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しおりを挟む俺達が何度かデートに出かけて公爵領の街を満喫した頃、公爵様から呼び出しを受けた。公爵様はいつも通りの雰囲気ではあったが、どうやら困っているらしい。
「ああ、来てくれて助かったよ。」
「今度はなんだよ?」
「それがね…公爵領の街を結ぶ街道が通行出来なくなっていてね…」
「はぁ…それで?」
「道に陣取っているのは機動力のある狼型の魔物らしくてね、取り敢えず指導もしてもらったし騎士団を向かわせたんだが…」
「駄目だったのか…」
「うん、そうなんだよ。…まぁ、そういうわけで魔物討伐を請け負ってくれないかな…?」
「それは冒険者としての俺達に指名依頼を頼むってことか?」
「ああ、そのつもりだよ。」
「…引き受けるには情報が足りなすぎる。危機管理が出来ない奴は冒険者では生き残れないんでね。」
「…ミシェル」
「はい、取り敢えず入っている情報としては、黒の大きな個体を中心とした群れのようです。群れの狼は灰色なことが確認出来ていますので、おそらくウルフでしょう。群れの規模は10体程度と見られています。」
「それで…その黒の個体の情報は?」
「…殆どありません。騎士団もウルフに撃退されたようです。」
騎士団長とかは出来そうだったが、弱い味方を引き連れて行くと守らないといけないからな。そこを突かれたんだな。ウルフを統率しているという黒の個体は相当頭が良いらしい。
「はぁ…それじゃあ情報は殆ど無いということか…」
「冒険者に調査依頼だしなよ。」
「そうしたいのですが…騎士団の敗走が響いているらしく引き受けてくれる者もいない状況でして…」
「家の領は魔物もそう強くないし、強い冒険者が留まってくれるような場所でも無いんだよ…。それで困ってしまってね。」
「どうする?コクヨウ」
「んー…そろそろこの街も見終わったし、次の街に行くついでに討伐してもいいよ。」
「もう行ってしまうのかい?」
「まぁ、そうだな。そろそろ移動するか。」
「うん、ここに長く留まる理由もないからね。」
「そうか…残念だな。でも引き受けてくれるんだね。ありがとう。」
「おう」「ん」
街道に出没するなら丁度いいよな。あまり長く留まっていると公爵様に丸め込まれそうだしな。助けた獣人たちの問題解決の目処もついたようだし。獣人地域についての不安は残るが、それはどこに居ても同じことだろう。コクヨウのことは俺が守る。
「それでは何か必要なものがあればお申し付け下さい。」
「おう」
「ミシェル、彼らへの指名依頼を手配してくれ。」
「畏まりました。」
次の目的地は美しい湖を有する街だ。塞がれた街道から繋がっているらしいので、そこにしようということになった。その前に魔物討伐をしなくてはならない訳だが…。取り敢えずギルドで情報収集してみるか。
「コクヨウ、ギルド行くぞ」
「うん、装備は?」
「んー…付けてくか。」
冒険者は装備なんかを見て強さを判断したりするからな。装備をつけていた方がいいだろう。
コクヨウのお揃いの装備を見せ付けて、周りを牽制しようという思惑には露ほども気付かないタカミだった。
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