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82.小学生編45

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沢山の話をした。約束をした。

長い時間を過ごしたリビングに、外から朝日が差し込んでくる。優しい光が室内を照らす。もう日の出の時間か…。綺麗だ。とても。

「朝日、綺麗ですね。テスラさん」

「そうだな…綺麗だ。こんな景色をナルアと見られてよかった。」

「うん…俺もです」

ずっと触れ合っていたけど、ぎゅってされる。テスラさんの香りがする。俺も抱き返す。撫でられてると眠くなる。寝るのは家に帰ってからでいい。

俺は精神年齢的には、前世含めたら中年だし、今回の別れは仕方がないことだって理解できている。でも全然駄目なんだよね。大人な俺は別れることは事情があって仕方がないことだと理解する。けれど、理解は出来ても辛いものは辛い。

「テスラさんいっぱい連絡します…」

「ああ、私も連絡する。」

「うん、待ってます」

「私も待っている。おそらくあちらへ行ったら何時でも暇だ。何時でも連絡してくれ。」

「テスラさん!俺いつか絶対に遊びに行きますからね!」

「ああ、何時でも歓迎する。」

外からカラカラと竜車の走る音がする。
ついに来てしまった…。レシピ本も渡したし、指輪も渡せた。おそろいの尻尾飾りまで貰って、思い残すことはない。

「来てしまったな…」

そう言うテスラさんの窓の外を見る横顔が寂しげに見える。俺との別れを惜しんでくれているのだろうか…。テスラさんは顔に出さないからな。

「テスラさーん!来たっすよ!」

大きな声で外から呼びかけてくるウェンさんを出迎えて、ドアを開ける。トータさんとフウさんもいる。

「ウェンさん、トータさん、フウさん、おはよ!」

「おはよっすナルアくん」「おう!はよ!」「おはよう」
 
「準備は済んでるっすか?」

「ああ」「うん…」

「んじゃ、行くか?」

「そうだな、早めに出た方がいいだろう。」

ウェンさんが竜車を反対に向ける。家の方向だ。俺も竜車に乗って帰らないと…。トータさんとフウさんとともに立つテスラさん。竜車の側に立っていたけれど、テスラさんに駆け寄る。

そしてしゃがんでくれたテスラさんに抱き着いて、不意打ちのように「大好きです!」と告げて、ほっぺにキスを落として踵を返す。ダッシュで竜車に乗り込む。

「ほぉ…こりゃあなかなかやるな!ナルア」

「これは…可愛いっすね…テスラさん、大丈夫っすか?」

「っ…ああ、平気だ。……ナルア!ありがとう。」

ありがとう、なんて。勝手にキスしちゃったのに。
竜車の窓から顔を出す。そして、約束のことを駄目押しするように伝えておく。そんなことしなくても、テスラさんはちゃんと約束守ってくれるって知ってるけど。

「えへへ…テスラさん!!俺、良い子に待ってます!!だからちゃんと迎えに来てくださいね!」

「ああ、もちろんだ。」

「トータさん、フウさん、テスラさん、また!!」

「おう!またな!」「またね」「ナルア、必ず約束は守る。またな」

こぼれ落ちそうな涙を堪えつつ、無理矢理にでも笑ってみせる。お別れは笑顔がいいもんね!手を振って、テスラさんたちが歩き始めるのを見送る。見えなくなるまで手を振る。度々振り返って手を振り返してくれた。

完全に姿が見えなくなったら、ストンと竜車の椅子に座った。前かがみになって次々と零れ落ちる涙を拭うこともなく、流れるままにしていると、いつの間にか隣りに居たウェンさんにハンカチを渡される。

「よく頑張ったっすね。…帰るっすか。ナルアくん」

「…う…ん…かえる…」

「じゃあ竜車出すっすから」

「うん…ウェンさん…ありが…ヒック…と…」

「いいっすよ…」





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