78 / 130
78
しおりを挟む一月かけて歩く訳だが、1週間も歩き続ければ流石に疲れが溜まってきた。昼間と夜間の温度差に加え、やはり足をとられる砂の地面は案外厄介だな。普通に歩くよりも体力を消耗する。魔物が出るのは結界でどうにかなるが、過酷な環境ゆえ休めていない。
「今日は移動せずに休もう。そろそろオアシスがあると思ってたけど、そこに辿り着く前に体調悪くなりそうだからね。」
「だな…流石に慣れないことしてるから疲れたわ。」
「結界張ってるから休んでいいよタカミ。」
「ん、ありがとな。でも、お前のほうが疲れてんだろコクヨウ。」
「ふふっ僕は大丈夫だよ。タカミ、膝使う?」
「ん、いいのか…じゃあ借りる。重くて邪魔になったら退けていいからな。」
「ふふっそんなことしないよ。」
若干の重だるさの残る足を投げ出して、コクヨウの膝に頭を乗せる。仰向けに寝転がって、コクヨウを見上げる形になる。こんな角度で見上げるのって初めてだな。下から見た顔って不細工になるもんじゃねぇの?普通に格好良いんだが。
筋肉質ながら、程よい弾力を持った太ももは暖かくて、落ち着く。コクヨウが優しく見下ろしてくる。そして優しい手付きで撫でられる。撫でられるのも悪くないな…。コクヨウはいつもこんな気分なのか。
「ん、寝れそうなら寝ていいよ。」
「おう…おやすみ…」
「おやすみ…タカミ」
コクヨウの手で目元を隠され、暗くなったことで眠気がやってきた。休息を求めていたらしい俺の身体はそのまま深い眠りにつく。
「寝た?…良かった…夜もあんまり眠れて無かったみたいだし。」
僕の膝の上で穏やかな顔で眠りについているタカミ。その顔には疲れからかクマが見える。取り敢えずこのまま出来るだけ寝かせてあげよう。まだ四分の一だからね。先は長い。しっかりと体調整えながら進まないと危ない。
急ぐ旅路でもないしね。それにしても僕にこんなに気を許しちゃってさ。タカミって本当に無防備だよね。自分を襲う男を前にしてすやすや寝てるなんて。
はぁぁ…タカミに好かれる為には何が必要なのかな。そもそもタカミがどんな人が好きなのかも知らないし…。情報が足りない。でも僕が束縛しても嫌がらないんだよね。だからといって僕の好きって言葉には答えてくれないし。
このままの関係でいるしかないのかな。それともまだ僕の愛情が足りないのかな。離れるのは許せないし、監禁することも考えたけど…それでタカミに愛されることが出来るとも思えない。まだもう少し頑張ってみよう。
魔術都市に行けば何か解決出来るような画期的な発明品とかあるかもだし。
僕の仄暗い愛し方が間違っているのだとしても、僕はこういう愛し方しか出来ないからね。僕が必ず守るから…だから僕の腕の中に居てね、タカミ。目元を覆っている手を少しずらし、そっと額にキスを落とす。
「愛してるよ…タカミ…タカミが僕を愛してくれなくても…僕は…ずっとタカミが好きだよ。」
膝の上の温かな重みに癒やされながら、自分も身体を休めるために目を閉じる。
12
お気に入りに追加
1,228
あなたにおすすめの小説
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》
クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。
そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。
アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。
その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。
サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。
一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。
R18は多分なるからつけました。
2020年10月18日、題名を変更しました。
『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。
前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる