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しおりを挟む足腰が立たないという情けない事実は身を持ってわかったのでコクヨウに飯を頼む。するとコクヨウは人型に戻ったのだが、素っ裸だ。ぼーっと見ていた俺はサッと顔を逸らした。何度も見ている、見ているはずだが1度抱かれているのだ。変に意識しちまう。
コクヨウはさっと服を身に着けた。そしてこちらに寄ってきて、顔をのぞき込んでくる。仕方がないので目を合わせると満面の笑みを浮かべるコクヨウがいた。
「それじゃあ行ってくるね。ちゅっ」
「…おう…」
「ふふっ」
俺の唇に軽いキスを落として部屋を出ていく。俺を見ているだけでも嬉しくて仕方がない、と言わんばかりの態度、声、顔。どれを取ってもすげぇ甘ったるい雰囲気だ。元々コクヨウは俺には甘かったけど…全然違う。これが恋人?への態度なのか?
俺は一応恋人ではない。Sランクになったら、という条件を果たしたコクヨウのものになったのは間違いない。それに、俺だってコクヨウのことが好きだ。気持ちを伝えたことはないが…
「くっ…全然ちげぇ…これは…やばいかもな…」
「何がやばいの?」
ドアの音も聞こえなかった気がするが、コクヨウはいつの間にか料理片手に俺の傍らに立っていた。気配を消すのが上手過ぎるだろ。それとも俺が考え事に集中し過ぎていたのだろうか。
「っ…いたのか…気配消してくんな。びっくりしただろ。」
「あはは!ごめんタカミ。それでさっきの質問答えてよ。」
「それは…その…こんなに動けなくなるのやべぇってことだ。」
取り敢えずそれっぽいことを言ってみたが誤魔化せるか?
「あー…まぁ確かにそうだね。でも…大丈夫!タカミは働かなくても良いからね!僕が養うから」
いけたっぽい。流石に養われるのは違う気がする。それにコクヨウと並んで立てるように必死にAランクまで上げたんだ。それを蔑ろにされたようで、なんだか悲しくなった。しかし俺だってコクヨウの意思を無視して押し通した事もあった。
俺達は違う人間なのだ。分かり合えないことだってあるだろう。それに今の俺はコクヨウのもの。コクヨウの為に人生を捧げようと決めたのだ。
「…それがお前の望みなら」
「…僕はタカミにいっぱいいっぱい貰ったから…少しでも返したいんだ。けど…タカミと冒険するのも楽しいだろうなって思ってるよ。だから取り敢えず冒険者パーティー登録しよ!」
「おう。わかった。というかそろそろ飯くれねぇか?いい匂いだけ嗅がされて限界だ。」
「あ、ごめん。冷める前に食べちゃって」
「ありがとよ。」
俺の感情を察したのか、冒険者を共にやるという提案をしてくれる。それに少し安心して、取り敢えず空腹を満たすことにした。心配しなくたってコクヨウは俺を悪いようにはしねぇ筈だ。
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