黒豹拾いました

おーか

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コクヨウの頑張りで、たった一回の遠征で今回の騎士団の指導は終わりでいいらしい。俺何もしてないけどいいのか?まぁ一番偉い公爵様が良いって言うんだから大丈夫なんだろう。

獣人たちの隷属魔法の解読も進んでいるらしく、一月もあれば魔法の無効化が出来るだろうと報告をもらっている。もう俺の手を離れたことだし、勝手にやってくれていいんだがな。獣人達は今は公爵様の計らいで、問題なく生活できているそうだ。

暇になった俺達は、公爵領の都市部へ繰り出していた。公爵達へは公爵領の見学と言っているが、ただのデートだ。

まぁ、それは公爵様やミシェルさんもわかっている事だろう。何はともあれ公爵家の許可も出た。案内をつけようかと聞かれたが、断らせて貰った。二人きりのほうが気楽だし、何よりデートだからな。

「わぁ…格好いい人…」「声かけようかな!」「イケメン!」

そんな声が聞こえてくるが、騒がれている当の本人であるコクヨウは俺のことしか見えていないらしい。相変わらずモテやがるな、全く。まぁモテるからと言って浮気の心配は皆無すぎて嫉妬する気にもならない訳だが。

今もご機嫌に尻尾を揺らし、俺の腕に擦りついている。俺よりデカいくせに可愛いんだよな、こいつ。

「んふふ!ねぇねぇ、どうする?タカミは何見たい?」

「んー、そうだな、取り敢えず飯。」

「ふふふ!了解、美味しそうなところ探すね。」

「おう」

あ…俺達の前に女の子が立ち塞がった。

「あ、あの!これからご飯なら…その…ご、御一緒しても良いですか?」

「……」

コクヨウは完全に無視して、俺の手を引く。尻尾も俺の腰にガッチリ回ってる。こりゃあ相当怒ってるかもな…。女の子が引いてくれりゃいいんだが、見た感じ諦めてなさそうだし無理そうだな。

「あの!貴方に話しかけてるんですけど!!ねぇ!!」

「触るんじゃねぇよ。」

コクヨウの服を掴もうとしたのを威圧して止める。ピタリと動きを止めたかと思えばブルブルと震えてその場に崩れ落ちる。流石に腕無くなったら可哀想だもんな。俺が止めてなきゃ、コクヨウはそれくらいやる。基本的に俺以外には本当に冷酷な対応をとるからな。まぁ、これくらいで済んで良かったと思ってほしいところだ。

「っ!///」

「あ?」

「……」

「ふっ照れてんのか?コクヨウ、可愛いなぁ。」

「だって…僕を守ってくれるタカミ格好良かったんだもん。」

「そうかよ///」

真っ直ぐに褒められると俺まで照れるだろうが。俺達はお互い顔を熱くしながらも、その場を後にした。




道に座り込んで、取り残されていた女は二人が悠々と立ち去るのを見送って暫くしてようやく身体の自由を取り戻した。そしてポツリと愚痴を溢す。

「…なんなのよ…」

「はははっ!嬢ちゃんは知らなかったようだがな、獣人は一途なんだぜ?良かったな、五体満足でいられて。」

まさか独り言に答えが返ってくるとは思わなかったけれど、傍らに立っていたのはあの一連の騒動を見ていた男だった。それにしても訳のわからないことを言っている。

「どういう意味よ…」

「そのままの意味だ。獣人の隣の男が止めてくれてなきゃ、お前、殺されててもおかしくなかったぜ?あの獣人の男、相当の腕前だ。」

「え?…ほん…きで…言ってるの?冗談でしょう?こんな町中でそんなことして許される訳ない…じゃない…」

「それはどうだろうな?正当防衛、とかなんとでもなるだろうよ。先に手を出したのは嬢ちゃんの方なんだからな。」

「…わ、私は…なにも…」

「ははは!ま、ナンパするにしても相手は選べや。助かったこと、あの男に感謝した方がいいぜ。それを教えといてやろうと思って待ってただけだから、じゃあな。」

男は嘘を言っているようには思えなかった…。本当に命の危機だったの…?ようやく実感が湧いてきて、収まったはずの震えが先程よりも大きくなって戻ってくる。もう…もう男なんて懲り懲りよ!!

その後女は可愛らしい女の子と幸せになったとか。




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