上 下
32 / 239

31.幼児期28

しおりを挟む






王城にある訓練場で、父とウェンさんの模擬戦が開始されようとしていた。訓練場の中央に二人がそれぞれの武器を構えて開始の合図を待つ。二人のそれぞれの武器は、父が片手剣で、ウェンさんは両手に真っ黒な短剣。有効とみなされる攻撃をニ本先取で勝ちの試合であるようだ。魔法の仕様も自由。ただし命を脅かすような攻撃は御法度。

「うし!気合い入れてけよトワ!!負けんじゃねぇぞ!」

「はい!」

「ウェン、軽く捻ってやれ。」

「はいッス。スンマセン、団長の命令は絶対なんすよね。アンタが勝つ可能性ないっすわ。」

「…俺も負けるわけにはいかないよ」

「距離取れ。……そこでいい。構え!!!始め!!!」

二人が後ろを向いて歩いて、二人の間に5m程の距離ができる。俺達はテスラさんに耳を塞ぐように言われて、ぱっと耳に手をやった。その直後、ツェルトさんの耳を劈くような声で開始の合図が出された。

二人が動いた!と思ったらもう…姿は見えなかった。ええっ!?全ッ然見えないんだけど!!戦いってこんな感じなの…?異次元すぎる…。異世界って…怖えぇ!!剣のぶつかり合う音と、魔法などの光…それと衝撃から来る風だけしかわからない。

「ふっ…やはりウェンは…強いな。」

「おう…トワは押されっぱなしだな。まだ決定的な一本は取られてねぇが…」

「父…がんばれー!」

隣でリオネルが声を上げる。その瞬間からの父は凄まじかったようだ。俺にはその姿を捉えることができなかったが、どうやら父が押し始めたらしい。

「おおっ!面白くなってきたじゃねぇか!トワが勢いづいたな。」

「それでもウェンが負けることなどない。」

「パパ、ウェンさん、頑張れー!」

「ナルアは両方応援すんのか?」

「うん、だって二人とも好きだもん」

「そうか…私が戦うときは私だけ応援してくれ。」

「ん?うん!テスラさんの応援する!!」

「ああ、必ず応援に報いてみせるよ。ナルア」

「うん!リオネルは?どっち応援する?」

「んー…ツェルトさん!」

「おう!なら俺も頑張らねぇとな!」

「一本!!」

審判をしていた人から一本の判定が出る。短剣が父の首元に突きつけられている。悔しげな父が立ち上がる。頑張れ父!!一本取られたとはいえ、俺にしたら十分過ぎるぐらい強いんだけど。

「ふっ…ウェンが取ったようだな。」

「だなー…でももう一本あるからな。まだ負けじゃねぇぜ?」

「ああ、ウェン、よくやった」

「うぃっす!!…さて、もう一本、サクッといただくッスよ!!」

「仕切り直し!距離を…はい、始め!」

策を講じたらしい父がウェンさんから一本奪い返した。が、三本目はウェンさんが取り、ウェンさんが勝利を収めた。

「おう、トワお疲れさん。」

「ありがとうございます団長…負けた…うぅ…ナルア、リオネル…二人にかっこいいところ見せたかったのにぃ」

「カッコ良かったよ!」「うん!」

「ホント!?良かったぁ!!でも、もっと強くなるよ。次は勝ってみせるからな!」

「お疲れ様!」「おつかれさまー!父」

「ウェンよくやった。」

「はいッス!!流石に一本取られたっすけどね。」

「勝ったんだ誇ればいい。が、最近鍛錬を怠ったな。」

「……はい…」

「まぁいい。私が直々に稽古をつけてやる。」

「ヒィッ!マジっすか……はぁ…」

「ウェンさんもカッコ良かったー!!」「うんうん!」

「ホントッスか!嬉しいっす!」

「んじゃ次の試合行くぞー!」









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】もふもふ獣人転生

  *  
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。 ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。 本編完結しました! おまけをちょこちょこ更新しています。 第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!

竜王陛下、番う相手、間違えてますよ

てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。 『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ 姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。 俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!?   王道ストーリー。竜王×凡人。 20230805 完結しましたので全て公開していきます。

処理中です...