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しおりを挟む俺は出来るだけコクヨウと一緒に居るようにした。俺が勝手に決めた別れの日が近づいているからだ。コクヨウには当日に話す。そうでなければ、コクヨウを送り出す事は出来ないと思っている。
「なぁ、コクヨウ」
「ん?どうしたのタカミ」
「明日は出掛けようぜ」
「え?でも学校が…」
「学校なんて休んじまえばいいだろ」
「まぁ…いいけど…どうしたのタカミ。最近変だよ…何かあったの?」
心配してくれるコクヨウの気持ちを踏み躙る事になる…。とても不安そうなコクヨウに、俺は誤魔化しの笑みを浮かべた。おそらくそんな誤魔化しを見抜いてしまうと分かっていながら。
「いや…何もねぇよ。ただ、お前とどうしても行っておきたいと思っただけだよ」
「そうなんだ…どこ行くの?」
「依頼受けてるからダンジョン行こうぜ。浅い階層しか行かねぇけどよ」
「え!!いいの?行きたい!」
ダンジョンの話をすれば楽しそうな笑みを浮かべる。こんなにも可愛い顔を見られるのもあと少し…。俺はこの子を送り出す。それがどんなに俺にとって辛くても…悲しくても…。
俺達は第一階層に共に潜って、本当に基礎だけだが、コクヨウに教えてやることが出来た。俺はこれで満足だ。もう思い残すことはない。コクヨウとダンジョンに潜るのはとても…とても楽しかった。
はしゃいだように魔物を倒してみせるコクヨウ。危険だと注意しながらも、その姿が可愛くて、沢山褒めてやった。コクヨウの剣は簡単に魔物たちを屠っていく。やはりSランクに上がれるだけの才覚を持ち合わせているのだろう。
俺のようなただの凡才では辿り着くことの出来ない領域…。Sランクの同じ仲間がいれば、きっとコクヨウは安全だろうと思うのだ。俺ではまともに守ってやることすら危ういのだから。
宿に帰ってきて、初めてのダンジョンで疲れて眠っているコクヨウを起こさないようにそっと撫でる。明日の朝には送り出す…。これで最後なんだ。勝手に溢れる涙を止められない。
乱雑に涙を拭って、ただじっとコクヨウが寝ている姿を胸に刻みつけるようにただただ見つめ続けた。そんな風にしている間にも時間は過ぎる。朝日が登ってコクヨウを照らす。
もう少しだけ…一緒に…。
そう思っても時間は止まってはくれない。朝日は昇り、コクヨウも目を覚ます。
「おはよう」
「ん…おはよ…」
「今日は出掛けるぞ」
「え?…うん…」
朝飯を作り、俺も宿を出る準備を整える。俺もコクヨウももうこの宿には戻らない。コクヨウをあのSランクパーティーに合流させたら俺は森の近くにある我が家へと帰るつもりだ。もうこの街にとどまる理由もない。
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