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しおりを挟むそんなに時間を掛けたつもりはなかったけど部屋に戻ったときにはタカミは寝てしまっていた。それにしても顔色が悪い。それになんだか震えている気がする。熱のせいで寒いのだろうか。持ってきた暖かい食べ物はまた目覚めたときに温め直して食べればいいか。
追加の布団をもらいに行こうと部屋を出ようとすると、微かな声を獣人の発達した聴覚が拾う。確かに僕の名前を呼ぶ掠れたタカミの声。
「…タカミ…寒いでしょう?布団貰ってくるから」
「…ぃぃ…」
「でも…ん、わかったよ。僕がくっついてれば暖かいよね。」
額に触れてみればわかったが、かなり熱が高いようだ。首や額を冷やしてあげたほうがいいかな。冷却を付与したタオルを額にのせておく。そうとう辛いんだろう。僕が幼い頃から側にいたが、タカミは健康体そのもので、風邪なども引いたことはなかった。その為弱っているところなど見慣れていない。
こんな風に苦しそうなところを見るととても不安になる。少しでも良くなればいいと思いながら背を撫でる。不安や心配の現れとして、撫でる手のひらに少しだけ治癒の魔力が乗ってしまうのは仕方がないことなのだ。タカミは駄目だと言っていたけど、これくらいは許されるだろう。
「ん…んぅ…」
可愛い…。苦痛に歪んでいた顔が少し緩む。治癒魔力の効果はあったらしい。昨日タカミを抱き潰す勢いでシたばかりなのに欲は留まるところを知らないらしい。ずっと抑えていた反動もあるのだろう。けれどこんな状態のタカミに何かをする気は毛頭ない。
というか、こんな状態にまで追い込んでしまうなんて…好きにしていいというタカミに甘え過ぎたのだ。もっと自分をコントロール出来るようにならないとまたタカミに辛い思いをさせてしまう。暫くは昨日のことを思い出しながらコントロールの練習をしよう。
これは自分への戒めとしよう。タカミの大丈夫な範囲での限界も見極められるようにならなくては。
しかしこのまま側にいるのはキツい。というわけで獣型になっていることにした。この姿なら体温も高いからタカミも温かいだろうし、僕も何も出来ないから丁度いいよね。服を脱ぎ捨てて獣型になり、タカミの隣に潜り込む。
先程よりも更に聴覚や嗅覚が鋭敏になったことで、タカミの熱で早くなった鼓動や辛そうな呼吸音、汗の香りがはっきりとわかる。タカミは僕の体を確かめるように撫で回し、腹のあたりで手を落ち着けた。心なしか呼吸も落ち着いた気がする。
おやすみタカミ。
タカミから発される呼吸や鼓動の音に耳を澄ましながら、そっと寄り添って目を閉じる。
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