63 / 239
62.小学校編25
しおりを挟むそれぞれの興味のある分野についても聞かせて貰うことが出来たようで、また訓練の時間がはじまったら、それぞれ別れてまた訓練の時間見学させてもらえるみたいだ。テスラさんがそういうふうに手配してくれたんだって。
王族主催の訓練が始まる時間になって、俺とリオネルはテスラさんの側に立っていた。ウルたちには、魔道士団員の後ろに並んでもらった。ヨルク含む王族の人たちがやってくる。
前にも一度見たことのある兎の王子と、獅子の高貴そうなおじさん、それからヨルクとその隣にヨルクの兄らしき、獅子の特徴を持つ20代前半くらいのイケメンさんが立っていた。
テスラさんを見るなり、兎の王子が駆け寄ってきて、テスラさんの腕を勝手に取って、片腕に抱きついた。
それを見て少しムッとしたのは…きっと、気のせい。
「テスラ!!久しぶり!様子は聞いてたけど、元気そうで安心した!」
「お久しぶりです。第三王子殿下」
「むぅ!!エルミって呼んでよ!!」
「申し訳ございませんが、そのようにお呼びできる立場ではありませんので」
テスラさんはあくまでも業務的に、冷たくも見える態度を貫いている。兎の王子の名前を呼んでほしいという願いをかわそうとしたテスラさんに王様から横やりが入る。
「エルミがいいと言うんだ、呼んであげてくれ」
「………陛下がそうおっしゃるのならば…お言葉に準じましょう。」
「…よんで?」
「エルミ第三王子殿下。これでよろしいですか?」
「うーん…もっと親しげに呼んでほしかったけど…今はいいことにする!テスラ、これからもそう呼んでね」
「…かしこまりました。」
抱きつかれたままのテスラさんは、ずっと真顔だったけれど、機嫌は悪そうだった。兎の王子から抑えることもなく振りまかれるフェロモンに顔を顰める人が多数いるものの、誰も窘めることもないため、王子がそれに気づくこともなさそうだ。
トール先生に教わったけれど、マナーとして、フェロモンは抑えておくべきものだそう。フェロモンを無差別に振りまくことは、性的に奔放で、誰でもどうぞ襲ってください、という状態ということになる。
国際的にも、他国の王族を片っ端から誘惑しようとしているというのは良い事ではない。大事な王族に何かあってはいけないからな…。父である王も注意しないし…大丈夫なのかな…?
大丈夫なのかなーと思いながら、王族のいる方を見ているとヨルクと目が合う。軽く手を振っておいた。それが見えたようで、とても嬉しそうに手を振り返してきた。なんだかんだ可愛いやつだ。
機嫌の悪そうなテスラさんに代わって、ウェンさんが段取りを進めることにしたようだ。王様に挨拶を促している。
「そろそろ陛下の挨拶をしていただいて、訓練を始めたいと思うのですが…」
「そうだな、それでは訓練の開始にあたって挨拶をするか。
皆のもの!!今回は、我らとともに訓練を行っていく。王族として、魔道士団員の実力を把握するとともに、我々自身も魔法に関しての技術を向上したいと考えている。王族だからと萎縮せず、魔法について指導してくれるようお願いする。また、今回参加させてもらうのは、王である私、第一王子、第三王子、第四王子だ。よろしく頼む。」
「これで挨拶は終わったので、参加したい訓練に混ざっていただきます。テスラ団長、いいですか?」
「ああ、第三王子殿下離していただけますか」
「えー!!一緒に行く!いいでしょ?」
「………」
「テスラ団長、一緒に行ってあげてくれ。」
「それは命令ですか?陛下」
「…命令…というほどでもないが…」
「ではお断りさせていただきます。」
「むぅ…そんなにはっきり拒否しなくてもいいじゃん!!」
「離れてください。」
「…わかったよ…」
「…ナルア、リオネル、行こうか」
「はい」「はい…」
自分でも元気のない返事をしてしまったのはわかっていた。なぜこんなにも嫌な気分なのかなんて…そんなことは、前世の記憶がある俺にはわかりきっていたけど…でもこの気持ちを認めてしまえば…このままの関係ではいられなくなる…。
「ナルア?どうかしたのか?」
「ううん!大丈夫!」
「心配だ…抱っこしてあげよう。」
「え?…うん、ありがとうテスラさん」
兎の王子からの視線を感じながらもテスラさんの腕の中で、彼のぬくもりに包まれて安心しきっていた。王子の顔が歪んで…こちらを射殺しそうなほど睨んでいたとしても…何もしてきたりしないと高を括っていたのだ。
46
お気に入りに追加
3,273
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい
戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。
人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください!
チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!!
※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。
番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」
「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
時々おまけを更新しています。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
【完】ラスボス(予定)に転生しましたが、家を出て幸せになります
ナナメ(近況ボードご挨拶)
BL
8歳の頃ここが『光の勇者と救世の御子』の小説、もしくはそれに類似した世界であるという記憶が甦ったウル。
家族に疎まれながら育った自分は囮で偽物の王太子の婚約者である事、同い年の義弟ハガルが本物の婚約者である事、真実を告げられた日に全てを失い絶望して魔王になってしまう事ーーそれを、思い出した。
思い出したからには思いどおりになるものか、そして小説のちょい役である推しの元で幸せになってみせる!と10年かけて下地を築いた卒業パーティーの日ーー
ーーさあ、早く来い!僕の10年の努力の成果よ今ここに!
魔王になりたくないラスボス(予定)と、本来超脇役のおっさんとの物語。
※体調次第で書いておりますのでかなりの鈍足更新になっております。ご了承頂ければ幸いです。
※表紙はAI作成です
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる