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しおりを挟む拠点にしている街からは少し距離があって、街を離れて野営をしながらの依頼になった。フェンリルが出没したというから向かったのに、ただのハイシルバーウルフだった。まぁ、強いのは確かだったけど…。
これじゃあSランク試験にはならなかったし…。報告は正確にしてほしいものだね。襲われたら動揺するのも分かるけどね。フェンリルとハイシルバーウルフは見た目や色も似ているといえば似ているから見間違えたんだろう。
これが終わればタカミのところに帰れると思ってたんだけど…。本当にガッカリした。これで終わりだとウキウキしていた気分は急転直下…最早めり込む勢いで下降の一途を辿っていた。
「コクヨウ、そう落ち込むな。」
「…これであの人のところに帰れる予定だった」
「そうだな。まぁもうちょい頑張れよ!コクヨウ」
「全く本当にあの人が好きねぇ?」
「……」
「次の依頼でSランクに上がれるだろう。その後はパーティーを抜けて帰るんだろう?」
「帰るに決まってる」
「めちゃくちゃ引き止められてたけどな。」
「私達だって引き止めたいくらいだもの。」
この辺りの魔物と渡り合える冒険者は矢張り貴重らしく、ギルドマスターに何度もここに留まってくれと頼まれた。勿論、間髪入れずに断りの返事をしたが、なかなか執拗かった。今回のも、Sランクに上げさせないために態とハイシルバーウルフの依頼を持ってきたのだろうか?と疑ってしまう程だ。
「絶対に帰る。」
「分かってるよ。あと少しだけど頑張ろう。」
「はいはい……っ!?」
街に近づいていくと、人に比べてしまえばよっぽど優秀な鼻が彼の匂いを捉える。似ただけの別の人かも…とも思ったが、恋い焦がれた彼の香りを間違える訳ない。香りを追うように駆け出す。
だんだんと香りが濃くなる。…この先にタカミがいる。なんだか久しぶりに会えるかもしれない嬉しさと…まだ目標を達成していないのに会ってもいいのか?という気持ちがせめぎ合う。
けれど会いたい…
角を曲がった先、彼の姿が目に入る。そこにいる、そう認識してしまえば、考えていたことなど何処かに行ってしまった。僕は僕が心の奥底から湧き上がる気持ちに従って飛び付く。
「うおおお!!」
「……」
抱き付けば記憶よりも小さく感じられる。驚いてはいたものの、受け止めてくれる力強さに安心する。僕の腕の中に収まって見上げてくるタカミ。可愛い…本当に…本当にタカミだ…。
「…コクヨウ…元気にしてたか?」
「タカミ…ふっ…うっ…会いたかった…」
「ははっ…俺も会いたかった。」
「…タカミ…」
「あーあー…そんなに泣くなよ。視線が痛い。」
涙やらなにやらでぐちゃぐちゃになっているであろう顔をタカミが服の裾で拭ってくれる。抱き締め返してくれることに安心する。暖かい。
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