黒豹拾いました

おーか

文字の大きさ
上 下
113 / 130

113

しおりを挟む





はぁ…やっとついたな。ここがヘーゲルか。性欲の有り余ったコクヨウを抑えながら、みんなを引き連れてやっとここまで来れた。長い道のりだったな。ずっと檻に入れたまま連れてきた奴隷商人共をようやく引き渡せるぜ。それにしても公爵家執事がお出迎えしてくれるとは…。俺達も偉くなったもんだな?

「ミシェルさん…」

「お待ちしておりました。タカミ様、コクヨウ様」

「おう…取り敢えず、こいつ等任せたからよ。奴隷商人は檻の中だ。」

ミシェルさんの後ろにいた騎士たちが檻の中に居る奴らを確かめて、連行していく。やっと解放された…。

「かしこまりましました。大変助かります。ありがとうございます。お二人用のお部屋はご用意させていただいております。こちらへ」

「おう」

「獣人の方たちはメイドについて行ってください。」

「「おう」」

そこでようやく肩の荷が下りた気分になる。本当に疲れた…。普段のコクヨウと二人の気楽な旅とは随分と違ったな。人の目も気にしねぇとだし、魔物への警戒も女子供がいるからちゃんとしねぇとだし。

「タカミ、大丈夫?」

「おう。疲れただけだ…」

「そっか。じゃあいっぱい休んでいいからね。」

「おう。」

「お部屋はこちらになります。お二人で一部屋にさせて頂きましたが、よろしかったでしょうか?必要ならもう一部屋ご用意出来ますが…」

「いえいえ!良いです!」

「まぁコクヨウと離れるのも…な。ありがとなミシェルさん」

「ええ、休まれるのですよね?」

「ああ、そうしようと思う。」

「それではまたご夕食の時に伺います。」

「おう」

いつも一緒に寝ているからな。今更別の部屋っていうのも落ち着かない。もう俺の安眠にコクヨウは欠かせない。本当なら風呂に入りたいが、もう眠りたい。クリーンで我慢しよう。

「タカミ、おやすみ」

「おやすみコクヨウ」






彼らの到着が遅れたのは誤算だったけど、まさか奴隷商人までの捕まえて、その上獣人まで引き連れて来てくれるとはね。こちらとしては有り難いことばかりだ。証人も複数いる上に現行犯で捕まえてくれてるわけだからね。

これで隣の領主は確実に違法奴隷に関わってるんだけど、その先の相手は難しいところだね。

「ミシェル、どうにかして情報を吐き出させろ。獣人からも出来るだけ話を聞いてくれ。獣人達の扱いは客人としてで良い。」

「かしこまりましました。」

王とも連絡を取り合っているけれど、王も腹に据えかねているようだったし、協力は得られるだろう。そろそろ屑は潰しておかないとと思っていたんだ。今回のはいいきっかけになるよ。

娘が暮らす未来は、明るい方がいいからね。

それはそれとして、調べた情報を彼らに伝えなくてはならないね。現在、黒豹含む、豹の一族がどうなっているのか、伝えるのは忍びない。ほぼ壊滅状態…だなんて、伝えたくなかったなぁ。

それでも彼らが求めた真実を伝えよう。それがいかに残酷であっても。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》

クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。 そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。 アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。 その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。 サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。 一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。 R18は多分なるからつけました。 2020年10月18日、題名を変更しました。 『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。 前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

浮気三昧の屑彼氏を捨てて後宮に入り、はや1ヶ月が経ちました

Q.➽
BL
浮気性の恋人(ベータ)の度重なる裏切りに愛想を尽かして別れを告げ、彼の手の届かない場所で就職したオメガのユウリン。 しかしそこは、この国の皇帝の後宮だった。 後宮は高給、などと呑気に3食昼寝付き+珍しいオヤツ付きという、楽しくダラケた日々を送るユウリンだったが…。 ◆ユウリン(夕凛)・男性オメガ 20歳 長めの黒髪 金茶の瞳 東洋系の美形 容姿は結構いい線いってる自覚あり ◆エリアス ・ユウリンの元彼・男性ベータ 22歳 赤っぽい金髪に緑の瞳 典型的イケメン 女好き ユウリンの熱心さとオメガへの物珍しさで付き合った。惚れた方が負けなんだから俺が何しても許されるだろ、と本気で思っている ※異世界ですがナーロッパではありません。 ※この作品は『爺ちゃん陛下の23番目の側室になった俺の話』のスピンオフです。 ですが、時代はもう少し後になります。

【完結】トルーマン男爵家の四兄弟

谷絵 ちぐり
BL
コラソン王国屈指の貧乏男爵家四兄弟のお話。 全四話+後日談 登場人物全てハッピーエンド保証。

竜王妃は家出中につき

ゴルゴンゾーラ安井
BL
竜人の国、アルディオンの王ジークハルトの后リディエールは、か弱い人族として生まれながら王の唯一の番として150年竜王妃としての努めを果たしてきた。 2人の息子も王子として立派に育てたし、娘も3人嫁がせた。 これからは夫婦水入らずの生活も視野に隠居を考えていたリディエールだったが、ジークハルトに浮気疑惑が持ち上がる。 帰れる実家は既にない。 ならば、選択肢は一つ。 家出させていただきます! 元冒険者のリディが王宮を飛び出して好き勝手大暴れします。 本編完結しました。

処理中です...