黒豹拾いました

おーか

文字の大きさ
上 下
72 / 130

72

しおりを挟む






宿で店主と話していたのをしっかり聞かれていたらしく、先に食べ終えて出ていった冒険者達によって、俺達が恋人同士だという事はあっという間に街中に広まっていた。そして行く先行く先で揶揄われることになった。

恥ずかしいが、仕方がない事だな。田舎では色恋とか、そういうことくらいしか話のネタが無いからな。まぁ一種の娯楽ということだ。そういった話はみんな大好きだからな。…これから行く予定の肉屋、八百屋、魚屋でも勿論もう既に聞いているだろうなぁ…。

「…コクヨウ、買い物やっぱりお前だけで行かないか?」

「え?んー…タカミと離れたくないから却下で。行くよー」

「…わかった…」

コクヨウが駄目だというのなら仕方が無い。まぁ、今後もどのみち顔を合わせるのなら早めに会ってしまった方がいい。コクヨウもいてくれるしな。

それにしても賑やかだな。そろそろ収穫祭の時期だからか、みんな浮かれているんだな。祭りのための準備も進んでるみたいで、所々飾りつけされている。見かけない人もいるから祭り目当てに他から人が流れ込んでいるらしいな。

周りを見ながら歩いていると、コクヨウがサクくんを見つけたらしい。流石目がいいな。

「あ!サク!!」

「っ!?コクヨウじゃねぇか!!遅い!もっと早く顔出せよ!」

「あはは!ごめんごめん。荷物になるし買い物は最後が良かったから。それで、ヒロとレオは?」

「多分店で仕事してるわ。もう少しで時間取れるからちょい待ってて!」

「了解。取り敢えず買い物してる。行こタカミ」

「おう…」

「あ…そういえば、タカミに余計なこと言ったみたいだね?」

ヒッ……こっわ…怖いわコクヨウ!!こんな街中で威圧するとか馬鹿が…。袖を引いて咎めると直ぐに圧は引っ込んだので、一瞬のことではあったが周りが静寂に包まれた。

「へ?あ…そ、それは…だな…」

「ふふっいいよ、今回は許してあげる。僕のこと思ってくれたみたいだし。けど、次は無いからね。タカミ傷付けるような事言ったら許さないよ。」

「お、おう…その…タカミさん…ごめんなさい…でした…」

サクくん震えて可哀想に…何も悪いことしてないのにな。真正面からSランク冒険者の威圧受けたらそりゃそうなるよな。本気の威圧ではないが、友達に威圧なんてされる事なんて無いぞ…?俺の自由にさせる教育が悪かったのか?

「い、いやいや、あの時は…俺が悪かったし…言ってくれて助かったっていうか……あり、がとな…サク」

「はい!」

「もー…タカミは優しいんだから…。サクは早く仕事行ってきなよ。」

「お、おう、そうだな。またあとで!コクヨウ」

「うん、あとでね!」

…俺に甘すぎるな、コクヨウは。でも友達に会えて嬉しそうだった。やはりサクくん達のことはちゃんと好きなんだろうな。それぞれの店を回って、挨拶もしつつ買い物を終えた。

コクヨウは三人と会うようなので、お邪魔な俺は退散しようとしたのだが…今はコクヨウの膝の上に座らされている。……どうしてこうなった…?

「ふふっ逃げないようにちゃんと捕まえておかなきゃね。」

「相変わらずだな…コクヨウは。まぁ、元気そうでよかったよ。」

「だな!Sランクとかマジですげぇよ!」

「そうそう!暫くはここに居るのか?」

「まぁ、そうしようかと思ってるよ。でも直ぐに旅に出るかも。」

「そっか。まぁたまには顔出せよ、親友」

「ふふっうん、今でもみんながくれた解体ナイフ使ってるよ。」

「まじか!良かった良かった!」

「三人にお土産もあるからあとで渡すね。」

「え?ここでくれねぇの?」

「ここで渡してもいいけど、重いよ?大丈夫?」

「え?そんなに?何かわかんねぇけど…じゃあ後でいいや。取り敢えず今までの冒険談でも聞かせてくれよ!」

「うん、いいよ。」

四人が楽しそうに語り合うのを無我の境地で聞いていた。息子の膝の上に乗って、息子の友達にその姿晒してるとか考えたら羞恥で俺の感情が死ぬ…。そんな気がする。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜

琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。 ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが……… ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ…… 世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。 気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。 そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。 ※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。

使い捨ての元神子ですが、二回目はのんびり暮らしたい

夜乃すてら
BL
 一度目、支倉翠は異世界人を使い捨ての電池扱いしていた国に召喚された。双子の妹と信頼していた騎士の死を聞いて激怒した翠は、命と引き換えにその国を水没させたはずだった。  しかし、日本に舞い戻ってしまう。そこでは妹は行方不明になっていた。  病院を退院した帰り、事故で再び異世界へ。  二度目の国では、親切な猫獣人夫婦のエドアとシュシュに助けられ、コフィ屋で雑用をしながら、のんびり暮らし始めるが……どうやらこの国では魔法士狩りをしているようで……?  ※なんかよくわからんな…と没にしてた小説なんですが、案外いいかも…?と思って、試しにのせてみますが、続きはちゃんと考えてないので、その時の雰囲気で書く予定。  ※主人公が受けです。   元々は騎士ヒーローもので考えてたけど、ちょっと迷ってるから決めないでおきます。  ※猫獣人がひどい目にもあいません。 (※R指定、後から付け足すかもしれません。まだわからん。)  ※試し置きなので、急に消したらすみません。

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

処理中です...