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しおりを挟むコクヨウが飯を作ってくれるらしいので任せる。そろそろ宿を出て部屋を借りなきゃな。やっぱり宿のほうが割高だからな。探さないといけないが伝手もない。直接店に行ってみるしかないが、それもそれで初期投資がかかるからな。
はぁ…金の悩みは尽きないな。貯金は出来るようになってきたが、まだまだ家を借りれるほどじゃない。少なくとも俺とコクヨウの個人の部屋がないとな。そろそろ親離れするべき時期だろう。
「タカミ!ご飯できた!」
「おう、ありがとな。」
「うん、何してたの?」
「ん?ああ、そろそろ家を借りないとな、と思ってよ。物件の条件を考えてたんだ。」
「ふーん、狭いとこでいいよ?」
「駄目だ、お前の部屋も作ってやるからな。楽しみにしてろ」
「む…いらない。それより明日のお出かけだけどさ!お弁当頑張るからね、楽しみにしてて」
「おう」
話を逸らされたが、何故そうも自分の部屋を拒否するのかねぇ?
俺が子供の頃なんて自分の部屋に憧れたもんだが…。俺は孤児院で常に人に囲まれていたというのも有るんだろうが。
「剣の筋がいいって褒められたんだ。タカミが教えてくれたおかげだね!」
「そうか、そりゃあお前が頑張ってるからな。」
「んふふ!」
先生とは上手くやってるみたいなんだけどな、相変わらず同年代の話は出ない。コクヨウは今は実力をつけるのに必死な時期なのかもしれないな。俺が情けない親だから、そうせざる負えないのかもしれない。
翌日になって、起きたときから楽しげな様子で朝食と弁当を準備してくれていた。俺もコクヨウが行きたいといった丘の場所も調べたし、準備万端だったんだが…
「…こりゃあ…今日は無理そうだな」
「…うん…」
いきなり降り始めた大雨、暗くなった空を見上げながら呟く。朝は全然晴れてたんだがな…。流石にこの雨の中ピクニックは厳しいものがある。隣のコクヨウも尻尾を垂らしてションボリしている。ポンポンと撫でてやっても、大した宥めにはならないだろうな…
「コクヨウ、予定は立て直すことにして取り敢えず、今日を楽しく過ごそうぜ?」
「うん、読みたい本あったから図書館行こ?」
「おう、じゃあ今日はゆったり本読んで過ごすかね」
「うん!」
「なんかオススメの本あるか?」
「うーん、あ!いいのあるよ!」
「ん、じゃあそれ読むわ」
「うん!」
気を取り直して、図書館へと向かう。スールエの街よりも大きな街なだけあって、大き目の図書館がある。静かな時間を過ごすのも悪くない。本を読むのも久し振りだが、コクヨウの勧めてくれた本はしっかりと面白かった。
だが、コクヨウが勧めてきたのは少し以外な内容で、養父に恋をした娘という小説だった。恋愛小説を読むことも意外だった。切ない気持ちにさせられるような恋愛話で、すれ違いを経て結ばれるという内容だった。
「どうだった?」
「ああ、面白かったぜ?中々切なかったけどな」
「そっか…」
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