそっ…!」
「…やめておけ。この子はお前よりもよっぽど強い。散々避けられたんだ、わかっただろう?」
「…チッうるせぇ!!こんなにコケにされちゃあ途中でやめられるかよ!表出ろや!」
「…はぁ…」
「…コイルさん、俺やろうか?」
「いや、いい。私が相手してやろう。」
「そう?俺でも十分すぎるくらいだと思うけど。」
「ホントにムカつく奴らだな!!!俺がテメェらより弱いってか?!馬鹿にしやがって!」
周りの注目もバッチリ集めてしまっている。まぁこんなに騒げば当然か。相手の冒険者、筋肉量はそれなりにあるようだ。しかし、戦闘技術は無さそうだ。外見から判断するに牛の獣人のようだ。大きな戦斧を背負っているし、力に自信があるんだろう。
殴りかかってくるけど、当たる気がしない。ウェンさんに鍛えられてきたんだ、こんな単調な攻撃に当たったらウェンさんに死ぬ程扱かれるだろうな。どうするかなー。ギルド内で私闘はマズイと思うんだけど。
「コイルさん、どうするの?」
「…ギルド内での私闘は厳禁だ。ギルド員が介入するまで放っておくか。」
「了解」
俺達の頼みで裏に下がって町の外の情報を調べに行ってくれた職員の人が戻ってきてくれた。そして慌てて、牛の獣人を止めに入る。その瞬間、テスラさんが殺気を牛獣人にぶつける。一瞬で周りが静まり返る。
「おい!ギルド内で何やってんだよ!バカが!」
「うるせぇ!こいつらが悪いんだ!馬鹿にしやがって!」
「バカはお前だ!ギルド内での私闘は御法度だっての。」
おおっ!見事な手際!素早く職員さんが牛獣人を床に拘束する。そしてそのまま拘束具を付ける。テスラさんの殺気に職員さんも一瞬固まっていたが、すぐに動き始めたあたり、強いんだろうな。
「ふぅ…まったく…おっと待たせたな。誰かコイツ奥に連れてっとけ。」
「「はい!」」
「二人とも悪かったな。躾がなってないもんで…」
「いや、大丈夫だ。それで、情報は?」
「ああ、特に問題はなさそうだぜ。」
「それならば良かった。ありがとう」
「あーちょっと待ってもらえるか?一応さっきの揉め事の事情を聞かせてもらえるか?」
「手短に頼む」
「おう、じゃあ簡単に教えてくれ。詳しいことは今度ギルドに来たときに聞かせてもらうからよ」
「この子が絡まれて、触れられそうになったから避けた。相手が逆上して殴りかかってきた。以上だ。」
「…なるほどな。了解したぜ。ありがとよ。もういいぜ。」
「ああ、それでは失礼する。」
これでギルドでの用事は終わりだな。テスラさんの仕事の様子とか見てみたかったけど、今日はデートだもんね。また今度だな。
「お騒がせしてすみませんでした!」
そう言ってペコリと頭を下げてから、ギルドを後にした。
「すげぇ礼儀正しくて可愛い子だったな。」
「だなー…でもありゃあ、相当な実力者だったな…」
「ケミスの攻撃、本気っぽかったけどかすりもしてなかったものね…」
「アレでもそれなりの実力者のはずなんだがな。ケミスの野郎も」
「それに恋人っぽかったよな、隣にいた奴。」
「だな。残念…ってか最近ギルドに来るようになったアイツ、あんな可愛い恋人いたのな。それに…あの殺気ヤバかったな。」
「それな!マジで殺されると思った…」
「直接向けられた訳じゃねぇのにヤバすぎたよな…」
「絶対に怒らせないようにしないとね。」
「「だな…」」
その後、テスラさんを怒らせたらヤバい、という共通認識が冒険者達の中で出来たとか…。
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