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76.小学校編39
しおりを挟むナルアが泣いているのなんてはじめて見た…。ぽろぽろとひたすらに涙がナルアの頬を伝っていく。テスラさんが外国に行っちゃうって聞いてからずっと元気はなかったけど…泣いてるのは知らなかった…。泣いているナルアにつられて僕も涙ぐむ。ナルアが悲しそうにしているのは僕も胸がいたくなる。
ナルアは僕にとって大切な兄弟で…ずっと僕の前を行く兄だった。ナルアは僕にこんなにも弱々しいところを見せたことはなかったから、正直びっくりした。まだテスラさんが居るからいいけど…外国に出発しちゃったら…ナルアはきっとまた泣くんだろうな…
「ナルア…僕が…僕が側にいるから…」
「うぅ…りお…ねる……ヒッ……あ…りがと…」
ナルアが泣いている間、ひたすら抱きしめてあげることしかできない。ナルアに強く抱き返される。僕は自分のことで精いっぱいで…全然ナルアのことわかってなかった。いつも僕のことを気にかけて守ってくれていたナルア。こんな時にこそ支えてあげたい。僕にできること…。何か…ないかな…。
泣きつかれたナルアは僕の腕の中で眠ってしまったらしい。するとどこからか出てきたウェンさんが現れる。
「ナルアくん…寝たんすね…。ベッドに運ぶっすね。リオネルくんはどうするっすか?」
少し考えて…僕はゆっくりと首を横に振る。僕も側にいたいけど…でも、今は少しでもテスラさんと居させてあげたほうがいいと思う。
「テスラさんと…いさせてあげて…」
「わかったっす。リオネルくん。じゃあテスラさんのとこ連れてくっす」
「うん…」
ウェンさんの腕の中ですやすやと寝息を立てるナルア。やはり少しだけ目元が赤くなってる。冷やしてあげないと。タオル…いや、テスラさんがいるなら魔法で冷やせるかな。
ナルアの部屋、今はテスラさんとナルアの二人で使っている部屋でテスラさんが所在なさげに待っていた。ウェンさんが来たんだしテスラさんも知っていたんだろう。ナルアが泣いていたのを。
「ナルア…」
小さくつぶやくように…優しい声がナルアを呼んだ。ナルアの姿を見ると少しだけ眉根をしかめる。テスラさんはナルアの赤くなった目元に気付いたんだろう。ウェンさんがナルアをベッドに寝かせると、テスラさんが優しく手で目元を覆う。魔法が発動して…ナルアの目元が赤みがなくなった。よかった…。
「テスラさん…僕…ナルア…泣いてるのはじめて見た…」
「そうだな…私も見たことがない。」
「さみしいって…テスラさんのこと大好きだもんね…」
「ああ、私も寂しいな。」
「僕…ナルアに何してあげれるかな…?」
「そうだな…ただ側にいてやってくれ。ナルアは自分で乗り越えるだろう。」
「うん…じゃあナルアのことよろしくテスラさん。また」
「ああ」
「俺ももう行くっす」
「ああ、ありがとうウェン」
「はいっす」
テスラさんの匂いに安心したらしいナルアが、安らかに眠っているのを見て僕は部屋を出る。ウェンさんも一緒に部屋を出てきた。そのままウェンさんと一緒にリビングに向かう。珍しく、父も母もトータさんもフウさんも、トールさんもティナさんもみんないた。
「お!いいところに来た!リオネル!今ナルアのレシピ見て試しに作ってたんだ!どれも美味いぞ!リオネルも食ってけ!ウェンさんも!」
「…うん…」
「ありがとうございます…でも俺は…いいっす。」
「僕もいいや…」
「お?元気ねえな。リオネル。どうしたってんだ?」
「フウさん…大丈夫…けどあとで訓練付き合って」
「おう…それはいいけどよ」
「どうしたのかな…?リオネル…パパには話せないようなことがあったのかな?」
「…言っていいの…かな?」
「俺は言ってもいいと思うっすけど…」
「ウェンさんも知ってるの?」
「まぁ…知ってるっす。ティナ…ぎゅーしていいっすか?」
「…え…ええ!?…あ…い、いいよ」
「ありがとっす…ふぅ…」
「それで結局何があったのかな?ウェンさん、リオネルくん」
「トールさん…あの…ね。…ナルアが…泣いてたんだ…さみしいって…テスラさんがいなくなっちゃうから」
「そうか…」
「なるほど…ね。ナルアが泣いているのは本当に赤ん坊の頃に見たくらいで殆ど見た覚えがないからね…」
「俺も見たことねぇな。」
「俺は会ったこと自体あんまねぇからな…」
「ぼ…僕も…あんまり知らないけど…ウェンが落ち込むくらいだし…大変なことなんだね…」
「僕…ナルアに、ずっと気にかけてもらってたのに…僕は…全然ナルアのことわかってなかった…ナルアは強いって思ってた…泣いたりしない…さみしいとかそんなことで泣いたりしないって…」
「…それは俺もだな…母親なのに情けないぜ…」
「テーネ…俺も反省しないとね…」
「まぁ…これから変えていくしかねぇだろ。まだナルアもリオネルも7歳だぜ…間に合うだろ。」
「そう…だな。そうだよな、トータくん」
「だね、トータ」
「うん…僕もがんばる…」
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