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しおりを挟む久々に死にかけたな。それにしても過去一痛かった気がする…。あっという間にコクヨウが治してくれたから、もう治ってる。回復魔法も上手くなったよな、本当に。
俺はもう大丈夫だが、コクヨウは大丈夫じゃなさそうだな…。それでも結界だけはきちんと張ってるけど。俺に抱き着いて、すげぇ泣いてる。見たところ怪我とかは無さそうだな。
「コクヨウ、ありがとな。もう大丈夫だから、な?」
「たがみぃ…ごめん…ごめんね…僕が…倒したと思って油断してたから…怪我させて…」
「ん、今度から気を付けような。よしよーし…良い子コクヨウ。」
「……グスッ…」
「コクヨウは怪我してないか?」
「うん…だい…じょぶ…タカミが助けてくれたから…」
「ん…それなら良かった。」
んー…これは泣き止みそうにねぇわ。取り敢えず落ち着くまで待つしかねぇな。今はただ抱き締めて宥めてやろう。ここまで取り乱しているのは、俺がSランクパーティーにコクヨウを預けたとき以来だな。
「……タカミ…ありがと…もう大丈夫…」
「そうか?」
「うん…ごめんね…情けないところ見せて…」
「ふっ…そんなの今更だろ。ずっと一緒に居るんだからな。」
「うぅ…でもタカミには僕の格好良いところだけ見て欲しいの!!」
大丈夫だというコクヨウは俺から離れて隣に座る。あー、目赤くなってんな。後で冷したほうが良さそうだ。
それにしても格好良いところだけ、な。それは難しいだろうな。四六時中一緒に居るんだ。どんな人間でもずっと完璧では居られねぇだろ。それに…泣いてるところとか、凹んでるのとか見たことあるの俺だけだろ。俺だけに見せる顔だって思うとなんか良いよな。結構好きだ。
これって独占欲?みたいなものなんだろうな。
「はははっ!そうかよ。でもそれは無理だろ。俺の前で自分を偽らなくていい。」
「むぅ…笑い事じゃないのに…でも…そうだね…タカミの前では…素の自分で居られる。」
「おう。それでいい。」
「タカミ…ごめんね…僕が魔物倒したところ見せたら、格好良いって思ってくれるかな…とか考えてたから…危ない目に合わせちゃって…。助けてくれてありがとう。」
「ん、どういたしまして。お前、そんなこと考えたのか?」
「…うん…だってタカミに好きになって欲しかったから…」
顔を逸して情けなく眉を下げて、悲しげにそう言うコクヨウ。俺から好きだって言ってやったこと…殆ど無かったな。今まで悲しそうな顔してたの、これが原因か。だから俺にはなにも言わなかったんだな。
ちゃんと言葉にしないと伝わらない、よな。これからはちゃんと伝えてやろう。こういう甘ったるい言葉を言うのは苦手なんだが、コクヨウがそれで喜ぶなら悪くない。
「ふっお前はいつも格好良いだろ。それに、俺はコクヨウのこと、好きだぞ。」
「…え?」
「ん?聞こえなかったか?好きだぞコクヨウ。」
「ほんとに…?」
「あ?嘘なんか言わねぇ。一応前にも言ったよな?好きだぞって」
「だって家族としてだと思ってて…その…恋してるってことでいいんだよね…?」
「はははっ!可愛い言い方すんな?そうだ。性的な対象として、お前が好きだ。」
ハッキリと言ってやれば、やっと笑ったコクヨウの大きな瞳からぽろぽろ涙がこぼれ落ちる。そっと指で拭ってみたが、溢れる涙は止まりそうにない。
「……うれしい……グスッ」
「また泣いてんのか。今日はよく泣くなぁ?」
「うぅ…タカミ…」
「はいはい。」
頭の後ろに手を回して抱き寄せる。俺の肩にグリグリ頭を押し付けながら泣いているコクヨウの尻尾がしっかりと俺に巻き付いてきて愛らしい。こんなに泣くほど俺のこと考えてくれてたんだな…。
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