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しおりを挟む眠りから覚めてコクヨウと少しだけ話して、またすぐに眠ってしまった。目が覚めたときには、あんなにだるかった身体も動かしても大丈夫そうなところまで回復している気がする。微睡みの中でそんなことを考える。
手に触れている温かなもふもふ。暖かくて心地よくてもっと触れたくなる。なかなか大きいようで、俺の足辺りから顔までもふもふの毛が当たっている。手触りのいい毛並みに頬を寄せる。
「んん…きもちい…」
「ぐるるる」
「……ん?」
なんだか大型の獣のような唸り声が…すぐそばから聞こえた。そこでようやくもふもふの正体を確かめる気になった俺は、ぱちりと目を開ける。黒くて艶々の毛並み、そして美しく煌めく野生を宿した瞳、何物をも切り裂いてしまいそうなほど鋭い爪…
これ猛獣じゃねぇか!
なんで俺の隣に猛獣が寝てんだよ。どういう状況?!夢であってくれ…。まだ死にたくねぇよ。
隣で寝そべっている獣を刺激しないようにそっと起き上がり、距離を取ろうと試みる。ベッドの下に片足をおろし、体重をかけるとカクンと膝が折れて地面に倒れ込みそうになり、ぎゅっと目を閉じる。
しかし予測した痛みはやってこない。下にふんわりとした感触…?
俺の下にいるのは俺が離れようとしていた真っ黒な獣だった。鋭い牙や大型の獣であることから勝手に危険だと決めつけていたが、優しい子なのかもしれない。
「…お前…助けてくれたのか。ありがとう。大丈夫か?怪我してないか?」
「ぐるる」
なぜだか、大丈夫だと言ってくれているように感じられた。獣の上から身体をどかし、落ち着いて見回してみると、ここは確かにコクヨウの借りていた宿だ。ということは俺は突然移動してしまったとかではないらしいな。
それにしても…コクヨウはどこに行ったんだ?俺を置いて行くとは思えないが…。どうしてこんなことになっているのか分からないまま、静かに獣と向き合う。
「あーっと…この部屋にいた獣人知らないか?」
「??」
首を傾げる獣。やはり言葉は通じないのだろうか?それにしても綺麗な黒色をしている。まるでコクヨウの幼い頃のような…
………コクヨウの成長してからの獣型は見たことなかったな…?もしかしてこの子はコクヨウなのか?
「コクヨウ?」
「ぐるる」
コクリと頷く。
驚いてしばらくぼーっとしていたが、ずっと床に座り込んでいる俺のことが心配になったらしく、ベッドに入るように促される。四足で立っていても俺の腰よりもデカいコクヨウに押されれば、従うしかない。
こんなに成長するなんて聞いてない…。コクヨウは黒猫の獣人だと思い込んでた。小さい頃はあんなに可愛かったのに、随分デカくなったな…。あー…格好いいじゃねぇか…取り敢えず飯食いたい。頭が働かない。栄養補給してからの考えよう。
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