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28.幼児期25
しおりを挟む食堂はとても広く、俺の印象で言うと大学の広い講義室2個分くらい?騎士や文官、魔法使いが入り乱れて食事をしているので、慌ただしく騒がしい。が、こんなふうな騒がしい感じはすごく久しぶりだし、嫌いじゃない。
座る場所は、魔道士の人が譲ってくれた。ちょうど食べ終わったところだったようだ。メニューも肉、魚それぞれで5種類ずつあって、食べている人の皿を見るとかなり大きいようだ。俺には食べ切れない量だな。リオネルでギリギリか?でも美味しそう!
「二人ともどれにするッスか?俺が頼んでくるッスから。」
「えっと…この赤いお魚にする!量は…5分の1くらい?テスラさん」
「いつも食べている量ならそれくらいだな。」
「ええっ!!そんな量で足りるッスか?」
「うん!お腹いっぱいになるよ!」
「それならいいんすけど…じゃあリオネルくんはどうするっすか?」
ずっと隣でウンウン言いながら悩んでいるリオネル。決められないようだ。
「リオネル、決めれないのならテスラさんに選んでもらったら?」
「そうする…テスラさん、おいしいやつ!」
「そうだな、普段リオネルが食べているのは、ボア系の肉だが、他のものにするか?」
「うん!」
「わかった、では柔らかめのコレだな。チキンの肉だ。美味いぞ。」
「うん!ありがとうテスラさん!」
「私はボアステーキを。これで頼む」
「了解っす!」
ウェンさんが元気よく返事をして、注文に向かった。人混みの中ですごいスピードだ。動体視力とか鍛えれば俺も出来るかな?いや、出来なくても支障はないんだけど…。でもなんとなくやってみたいじゃんね!
ウェンさんを目で追うのに夢中で、人垣からぬんっと大きな人影が出てきたことに気づいていなかった。声がして、そちらを見ると2m超えの巨体がそこにあった。テスラさんのお知り合いのようだ。
「ざわついてると思ったらお前かテスラ!珍しいじゃねぇか!ここで食ってくのか?」
「ああ、だからどこかへ行け。ツェルト」
「相変わらず釣れねぇなぁ、ともかく俺もこの席に座らせてもらうぜ!」
手に持っていた肉山盛りの皿をドンッと机においてテスラさんの隣に座った。俺達は正面から向き合って、とても大きなその人にビビって尻尾が縮こまる。
「お?子供がいんじゃねぇか?小さくて気づかなかったぜ!すまねぇな。俺は王国騎士団長をやってるツェルトだ、よろしくな!」
始めはびびったものの、笑うと暖かな雰囲気になるその人に、少し安心した。熊さんみたいだな。耳も丸っこいし。身体も大柄で、髪も黒っぽい茶色だし。
「ナルア、1歳です!テスラさんの甥っ子です!」
「リオネル、いっさい!テスラさんのおいこ?です!」
「おうおう!元気でいいじゃねぇか!ナルアとリオネルだな!覚えたぜ!それにしてもお前が子供連れてるなんてな!皆驚いてんぜ?」
「知ったことか。私はこの子達に魔法を教えるために連れてきているだけだ。」
「マジか!!教えを請う奴らが跡を絶たないくせに、誰にも教えたことなんかねぇ、お前が教えるのか!そりゃまた、僻むやつが出そうだなぁ?」
「ウェンを護衛に付けた。何も問題はないだろう。アイツは優秀だからな。」
「ふーん、面白いじゃねぇか。気分屋のウェンが大人しく護衛やってるなんてよぉ!俺も剣教えてやろうか?」
「やめろ、その子達の剣はトータがみるようだからな。」
「トータってあれか?Sランクに最も近いって言われてる剣神か?」
「ああ、そうだ。」
「そりゃあまた…豪華なメンツだな。ま、なら仕方ねえ。偶に手合わせでもしようや!」
「よろしくお願いします!」
「おねがいします!!」
そんな会話をしながら待っていると、ウェンさんが器用に全員分の食事を持って戻ってくる。尻尾にもご飯載せてる。器用すぎる。
「ご飯っすよー!ってなんで騎士団長までいるんすか!」
「おう、さっき合流したぜ」
「軽く言わないでほしいッス。びっくりしたっすから!」
「ウェン!ごはん!!」
「ああ、わかったッスから!…リオネルくんのはこれッスね、んでナルアくんがこれで、テスラ団長がこれッスね!」
「ありがとー!」「ありがとうございます!」
「ありがとう」
「じゃあ揃ったことだし食うか!いただきます!」
「「「「いただきます!」」」」
周りの騎士や魔道士たちはその席に釘付けだった。なにせ、団長二人とテスラの懐刀と言われるウェンまでもが揃っているのだ。そこに加えて何故か子供が紛れ込んでいる。これを混沌と言わずとして何というのか。
「おい、あの席どうなってんだよ…やばくね?」
「え?何が?」
「お前目悪いっけ?」
「うん、なんも見えねぇ。遠すぎ」
「騎士団長と魔道士団長と魔道士団長の懐刀ウェンさんが揃ってる。」
「マジか!!すげぇ席だな!!」
「そこに子供…多分人化したてだな、が二人混じってる」
「まじか…すげぇ席だな……」
「おう、でもなんか皆楽しげだわ…和気あいあいとしてる。」
「なんつーか、まぁ本人たちが楽しそうならいいんだろ…傍から見たらなかなかの混沌だけどな…」
「それにな、テスラ団長が少しだけど笑ってる…」
「なんだと!?あの絶対零度なテスラ団長が!!おい!お前の視力寄越せ!!見てぇ!!」
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