黒豹拾いました

おーか

文字の大きさ
上 下
105 / 130

105

しおりを挟む






街を歩いていて段々と海へと近付いてきた。そのあたりで見つけた雰囲気のいい店へ入った。海を見ながらの食事ができて、新鮮な海鮮料理がオススメのようだ。海の近くでしか食べられない生魚だ。

「コクヨウ、お前はどうする?俺はこの刺身定食ってのに決めた。」

「うーん、じゃあ僕は海鮮丼にしようかな。」

「それも美味そうだな。」

「うん、タカミにも分けてあげるね。」

「おう、ありがとな。」

食事が運ばれてきて食べ始めたが、あまり食べたことの無いものではあったが、とても美味い。口の中で蕩けるような脂身が醤油との相性抜群で最高だ。

「ふふっそんなに美味しい?」

「おう…お前も食うか?」

「んふふ、食べる。食べさせて?あー…」

口を開けてこちらを見つめてくるコクヨウ。俺が食べさせるのを待っているらしい。こういうときのコクヨウは、折れることを知らない。俺が折れる方が早いな。

「…仕方ねぇな。ほら」

「モグモグ…うん、美味しい!じゃあお返し、あーん」

「っ…俺もかよ。はぁ…ん!うまっ!」

お返しだと言って、俺もコクヨウの飯を口に運ばれる。口に入れればすぐにわかる程に旨かった。海老がいいな。プリプリとした歯ごたえと溢れる甘味。白米との相性も最高だ。はぁ…こんなに上手い飯も温泉もあるのなら暫くここに留まるのも悪くないかもな。

「はぁ…腹いっぱい。ごちそうさん。」

「ごちそうさまです。タカミ、もう宿があるあたりに行く?」

「おう、そうだな。一旦休もう。」

「そうだね。」

海の見える宿で、露天風呂があるところを選んだ。値段はそこそこしたが、その価値のある場所だろうな。夕日が沈み行く海面が赤く染まりキラキラと煌めく。素晴らしい景色だ。

「凄い景色だね。」

「だな。よし!風呂入るか。」

「うん」

「こんな時間から風呂とか贅沢で良いよな。」

「ふふっうん。ねぇタカミ、触ってもいい?」

「…風呂入るって言ってんだが?」

「うん、でも好きな人の裸を前にして触らずにはいられないよ、僕。」

「そう…だな。性的な事は…また夜にな。」

「わかった…我慢する…。けど、夜は覚悟しておいてね?」

「おう…」

こうして夜の約束を引き換えに素晴らしい景色を見ながらの温泉を楽しんだ。コクヨウもしっかり我慢しているらしく、俺の手をとるだけだった。しかしながら、全くこちらを見ない。

「コクヨウ、どうしてそんな顔背けてんだ?」

「…タカミの意地悪…わかってて聞いてるんでしょ…」

「ふっ…良い子に我慢できて偉いな。ありがとな、俺のために我慢してくれて。」

「…うん…その代わり夜は…分かってるよね?」

「おう。期待しとけ?」

耳元で囁くように言ってやれば肩をビクリと跳ねさせる。全く俺の男は素直で可愛らしいことだな?

「…ああもう!!ずるい!!タカミのバカ!!好き!!」

「ふははっ!俺も好きだぜ。コクヨウ」

「もー!!襲うよ…?」

「駄目だ約束したろ?」

「…うん…」

また俺から目を逸らしたコクヨウは次は尻尾を俺の腰に巻き付ける。触れたいのをどうにか耐えているらしい。夜は可愛がってやらないとな。







    
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

【完結】黒兎は、狼くんから逃げられない。

N2O
BL
狼の獣人(異世界転移者)×兎の獣人(童顔の魔法士団団長) お互いのことが出会ってすぐ大好きになっちゃう話。 待てが出来ない狼くんです。 ※独自設定、ご都合主義です ※予告なくいちゃいちゃシーン入ります 主人公イラストを『しき』様(https://twitter.com/a20wa2fu12ji)に描いていただき、表紙にさせていただきました。 美しい・・・!

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

ぼくは男なのにイケメンの獣人から愛されてヤバい!!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

処理中です...