黒豹拾いました

おーか

文字の大きさ
上 下
64 / 130

64

しおりを挟む





そんなに時間を掛けたつもりはなかったけど部屋に戻ったときにはタカミは寝てしまっていた。それにしても顔色が悪い。それになんだか震えている気がする。熱のせいで寒いのだろうか。持ってきた暖かい食べ物はまた目覚めたときに温め直して食べればいいか。

追加の布団をもらいに行こうと部屋を出ようとすると、微かな声を獣人の発達した聴覚が拾う。確かに僕の名前を呼ぶ掠れたタカミの声。

「…タカミ…寒いでしょう?布団貰ってくるから」

「…ぃぃ…」

「でも…ん、わかったよ。僕がくっついてれば暖かいよね。」

額に触れてみればわかったが、かなり熱が高いようだ。首や額を冷やしてあげたほうがいいかな。冷却を付与したタオルを額にのせておく。そうとう辛いんだろう。僕が幼い頃から側にいたが、タカミは健康体そのもので、風邪なども引いたことはなかった。その為弱っているところなど見慣れていない。

こんな風に苦しそうなところを見るととても不安になる。少しでも良くなればいいと思いながら背を撫でる。不安や心配の現れとして、撫でる手のひらに少しだけ治癒の魔力が乗ってしまうのは仕方がないことなのだ。タカミは駄目だと言っていたけど、これくらいは許されるだろう。

「ん…んぅ…」

可愛い…。苦痛に歪んでいた顔が少し緩む。治癒魔力の効果はあったらしい。昨日タカミを抱き潰す勢いでシたばかりなのに欲は留まるところを知らないらしい。ずっと抑えていた反動もあるのだろう。けれどこんな状態のタカミに何かをする気は毛頭ない。

というか、こんな状態にまで追い込んでしまうなんて…好きにしていいというタカミに甘え過ぎたのだ。もっと自分をコントロール出来るようにならないとまたタカミに辛い思いをさせてしまう。暫くは昨日のことを思い出しながらコントロールの練習をしよう。

これは自分へのいましめとしよう。タカミの大丈夫な範囲での限界も見極められるようにならなくては。

しかしこのまま側にいるのはキツい。というわけで獣型になっていることにした。この姿なら体温も高いからタカミも温かいだろうし、僕も何も出来ないから丁度いいよね。服を脱ぎ捨てて獣型になり、タカミの隣に潜り込む。

先程よりも更に聴覚や嗅覚が鋭敏になったことで、タカミの熱で早くなった鼓動や辛そうな呼吸音、汗の香りがはっきりとわかる。タカミは僕の体を確かめるように撫で回し、腹のあたりで手を落ち着けた。心なしか呼吸も落ち着いた気がする。

おやすみタカミ。

タカミから発される呼吸や鼓動の音に耳を澄ましながら、そっと寄り添って目を閉じる。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間) ハーレム要素あります。 苦手な方はご注意ください。 ※タイトルの ◎ は視点が変わります ※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます ※ご都合主義です、あしからず

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

使い捨ての元神子ですが、二回目はのんびり暮らしたい

夜乃すてら
BL
 一度目、支倉翠は異世界人を使い捨ての電池扱いしていた国に召喚された。双子の妹と信頼していた騎士の死を聞いて激怒した翠は、命と引き換えにその国を水没させたはずだった。  しかし、日本に舞い戻ってしまう。そこでは妹は行方不明になっていた。  病院を退院した帰り、事故で再び異世界へ。  二度目の国では、親切な猫獣人夫婦のエドアとシュシュに助けられ、コフィ屋で雑用をしながら、のんびり暮らし始めるが……どうやらこの国では魔法士狩りをしているようで……?  ※なんかよくわからんな…と没にしてた小説なんですが、案外いいかも…?と思って、試しにのせてみますが、続きはちゃんと考えてないので、その時の雰囲気で書く予定。  ※主人公が受けです。   元々は騎士ヒーローもので考えてたけど、ちょっと迷ってるから決めないでおきます。  ※猫獣人がひどい目にもあいません。 (※R指定、後から付け足すかもしれません。まだわからん。)  ※試し置きなので、急に消したらすみません。

【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません

八神紫音
BL
 やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。  そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

【完結】マジで滅びるんで、俺の為に怒らないで下さい

白井のわ
BL
人外✕人間(人外攻め)体格差有り、人外溺愛もの、基本受け視点です。 村長一家に奴隷扱いされていた受けが、村の為に生贄に捧げられたのをきっかけに、双子の龍の神様に見初められ結婚するお話です。 攻めの二人はひたすら受けを可愛がり、受けは二人の為に立派なお嫁さんになろうと奮闘します。全編全年齢、少し受けが可哀想な描写がありますが基本的にはほのぼのイチャイチャしています。

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

処理中です...